8 / 9
7.戦いの後
しおりを挟む
戦いに勝利した僕たちは、町の人に囲まれていた。
「青いマントの青年を中心とした新しいパーティーがすごいって、少し噂だったんだよ」
「まさかこの町にいたなんてなあ。不幸中の幸いとはこのことね」
「バランスがよくて、いいチームじゃあないかい」
町からは報奨金が出た。そのお金を払っても構わないのに、感謝の証と言われ、無料でご馳走を振る舞ってもらった。
「まるでお祭り騒ぎね」
テラスに出ていた僕の隣にカナやんが座った。冷たくない夜風と、背後から聞こえる笑い声が心地いい。ただこれが自分たちのための宴なのだと思うとむず痒くもある。
「まさかこんなに感謝してもらえるなんて。困った人を助けるって、こんなにも気持ちのいいことなんだな」
現実では上手く手を差し伸べられない。手助けしたいという気持ちはあるのに、一方でそれを阻止する何かがあるのだ。人として恥ずかしいけれど見て見ぬフリをしてしまう。けど、一歩踏み出したいなと思った。
「ヒーローなんて、別に物語の中だけじゃないよな」
「え、何か言った?」
「ううん、なんでも」
誤魔化すように、コップのジュースを口に入れた。
「あ、アオ兄ちゃん!」
一人の少女が走って近づいてきた。
「イオリちゃん。よかったね、お母さんとまた会えて」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「アオ兄ちゃんのおかげだよー」
「本当にありがとうございました」
イオリちゃんのお母さんが、丁寧に頭を下げてくれた。
敵を倒した後、僕は避難した人たちのところへ向かった。そこにはまだ母親と合流できていないイオリちゃんの姿があったので、肩車をしながら二人で母親を探したのだ。幸いすぐに見つかり、僕はカナやんたちのもとへ戻った。
「アオ兄ちゃんにもらったお守り、ちゃんと持ってたよ」
「偉いね。きっとイオリちゃんを守ってくれたのかもしれない」
彼女はそれを、夜の空にかざした。ガラス玉を通して星が小さく輝いている。
「アオ、それ……!」
「うん。サクラからもらった結界玉」
これを見て、彼女は肩を竦めた。
「なるほどね。突然いなくなったのは、この子を助けたからなのね。そして結界玉を持っていなかったから、あの時怪我をした、と」
「そういうことです」
潔く認めた僕に、彼女は苦笑いをした。
「まあ、アオらしいわね。傷は大丈夫?」
「全然問題ないよ。ネコに回復魔法を施してもらったから、治りも随分早いんだ」
僕はガッツポーズをしてみせた。
「ならよかったわ」
カナやんと目が合い、自然と夜空を見上げた。ここの空は、僕たちの世界の空よりもとても近く感じる。強弱をつけて瞬く星も、こんなにたくさん見たことはない。僕たちの世界とは恐らく繋がっていないであろう空に、ふと寂しさがこみ上げてきた。
「帰れるのかな」
気づいたらそう呟いていた。
「どうかしらね」
それから少しの間、お互い無言で星空を眺めていた。
「おーい。アオ、カナやーん。デザート出してくれたから、中にこいよ。じゃないと俺が全部もらっちまうぞー」
僕たちは思わず吹き出してしまった。
「ひろろんならやりかねない」
「そうね。それだけは阻止したいわ」
席を立ち、賑やかな明るい場所へと戻ることにした。
「青いマントの青年を中心とした新しいパーティーがすごいって、少し噂だったんだよ」
「まさかこの町にいたなんてなあ。不幸中の幸いとはこのことね」
「バランスがよくて、いいチームじゃあないかい」
町からは報奨金が出た。そのお金を払っても構わないのに、感謝の証と言われ、無料でご馳走を振る舞ってもらった。
「まるでお祭り騒ぎね」
テラスに出ていた僕の隣にカナやんが座った。冷たくない夜風と、背後から聞こえる笑い声が心地いい。ただこれが自分たちのための宴なのだと思うとむず痒くもある。
「まさかこんなに感謝してもらえるなんて。困った人を助けるって、こんなにも気持ちのいいことなんだな」
現実では上手く手を差し伸べられない。手助けしたいという気持ちはあるのに、一方でそれを阻止する何かがあるのだ。人として恥ずかしいけれど見て見ぬフリをしてしまう。けど、一歩踏み出したいなと思った。
「ヒーローなんて、別に物語の中だけじゃないよな」
「え、何か言った?」
「ううん、なんでも」
誤魔化すように、コップのジュースを口に入れた。
「あ、アオ兄ちゃん!」
一人の少女が走って近づいてきた。
「イオリちゃん。よかったね、お母さんとまた会えて」
彼女は満面の笑みを浮かべた。
「アオ兄ちゃんのおかげだよー」
「本当にありがとうございました」
イオリちゃんのお母さんが、丁寧に頭を下げてくれた。
敵を倒した後、僕は避難した人たちのところへ向かった。そこにはまだ母親と合流できていないイオリちゃんの姿があったので、肩車をしながら二人で母親を探したのだ。幸いすぐに見つかり、僕はカナやんたちのもとへ戻った。
「アオ兄ちゃんにもらったお守り、ちゃんと持ってたよ」
「偉いね。きっとイオリちゃんを守ってくれたのかもしれない」
彼女はそれを、夜の空にかざした。ガラス玉を通して星が小さく輝いている。
「アオ、それ……!」
「うん。サクラからもらった結界玉」
これを見て、彼女は肩を竦めた。
「なるほどね。突然いなくなったのは、この子を助けたからなのね。そして結界玉を持っていなかったから、あの時怪我をした、と」
「そういうことです」
潔く認めた僕に、彼女は苦笑いをした。
「まあ、アオらしいわね。傷は大丈夫?」
「全然問題ないよ。ネコに回復魔法を施してもらったから、治りも随分早いんだ」
僕はガッツポーズをしてみせた。
「ならよかったわ」
カナやんと目が合い、自然と夜空を見上げた。ここの空は、僕たちの世界の空よりもとても近く感じる。強弱をつけて瞬く星も、こんなにたくさん見たことはない。僕たちの世界とは恐らく繋がっていないであろう空に、ふと寂しさがこみ上げてきた。
「帰れるのかな」
気づいたらそう呟いていた。
「どうかしらね」
それから少しの間、お互い無言で星空を眺めていた。
「おーい。アオ、カナやーん。デザート出してくれたから、中にこいよ。じゃないと俺が全部もらっちまうぞー」
僕たちは思わず吹き出してしまった。
「ひろろんならやりかねない」
「そうね。それだけは阻止したいわ」
席を立ち、賑やかな明るい場所へと戻ることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる