39 / 41
38 吉祥寺決戦
しおりを挟む「ここは綺麗だね」ノルが言った。
井の頭恩賜公園から吉祥寺の商店街に入ってすぐは荒らされた形跡が無かった。
「魔物にも荒らされていないのは珍しいな」
ししゃも・エンデバーが店のウィンドウを眺めながら何か役立つものが無いか探している。
「ラジオでは一応吉祥寺が今パロミデスの出現地だって言ってるな」ショウがスマホのラジオアプリに耳をそばだてている。
「明るい内に探したいね、暗くなって暗視に余計なリソース割きたくないし」
ノルのその言葉に同意しながらもカルミラは〈私は夜の方が強化されるんだけどね〉と考えていた。眷属にパロミデスの場所を探らせているカルミラは吸血鬼の眷属同調能力でその居場所をすでに把握しているのだが、それは秘密にしていた。
四人が吉祥寺の駅方面に近付くと街は荒れ果てていた。散乱する車やトラックの残骸に腐った人間の死体の幾つかが道を汚している。
「これは、パロミデスか?」ししゃも・エンデバーが緊張した声色で言う。
しばらく周囲を見渡したカルミラは
「これは魔物ですね、剣を振るった様な跡がありませんから」と答えた。
「冴えてるな、カルミラ」
そう言いながらショウが背中から弓を構え、魔物に備えた。
「ノルル、そこ気を付けて」
「うわっ、ありがと」
カルミラが教えてくれなければ死体の内臓を踏むところだ。もはや匂いも発しないほど干からび、道路にこびり着いているがそれでも踏みたくは無い。
「キレイな足を汚さないで下さいね」カルミラはサンダル履きで素足が露出しているノルを気遣っている。
「これから戦いなんだけどね」ノルが笑った。
その時、まるで休日の散歩でも楽しむかの様に上機嫌な鼻歌と口笛が聴こえてきた。
警戒する四人の前に建物の陰から姿を現したのは他でもないパロミデスだった。勇者はこちらには気付かずに上機嫌で戦鎚を片手で振り回している。気まぐれに放置車両をゴルフの様なスイングで殴ってはそれを何メートルも吹き飛ばしていた。
ショウは三人に目配せすると弓を構え、小さく「負の鎖」と呟く。《ジャララララッ》と音を立て、車を殴り飛ばしフォロースルーの体勢のパロミデスの足元から三本の光の鎖が現れ、勇者の身体を拘束する。
「うぉ?」
勇者を挟んでショウの反対側に瞬間移動したノルが怯んだパロミデス目掛けて大・火焔を放ち、続けて連続魔法サン・バーストを撃つ。
《バガァアアァン!》と轟音を上げて勇者が爆発に塗れた。
「あああああああぁ、痛ぇ!」叫ぶパロミデスが顔を上げると高速で一直線に自分に飛び込んでくる真っ黒い影。影を見た次の瞬間にはカルミラが右手に握った銀黒鐵蠍をパロミデスの喉元に深く突き刺していた。
「ゴボュ」勇者が血を吐く。
「もうすぐ鎖が消えるぞ!」ショウが叫ぶ。
「大閻魔」「灼焔魔」「轟猿魔」ししゃも・エンデバーが呪符を切りパロミデスに行動速度低下、筋力低下、防御耐性低下の負の属性が付与される。
「氷結廊」ししゃも・エンデバーは続け様にパロミデスの周辺に呪符を撒く。光の鎖が砕け、盾を構えたパロミデスが咆哮した。
「クソ共がぁぁああああ!」
一歩踏み出したパロミデスの足首が呪符の効果で凍結する。
「キャストども!」叫ぶパロミデスの喉元目掛けて再びカルミラがねじり込む様に螺旋を描いた突きを放つ。勇者は即座に聖盾を構え《ガィイン!》と音を立てて其れを弾き返し、手に持った戦鎚、星公女の鉄槌をカルミラ目掛けて振り下ろすが足元が凍結して上手く動けない。カルミラは左半身を後ろに引き、相手に対して斜に構え、武器を握った右肘を折り畳み、右拳を顔の前に置き刀身は一直線、地面と水平にパロミデスに向いて構える。その姿勢から一気に踏み込み刺突を浴びせ、浴びせた瞬間に即離脱する彼女の戦闘スタイルはまさに毒蛇の戦いだった。
