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龍神の里に雪が降る⑤〜恭介の夢②〜
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次の日から、俺とタツは山で遊ぶようになった。
毎日、朝から夕方まで遊び
「又、明日」
って分かれた。
そして自宅に帰る前日
「タツ、俺…明日からもう此処に来れないんだ」
そう言うと、タツは悲しそうな顔をして
「どうして?私が嫌いになったの?」
と、瞳に涙を浮かべていた。
「そうじゃ無いんだ。俺、婆ちゃんの家に夏休みの間だけ来てたんだ。冬も来るけど、冬はこの山に子供は入っちゃダメだろう?」
と言うと
「じゃあ、次の夏は又会える?」
と聞かれて
「うん。必ず会いに来るよ」
そう言って指切りをした。
それから俺は、ずっと夏休みには婆ちゃんの家で過ごして、タツと遊んだ。
段々成長して、俺が小学校5年生の時だった。
いつも通りに山に行っても、タツが現れない。
いつもなら
「きょーすけ」
って、笑顔で飛び込んでくるのに…。
神社の軒先に座って待っていると
「恭介?ひいさんと遊ばないのか?」
と、婆ちゃんに言われた。
「え?」
驚いて婆ちゃんを見ると、婆ちゃんは悲しそうに笑って
「そうか…。もう、恭介にはひいさんが見えなくなってしまったんだね」
そう言って俺の頭を撫でた。
「さっきからお前の右隣で、ずっとお前に語り掛けてるよ」
俺は婆ちゃんの言葉に、そっと右隣を見た。
「大人になると、見えなくなるらしいからね」
そう言われて
「もう…会えないのか?タツとは…、もう会えないのか?」
そう聞くと、婆ちゃんが誰かに話しかけていた。
「えぇ、仕方ありません。ひい様、恭介を許して上げて下さいね」
と話した。
俺がその様子を見ていると、急に目蓋が重くなった。
ぼんやりとしていく視界。
ゆっくりと目を閉じる間際
「きょーすけ!きょーすけ!」
と、悲しそうに俺を呼ぶタツの声が聞こえたような気がした。
俺は中学に上がると、婆ちゃん家に行くよりも友達と遊ぶ方を優先するようになった。
タツと過ごした日々も忘れ、彼女も出来た。
でも…、誰と居ても何かが違う。
そう思っていた。
自分の右手が、なんだかいつも寂しいと思った。
高校に上がると、俺は身体が弱った婆ちゃんと暮らすようになる。
久し振りに会った婆ちゃんは
「恭介、随分と大きくなったね」
と、嬉しそうにしてくれた。
そして再び婆ちゃんと一緒に龍神神社の掃除や、山の散策をするようになる。
俺は婆ちゃんから悪戯に傷付けられた植物の手当ての仕方や、動物達の保護をやり方を教わった。
割れて落ちている食器は、もしかしたら付喪神かもしれないから、綺麗に洗って龍神神社に祀るようにも言われた。
婆ちゃんは物知りで、野原に咲く花にも在来植物と外来植物があるのを教えてもらった。
「在来植物を守らないと」
それが婆ちゃんの口癖だった。
そんな時、久し振りに子供の頃に駆け回った野原や河原に出ると、風が頬を掠める。
「きょーすけ」
呼ばれたような気がして振り向くと、そこには誰も居ない変わらない風景があるだけだった。
大学に入って間も無く、婆ちゃんは病で他界してしまい、近隣の人達からは「森の声が聞こえる人が亡くなった」と嘆かれた。
婆ちゃんの住む地域の人達には大切にされていた婆ちゃんだったが、俺のお袋は婆ちゃんが大嫌いだった。
「居もしない神様や妖怪なんか信じて、ぶつぶつ独り言を言って気味が悪い」
と言っていた。
だけど俺には婆ちゃんが嘘を言ってるようにも、ましてや頭がおかしいとも思えなかった。
生きとし生けるものを愛し、優しい婆ちゃんだった。
俺は婆ちゃんに頼まれて、あの山を守る為に勉強した。樹木医の勉強をしたり、龍神神社を綺麗にしたりしていた。
理由はわからなかったけど、此処を守らなくちゃならないと思っていた。
…そうか。タツ、きみとはそんな小さな頃から出会っていたのか…。
忘れていた記憶を思い出し
(ずっときみは…俺を見守っていてくれてたんだな…)
そう思った。