カルミラがパロミデスに正対して戦う両横からノルとショウが魔法と弓矢を浴びせる。
特に盾を持たない右手側に位置したショウの矢がパロミデスの腕に何本も突き刺さっていた。
「おおおおおおぉぉぉぉおお!」パロミデスが咆哮し怒りを爆発させる。
「駆けて行く錨」ショウが放った矢がパロミデスの影を突き刺し、行動制御を試みるがパロミデスはその矢を自分の影から引き抜きショウ目掛けて突進した。
「ウソだろ!?」パロミデスの行動に不意を突かれたショウの眼の前にパロミデスがあっという間に迫る。同時に真っ黒い影がそれを追い、勇者の戦鎚を喰らう瞬間のショウを《ドムッ》と体当たりで吹き飛ばした。
《ボゴン!》と鈍い音が響き、ショウを庇ったカルミラが倒れる。
「あああぁ、お前からでいいよ」パロミデスは笑顔を浮かべ聖盾を振るって倒れ込むカルミラを《バァイイン!》と殴り付けた。
「痛っっ、このクソが…」カルミラが呻く。
ショウは地面を転がりながらも体勢を立て直し弓を構える。
「次元転移!」
《ビュオッ!》音と共にノルが瞬間的にショウの側に移動し、地面を転がるショウの身体を支えながら弓に手を添える。
「何だ?」ショウがノルの顔を見て聞くと
「そのまま狙って」と彼女は返した。ショウは素早く頷き、数本の矢を放つ。
「次元圧縮」其れと同時にノルが詠唱する。ノルの詠唱前に放たれた矢は真っ直ぐにパロミデスの頭部に目掛けて飛んで行く。勇者は矢に気付き
「バカが」と盾で弾き返す、其れと同時にノルが術を掛けた矢が全くの反対方向の空間から突如現れ、パロミデスの脇腹に突き刺さった。
「ぐぅぅう!」勇者の身体がくの字に折れる。
「めろちゃんの分だよ!クソ野郎!」ショウが叫んだ。
「苦痛消散」カルミラに駆け寄ったししゃも・エンデバーが痛み止め符術を施し、
「霧雷弾」とパロミデスの頭上目掛けて呪符を撒く。
「マジでブッ殺します。ええ」とカルミラが立ち上がりパロミデスに向かおうとするが
「ちょっと待て」とししゃも・エンデバーが腕を掴んだ。《バガァァアアン!》と雷鳴が轟き、パロミデスの頭上に発生した霧から勇者目掛けて幾つもの落雷が起きる。
「き、効くかぁぁあああ、ボケ共!」
ししゃも・エンデバーは其れを見ながら『狂鳴絶叫』の呪符を勇者の足元に撒いた。
《ギャキィィィィイイイイン!》呪符から邪音が鳴り響き、パロミデスを襲う。ノルは『昏き森の雫』を水平に構え、杖の上を指で素早く薙ぐ様に滑らせる。
「次元断」雷と音で悶え苦しむパロミデス目掛けて放たれたノルの魔法が《ジャキン!》と一瞬スライドする様に勇者の胴体付近の空間を切断し、切断された箇所から《ぶしゃぁあああ》と大量に出血する。その間にもショウは矢を放ち続ける。
やがて霧が薄くなり、邪音の響きが弱まる。
「霧が消える、行ってくれ」ししゃも・エンデバーがカルミラの背中を叩き、蛇の騎士は真っ黒いうねりとなってパロミデスに襲いかかる。何匹もの黒い蛇が勇者を囲んでいるかの様にカルミラは超高速で移動しながらパロミデスを突き刺す。切断された腹を庇い、回復術を掛けながらもパロミデスは盾でその攻撃を何度も受け流す。
「マジでとんでもないな…」これだけの波状攻撃で倒せないパロミデスにショウは微かに敗北の危険を感じていた。パロミデスはまだ自分から大した攻撃を仕掛けて来ていない。
「うっとぉしいんだよ!」パロミデスが叫び、高速で自分の周りを移動するカルミラの首を《ガツッ》と掴んだ。
「カハッ」カルミラの喉から小さく息が漏れる。パロミデスはカルミラの首を掴んだまま走り出し、一瞬でノルの前に到達すると戦鎚をゴルフスイングの様に振り抜き、《ゴキン》とノルの脛が折れる音が響いた。
「痛ッ!」ノルがうめき声を上げその場に崩れ落ちる。
「ノルルぅ」首を掴まれたままのカルミラが小さく叫び銀黒鐵蠍をパロミデスの腕に《ドスドスッ》と突き立てる。
「うるせぇぇぇええええ!」
《バガァァアアン!》パロミデスがカルミラを地面に叩き付けると、余りの膂力にアスファルトの地面がカルミラの形に凹んだ。
「ゴフッ!」カルミラが血を吐く。
「このパーティでこれかよ…」ショウは絶句した。
自分に回復魔法を掛けながらノルが呟く。
「もしかして…もう、レベル64に……!?」
《バガンッ、バガンッ!》パロミデスは地面にめり込んだカルミラを執拗に蹴りつける。
「カッ、グフッ!」その度にカルミラは血を吐いた。
「次元断!」再びノルが至近距離から次元魔法を放つが、杖の動きを見たパロミデスは瞬時に身体を捻って回避する。
「さっき見たぜ、それはよ」そう言い放ち、ノルの腹部を思い切り蹴り上げた。
パロミデスの脚力で空中に《ドォォウン!》と吹き飛ばされたノルだが空中で素早く瞬間移動魔法を使い《ブゥンッ!》と距離を取る。足の痛みはマシにはなっているが折れている事には変わりは無い、立つのも厳しい状態だった。
「百の光弾!」ショウが《ギリギリッ》と弓を引き絞り、パロミデスの頭部目掛けて光の収束矢を放つ。パロミデスは素早く戦鎚を振り、其の光の矢に向かって投げつけた。《パキャン!》戦鎚は空中でショウの放った光の矢を打ち砕き、そのままショウの頭部に直撃する。《ゴン》と嫌な音が鳴り響き、ショウは其の場に《ドサリ》と崩れ落ちた。
「氷結廊!」ししゃも・エンデバーが勇者の足元を凍結させるが《バリバリバリバリ!》と氷を力任せに踏み砕きながらゆっくりとショウの元に迫る。
「ひゅうぅ…ひゅぅう…」口端からよだれを垂らしてショウの喉から微かに息が漏れる。
「ショウ君!」ノルが叫び《ブゥンッ!》とショウの側に瞬間移動した。意識は無いが一命は取り留めた様だ。ノルはショウの頭を抱いて彼の頭に手を当て回復術を掛け続ける。
〈回復専門が居れば…〉魔女と付与術師の回復力では勇者の圧倒的な攻撃力の前には焼け石に水、削り続けられるだけだった。
〈そもそも勇者は本の出演者より強く作られてるのかもね…そこまで考えなかったな〉ノルの考える通り、レベル差が一つあるとは云え余りにも勇者は強い。其れは人工知能リベレーションに拠って本の出演者を導く者、護る者として作られた存在だからであった。
「ハアっ!ガフッ!」ショウが目を覚まし、咳き込むと同時に吐血する。赤黒い血がノルのスカートを濡らした。
「良かった、起きたね」
「ガフっ!すまねえ、情けねえぜ」ショウは盛んに咳き込んでいる。《ブゥンッ!》と次の瞬間、ノルとショウはパロミデスから10m遠ざかった。《バリバリバリバリッ》と氷を突き破りショウが居た場所に落ちていた戦鎚をゆっくりと拾い上げたパロミデスは
「後は人形と魔女だけか」と薄く笑った。
「ふぅ」と一つ息を吐き、勇者はししゃも・エンデバーを見る。
「クソッ、来やがれ」ししゃも・エンデバーは咄嗟に自分の前の空間に呪符を貼る。
「黄金門!」呪符を中心として呪力の防御壁が形成される。
「コイツはお前でも破れねえぞ」ししゃも・エンデバーは背中の冷却ファンが《フォォォオン》と盛んに回転するのを感じていた。
〈ビビんじゃねえっ!〉自分を叱咤しながら次の呪符を用意する。《ダンッ!》と地面を蹴り、一瞬でししゃも・エンデバーの目の前にまで間合いを詰めたパロミデスは戦鎚、星公女の鉄槌で呪符の防御壁を殴りつける。《バキン!》と音を立てて大きなヒビが入った。
「ハハッ、言う程強く無さそうだぞぉ、おい!」
パロミデスの次の一撃でししゃも・エンデバーの黄金門は《バキャン!》と砕け散った。
「ウソだろ」ししゃも・エンデバーは恐怖で視野が狭窄するのを感じた。
「黄金門、黄金門っ!」二枚、三枚と同じ呪符を貼り、ジリジリと後退する。機械の関節部が《ガタガタ》と振動し、上手く足が動かない。