ゆっくりと目を開けると、隣で寝ている筈の空の姿が無かった。
嫌な予感がして、慌てて衣類を身に付けて外に飛び出した。
毎日、朝から夕方まで遊び
「又、明日」
って分かれた。
そして自宅に帰る前日
「タツ、俺…明日からもう此処に来れないんだ」
そう言うと、タツは悲しそうな顔をして
「どうして?私が嫌いになったの?」
と、瞳に涙を浮かべていた。
「そうじゃ無いんだ。俺、婆ちゃんの家に夏休みの間だけ来てたんだ。冬も来るけど、冬はこの山に子供は入っちゃダメだろう?」
と言うと
「じゃあ、次の夏は又会える?」
と聞かれて
「うん。必ず会いに来るよ」
そう言って指切りをした。
それから俺は、ずっと夏休みには婆ちゃんの家で過ごして、タツと遊んだ。
段々成長して、俺が小学校5年生の時だった。
いつも通りに山に行っても、タツが現れない。
いつもなら
「きょーすけ」
って、笑顔で飛び込んでくるのに…。
神社の軒先に座って待っていると
「恭介?ひいさんと遊ばないのか?」
と、婆ちゃんに言われた。
「え?」
驚いて婆ちゃんを見ると、婆ちゃんは悲しそうに笑って
「そうか…。もう、恭介にはひいさんが見えなくなってしまったんだね」
そう言って俺の頭を撫でた。
「さっきからお前の右隣で、ずっとお前に語り掛けてるよ」
俺は婆ちゃんの言葉に、そっと右隣を見た。
「大人になると、見えなくなるらしいからね」
そう言われて
「もう…会えないのか?タツとは…、もう会えないのか?」
そう聞くと、婆ちゃんが誰かに話しかけていた。
「えぇ、仕方ありません。ひい様、恭介を許して上げて下さいね」
と話した。
俺がその様子を見ていると、急に目蓋が重くなった。
ぼんやりとしていく視界。
ゆっくりと目を閉じる間際
「きょーすけ!きょーすけ!」
と、悲しそうに俺を呼ぶタツの声が聞こえたような気がした。
俺は中学に上がると、婆ちゃん家に行くよりも友達と遊ぶ方を優先するようになった。
タツと過ごした日々も忘れ、彼女も出来た。
でも…、誰と居ても何かが違う。
そう思っていた。
自分の右手が、なんだかいつも寂しいと思った。
高校に上がると、俺は身体が弱った婆ちゃんと暮らすようになる。
久し振りに会った婆ちゃんは
「恭介、随分と大きくなったね」
と、嬉しそうにしてくれた。
そして再び婆ちゃんと一緒に龍神神社の掃除や、山の散策をするようになる。
俺は婆ちゃんから悪戯に傷付けられた植物の手当ての仕方や、動物達の保護をやり方を教わった。
割れて落ちている食器は、もしかしたら付喪神かもしれないから、綺麗に洗って龍神神社に祀るようにも言われた。
婆ちゃんは物知りで、野原に咲く花にも在来植物と外来植物があるのを教えてもらった。
「在来植物を守らないと」
それが婆ちゃんの口癖だった。
そんな時、久し振りに子供の頃に駆け回った野原や河原に出ると、風が頬を掠める。
「きょーすけ」
呼ばれたような気がして振り向くと、そこには誰も居ない変わらない風景があるだけだった。
大学に入って間も無く、婆ちゃんは病で他界してしまい、近隣の人達からは「森の声が聞こえる人が亡くなった」と嘆かれた。
婆ちゃんの住む地域の人達には大切にされていた婆ちゃんだったが、俺のお袋は婆ちゃんが大嫌いだった。
「居もしない神様や妖怪なんか信じて、ぶつぶつ独り言を言って気味が悪い」
と言っていた。
だけど俺には婆ちゃんが嘘を言ってるようにも、ましてや頭がおかしいとも思えなかった。
生きとし生けるものを愛し、優しい婆ちゃんだった。
俺は婆ちゃんに頼まれて、あの山を守る為に勉強した。樹木医の勉強をしたり、龍神神社を綺麗にしたりしていた。
理由はわからなかったけど、此処を守らなくちゃならないと思っていた。
…そうか。タツ、きみとはそんな小さな頃から出会っていたのか…。
忘れていた記憶を思い出し
(ずっときみは…俺を見守っていてくれてたんだな…)
そう思った。
ゆっくりと目を開けると、隣で寝ている筈の空の姿が無かった。
嫌な予感がして、慌てて衣類を身に付けて外に飛び出した。
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