《バキャン!》《バキャン!》とパロミデスは急ぐ素振りも見せず、呪符の防御壁を一枚ずつ砕いてししゃも・エンデバーに迫る。ししゃも・エンデバーは備わってない筈の口の中に鉄の味が広がるような錯覚を覚えた。
〈俺では勝てねぇ…クソッ、ダイキ、ユウキ…〉
《ブゥンッ!》その瞬間、ししゃも・エンデバーに迫るパロミデスの背後にノルが現れ、『昏き森の雫』を勇者の背中に突き立てる。
「次元圧縮っ!」勇者の上半身を瞬間移動で吹き飛ばす、積りのその杖の先には既に相手の姿は無かった。パロミデスはノルの瞬間移動を察知し、身体を捻って杖を避けていた。杖を握り、腕を伸ばして呪文を空振ったノルを見て口端を上げたパロミデスは其の捻った体勢のまま、戦鎚を魔女の腕目掛けて振り下ろす。《バキン》と云う音と共にノルの腕がV字に折れた。
「お前が来ると思ってたよ、コイツを追い詰めるとさぁ」
「うぅくくっうう!」ノルは折られた腕を庇いながらもししゃも・エンデバーに抱きつき《ブゥンッ!》と瞬間移動でパロミデスから距離を取った。
「まあ、その瞬間移動は凄いがな、もう意味ないぜ」そう言いながらパロミデスは戦鎚を《グルングルン》と振り回し、現れた時の様に鼻歌を口ずさむ。
「なあ、キャスト共、お前ら全員殺したら俺ってレベル65になっちゃうかなぁ~?」
そう言って笑うパロミデスの顔には憎しみや悪意は無かった。これから自分に起こる事への期待、明日自分の誕生日パーティーが開かれる事を知っている小学生が、素敵なプレゼントと大好きなご馳走が待ち切れないワクワク感で心が満たされた時の様な純粋な笑顔だった。
「もう、これをやるしかねえ…」ししゃも・エンデバーが呟く。
「ノル、すまねえがアンタに託すぜ」ノルの顔を正面から見つめてししゃも・エンデバーが言う。
「カルミラ!ショウ!頼む、アイツを少しでいい、止めてくれ!」
〈無理言ってのは分かってる、でも俺に出来るのはコレしかねぇんだ〉ししゃも・エンデバーは金属の拳を《ギィ》と握った。
「ノル、今からあんたをレベルアップさせる」
「はっ?」
ノルはししゃも・エンデバーの言っている事の意味が分からなかった。ノルがレベル64になるにはまだまだ経験値が必要だ。
「俺の全ての経験値をあんたに付与する、これで俺はレベルゼロだ、頼むぜ」
「えっ、えっ、何?」
「覚悟決めろ、夜明けから闇へ」ししゃも・エンデバーが詠唱しながら呪符をノルと自分に交互に貼り付けていく。
「何だ」
パロミデスは二人の様子を見て何もさせるまいと走る。
が、足が重い。その左足には傷だらけのカルミラが真っ白い腕を土塗れにしてしがみついて居た。
「ハッ、行かせませんよ…ええ…」
「チッ、くたばり損ないがッ」パロミデスはそう叫び聖盾でカルミラを殴り付ける。《ガィン!ガィン!》と殴られる度にカルミラは口から血を吐いた。
〈あ…ヤバい、死んじゃいます…〉意識が遠くなるのを感じながらもカルミラは腕の力だけは決して緩めない。
「闇は生命」幾つもの呪符がノルの身体に複雑な幾何学模様に貼られ
「全て貴方のもの」ししゃも・エンデバーが詠唱する。
《ドシュッ》カルミラを殴るパロミデスの両肩に二本の矢が突き刺さる。ショウが両手に矢を握りパロミデスの背後から覆い被さるように突き刺していた。
「まあ、そう急ぐなよ、クソ野郎…」最後の力を振り絞り、矢に渾身の力を込めてパロミデスにしがみつく。
「生命は覆い繁る森」
《バシュゥウウウウッ!》と白色の蒸気がししゃも・エンデバーを包む。
同時にノルの体を黄金色の光が包み込み巨大な力が一気にノルに注がれる。それは実にレベル63分の莫大な経験値だった。
「うわわわっ」
突然押し寄せる爆発的な快感にノルは気を失わない様に、倒れてしまわない様にするので精一杯になる。
「チッ、あの光」パロミデスが突如立ち昇った閃光に舌打ちをする。
「どけ!」勇者が背中を大きく躍動させるとショウの身体は弾け飛び、《ドサ》とアスファルトに落ちた。
《シュゥウゥゥウウ…》
ししゃも・エンデバーを包んだ白色の蒸気がゆっくりと掻き消えて、其処にはししゃも・エンデバーの姿は無かった。絡繰人型の付与術師の姿は消えて、その跡に立って居たのは一人の人間の少女だった。
「う、うそ…」少女を見たノルが絶句する。
現れた少女は閉じていた目をゆっくり開き、眼の前のノルの姿を見留た。
「ノル……ううん、パパ…」
それは由依だった。ノルの最後の記憶、探して守らなくてはいけないもの、由依だった。
由依の言うパパの意味は分からないが、とにかく彼女はノルがその理由も忘れたが探し続けていた由依だ。ノルにはそれだけははっきりと分かった。
〈レベル64〉
元ししゃも・エンデバーである由依から全ての経験値を引き継ぎ、ノルはパロミデスと同じレベル64に到達した。
「パパ、行って」
呆然としていたノルは由依の言葉で我に返った。
《ブゥンッ!》一瞬でパロミデスの目の前に移動したノルは地面にめり込むカルミラに手を添える。パロミデスは戦鎚を横薙ぎに振るい
「死ねよ!」と叫ぶが次の瞬間にはノルとカルミラはパロミデスから10m後方に移動していた。
「ノルル…」何箇所もの骨を砕かれたカルミラが口から僅かに血を吐きながら小さな声で呟いた。
「大した回復力無いんだけど、ごめんね」ノルがカルミラに魔女の回復術を施す。
「チッ、魔女め。面倒くせえ」そう言いながらパロミデスは拳を握り込み、力を収束させた。
「響け聖槍」光が投擲槍を形作り、パロミデスは渾身の力でノル目掛けて投げ付ける。避ければカルミラに命中する角度だ。ノルは『昏き森の雫』を構え、光の槍が杖に触れた瞬間に《ブゥンッ!》と次元魔法で其れを吹き飛ばす。
「おい、魔女!後はお前だけだぞ!」パロミデスが叫び、ノルに対して仁王立ちで構えた。
「君だって、君だけだよ」ノルも呼応し、ゆっくりと立ち上がる。ノルは両足と片腕を折られている。パロミデスも胸に手を当て、自己回復を行うが手負いの状態である事は間違い無い。然し同じ条件とは云え相手は勇者だ。
「ノルル…役立たずでゴメン」上半身を起こしたカルミラが側に立つノルを見上げた。ノルはカルミラに笑顔を向ける。
「ありがとうね、カルミラ。レベルアップして魔法力は回復した。最後の魔法に賭けるよ」
「お前の手の内はもう分かってるぞ、魔女」戦鎚を振り回しながらパロミデスが言い放つ。
「そうだね、もうお見通しって感じだ」
「ふふん、諦めて殺されろ。苦痛無く殺してやるさ。ある意味でお前達キャストは俺にとって大事な存在だ」
「大事な存在?まだ私たちの守護者の自覚が?」
そのノルの言葉を聞いた途端、勇者は爆笑した。腹を抑え、膝を曲げて身体を震わせる。
「ヒィ、ヒィイイッ」
「あああ、最高に面白いな!魔女。守護者なんて!ヒヒぃ、お前達は餌だ!お・れ・さ・ま・の・エ・サ!」
「…そっか、もう救いが無いんだね。君は」ノルはほんの少しだけ寂しそうに呟いた。
「それで?抵抗しなければ苦痛無く殺してやるのは本気だぞ。手の内もバレてる、どうする?」パロミデスは両手を広げてノルに問い掛ける。
「近接戦闘しかないよね」ノルが言う。
「両足と腕を折られた魔女が近接戦闘だと」パロミデスが嘲り笑った。
「光は死」ノルが詠唱を始める。
「死は静寂」 次第に肉体や衣服から色彩が失われていく。
「静寂は砂漠の王」 やがて彼女自身がシルエットだけの影になり
「砂漠の王は、死のライオン」 最後の呪文が響く
黒い影になったノルの胸から動物の鼻先が発現する。《ズズズズズ…》と顔を出し、ノルの体内からその肉体を押し退け漆黒の獅子が現れた。それはノルの全魔法力を実体化させた死の王だった。
「グルルォオオォ!」死のライオンが咆哮する。
「何だ…あんなモノ、ダーク・シーに居ないぞ…」地面に伏したショウが呆気に取られた表情でライオンを見つめる。其れはダーク・シーの全てを読み尽くしたショウにも見た事の無い魔法、見た事も無い生物だった。
全ての魔法力を失ったノルはその場に立つことも出来ず、座り込んだ。
「これが、最後の魔法だよ、死の王、君に託す」
死のライオンは一直線にパロミデスに向かって駆ける。
「獣が」
パロミデスは戦鎚を手首で振り回しながら聖盾を構えて迎え撃つ。《グワァン!》獅子の体当たりを盾で受け止めたパロミデスはそのまま3mも吹き飛んだ。
「チッ!」転がりながらも舌打ちをして咄嗟に「雷霆ッ」雷撃魔術を放つ。極大の雷撃が漆黒のライオンに直撃するが獅子はまるで意に介さず、右腕の爪を振るう。《バキャン!》パロミデスは左肩から背中にかけて打撃を受け、再び吹き飛ばされて地面を転がる。
「雷は無効か、火焔っ」火球が獅子の顔面に直撃し、獅子はそのまま火球を噛み砕く。
「何だこいつは、散弾水撃ッ」《バスバスバスバスッ!》無数の水の弾丸が死のライオンを撃ち抜き、動きが一瞬止まった。
「水だな!」より高威力の水魔術を放とうとしたパロミデスはフッと辺りが暗くなるのに気付いた。〈ハッ〉顔を上げたパロミデスの目の前に死のライオンの巨大な牙が迫っている。
「うぉおおお!」
咄嗟に顔を反らしたが《メキメキメキッ》音を立てて右肩にライオンの牙が食い込んだ。
獅子の牙の食い込んだ辺りからパロミデスの体の色が失われていく。
「すごい…」思わずショウが漏らす。
「畜生!水じゃねえ!」
肩に牙を突き立てられながらもパロミデスが戦鎚を獅子の左腹に叩き付けると《ドォムッ!》鈍い音を立てて獅子の胴が歪み、肩から食い込んだ牙が引き剥がされた。
「ハァ、ハァ、物理か」
「グルルルッ…」
死の王はパロミデスの周囲をゆっくりとジリジリと回りタイミングを図る。
パロミデスは戦鎚を浅く握り直し、その瞬間を待っている。
「来いよ、ネコ野郎…」
ライオンが飛び掛かった瞬間、パロミデスも同じ距離をバックジャンプし間合いを保ちながら手を伸ばして戦鎚を振り下ろし、獅子の鼻先を撃ち抜いた。
「キャウンッ」
ライオンが地面に叩き付けられ、畳み掛けるようにパロミデスが跳躍し再び戦鎚を振り翳す。《ドゥオン!》獅子は素早く跳ね上がると空中のパロミデスに体当たりし、追撃の為に地を駆けた。落下して瓦礫の中を転げ回ったパロミデスが顔を上げると牙を剥き出しにしたライオンがもう、目の前まで迫っている。最早聖盾での防御も間に合わない。
「クソッ!」
然し獅子は急に攻撃を止めてパロミデスを睨みつけ「グルルル…」と低く唸りだした。
「何だ」
周囲を見渡すと自分の直ぐ後ろ、そこに少女が居た。
「こいつか!」
パロミデスは咄嗟に左手で少女を攫いライオンの前に突き出す。獅子は低く、低く唸りながらもジリジリと後退する。
「パパ…」パロミデスに囚われた由依はボロボロと涙を流しながら言った。死の王はノルの精神の具現化そのもの、由依を護る本能で攻撃出来ない。
「構わず、倒して…」
ノルはその様子を呆然と見ている事しか出来なかった。
「勇者のする事ですか…許せねぇ、マジで」カルミラが吐き出すように呟く。
「オラっ」パロミデスの戦鎚が死のライオンの頭部を容赦無く撃ち付ける。低い唸り声を出しながらも獅子はされるがままに殴られ続ける。盾の代わりに由依を突き出してパロミデスは幾度も幾度も無抵抗のライオンを殴り続ける。
「パパ…お願い…」
由依は大粒の涙を流しながら懇願するが、ノルにはどうしようも無かった。
「堕ち切ったな…ゲス野郎に」
ショウはもうその光景を見る事も出来なかった。
「オラっ、オラっ」
獅子を殴りながらパロミデスはある場所に追い詰めていた。
「ハハハハぁ~、到着ぅ」
殴られ続けた死のライオンはノルが座り込むその場所まで追い詰められた。
「そしてサヨナラぁ~!」
《バカァアン!》渾身の力を込めた星公女の鉄槌の一撃が獅子の脳天に振り下ろされ、死の王は黒い砂粒となって霧散した。
「パパっ!」パロミデスに首を掴まれたまま由依がノルに手を伸ばす。
「お前はもう要らなぁい!」
《ブォン》と由依を投げ飛ばしたパロミデスは
「頭を砕いてやる」
星公女の鉄槌をノルの頭上目掛けて振り被った。《ズサァア》硬いアスファルトの上を由依が滑る。
〈ダメだ、もう、動けない〉
魔法力も使い果たし、ノルにはもう何も残っていなかった。
「ノルルっ!」カルミラが地面に伏せたまま泣き叫んでいる。
「パパぁ!」
投げ飛ばされた少女の叫びが聞こえる。パパ、パパって何だろう…とにかくあの少女を護らなくちゃいけないのに…。
パロミデスが戦鎚を振り下ろす動きがスローモーションに見える。自分の頭蓋骨目掛けて一直線に。
〈ああ、無慈悲だこと〉
瞼を閉じようとしたノルの目に2つの影が別々の方から動くのが見えた。
《ビュウウウウッ》超高速で動く1つの影。
《タタタタッ》足の遅いもう1つの小さな影。
《ガイィィイイイン!》
大きな金属音を立ててノルの頭上間際で戦鎚は止まっていた。
「遅くなって済まない、ノル」
体ごと庇うようにパロミデスの戦鎚を男が盾で防いでいた。
「え…」
今起こった事がノルには理解できない。目の前で自分を守っている男、パロミデスの戦鎚を盾で受け止めている男、それは勇者パロミデスだった。
そのまま勇者パロミデスはノルを護るように立ち上がる。
「え?…な、何??」
由依やショウ、この場にいる全員が混乱していた。
2人のパロミデス、違いは飛び込んで来た方がマントを纏っていないくらいしか無い。
「何だ、お前は」戦鎚を後ろに構え直してパロミデスが言う。
「私は勇者パロミデス、自由意志の民を導く者、そして、貴様の様に堕落しなかった者だ」
「あれって…」カルミラが何かに気付く。
「第13巻のパロミデス…」ショウが言う。
ダーク・シー第13巻「絶望帝国の復活」第4章「秘密階段」でプレイヤーを導く勇者パロミデス、この時はまだマントを纏っていなかったのだ。
そしてもう一つ、ノルは違いに気付いた。
「それは…」
自分を護った勇者パロミデスの胸には何時かのペンダント、
〈eye of the Fiksrigar〉が輝いていた。
「今度は私がノルを護ろう」勇者パロミデスは視線をもう一人のパロミデスに向けたまま、そう言った。
対峙する二人のパロミデス、ほんのひと時、冷たい風がノルの頬を撫でた。
「聖盾にヒビが入っているぞォ、お前…レベル幾つだ?」
「問答無用っ!」
二人のパロミデスの戦いが始まった。
ノルを助けた勇者パロミデスは聖剣クロスクレッシェンドラムを抜き高速の剣技を展開する。一方の堕落したパロミデスは星公女の鉄槌をそのまま使用するが、重い戦鎚を相手の剣と同じ速さで自在に振るう。《ガンガンガンッガンガキッ!》激しい金属音が周囲に鳴り響き、その戦いは見る者を圧倒した。
「レベルは60あるか無いかだな!武器の損耗が早いぞ」堕落パロミデスが言う。
「経験値稼ぎを怠ったかぁ!俺はレベル64だぞ」優越感を滲ませながら容赦無く勇者に打ち込む。
しかしその戦いはブックキャスト達には違って見えた。
「すごい、レベル差があって同じキャラクターなのにあんなに対等に…」ショウが思わず呟く。
勇者パロミデスは盾の使い処、剣での受け流し、全ての技術面で堕落パロミデスを上回っていた。
「ホラどうした、防ぐばっかりか!」
攻撃を連続して盾で防ぐ勇者に、一方的に戦鎚を打ち付ける堕落パロミデス。レベル差に拠る打撃力の違いは圧倒的だった。勇者の聖盾の亀裂が次第に大きくなる。
「あぶないっ」
由依が思わず叫んだその時、勇者はひらりと盾を跳ね上げる。堕落パロミデスが戦鎚を振り下ろした先には勇者が盾で隠していた大・火焔があった。《バチバチバチッ!》打ち込みは止まらない。燃え盛る火炎の中に振り下ろした堕落パロミデスの腕が大きな音を立てる。
「ぐぁアアッ、クソが!」堕落パロミデスは戦鎚を落とし、腕を庇いながら叫んだ。
「経験値を稼ぐんじゃない…勇者は、経験を積んだんだ」ノルが言った。
自分より弱いプレイヤーや一般人の殺戮を続けてレベルアップを重ねた堕落パロミデスと違い、勇者パロミデスはノルと出会ったあの日以来、自分と同等以上の魔物を相手に挑み、戦い続けてきた。そしてそれはレベルでは測れない経験となり勇者パロミデスの血肉となっていた。
「クロスクレッシェンドラァーム!」堕落パロミデスの怒号が響く。
勇者パロミデスも呼応して聖剣を構える。
「盾が、もう」由依が言うように勇者の盾には無尽に亀裂が入り、凹み、いつ砕けてもおかしくはない状態だった。
「これ以上防げ無いだろうがァ!」
堕落パロミデスが叫び、超高速の剣技で勇者に襲い掛かる。戦鎚よりも得物が軽くなり、その速度は尋常の域を遥かに超えていた。必死に喰らいつく勇者パロミデス、だが突きの一撃を聖盾で防いだ瞬間…盾は無残に音を立てて砕け散り、堕落パロミデスの突きはそのまま勇者の胸元に突き刺さった。
《パキィン》
その時、その堕落パロミデスの剣先が貫いたのは勇者の胸に輝く〈eye of the Fiksriga〉だった。
『アアイボボボガルドォオー』
脳が激しく揺さぶられ、鼻血を噴き出し、眼球から血を垂れ流して堕落パロミデスは突きの体勢のままその場にうつ伏せに卒倒した。
「グ、グッ、何を…」体をガクガクとくの字に震わせて堕落したパロミデスが呻く。
『デデルルルママ、ボボォォードララーガガァー』
脳に直接響く邪悪の真言。他の者には聞こえていないが、勇者には相手に何が起こっているのか能く分かった。
「巨大な眼か」
「勇者パロミデス、トドメを!」ショウが叫ぶ。
その言葉に頷き、勇者はクロスクレッシェンドラムを両手で逆手に持ち堕落パロミデスの首元目掛けて構える。
「……!」
振り下ろせ無い、どうしても。
「早く殺して!」カルミラの叫びが聞こえるが腕が動かない。目の前に居るのは邪悪な存在…市民も、自由意志の民も、魔物も無差別に殺し続ける殺戮の虜。
そしてこれは少し道を違えただけの同胞……、ノルとの出会いが無ければ今ここで地に伏せていたのは或いは自分だったかも知れない。
不様に鼻血を垂れ流してガクガクと体を震わせる怯えた目をした自分に瓜二つの元勇者。
「殺せない…か」ノルが呟いたその時、
《ペタタタタッ》湿った足音と共に飛び出した小さな影が《ブツンッ》と音を立てて堕落パロミデスの首に刀を突き刺した。
「ギギギッ」
それは機械精ギーギ・フーブだった。
「グヘォッ!」口から血を吐き出し、堕落パロミデスがギーギを睨み付ける。
「グ、機械精?、お前のような…下等な魔物が…」
その言葉の直後、ギーギは突き刺した巨人殺しに魔法力を込め、
「爆ぜ玉!」と叫ぶ。
《ボンッ、ブチイッ!》突き刺した刀を伝って堕落パロミデスの首の中から起こった爆発でその頭はちぎれ飛び《ゴロゴロゴロッ》と地面を回転しながら、首元から顎部まで黒く焼け焦げたそれはノルの足元まで転がって彼女の美しいサンダルに当たって止まり、肉の焦げた匂いがノルの鼻腔を突いた。
元勇者はこうして死んだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
