月歌(げっか)

坂井美月

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揺れる想い…真実と想いのはざまで…⑦

深い眠りに着いていたらしく、目が覚めた時は夜になっていた。
喉の渇きを感じて寝室を出ると、店長の奥様がキッチンに立っている。
奥様は私に気が付くと
「あ?喉が渇いたの?はい」
と経口補水液を渡される。
「え?まさかずっと居てくれたんですか?」
驚いて聞くと、店長の奥様は苦笑いして
「冷蔵庫、空っぽだったからお買い物に行ったりはしたけどね」
そう言うと、一人用の土鍋に火を付けた。
「まだ固形物は食べられないから…」
そう言って、店長の奥様は重湯を出してくれる。
「離乳食の予習しちゃった」
フフフって笑いながら言う店長の奥様につられて、私も笑顔になる。
一口口にした瞬間、心の中がじんわりと温かくなる。
「美味しいです」
思わず呟いた私に
「ええ~!ただの重湯だよ」
困ったように店長の奥様が笑う。
「私…小学校に上がる時に両親が離婚して、母一人子一人で生活していたんです。だから、体調を崩しても母が私の為に仕事を休むなんてしなかったので…。
こうして誰かに料理を作ってもらたのは、祖母が生きていた中学生に上がる前までなんです」
重湯を噛み締めながら呟いた私に
「柊さん…苦労して来たんだね…」
と、店長の奥様がポツリと呟く。
その言葉に私が目を丸くしていると
「そっか…。柊ちゃんは、苦労したって思ってなかったんだ。じゃあ、頑張ってたんだね」
店長の奥様が微笑んでそう言ってくれた。
私は何だか照れくさくて重湯をもう一口、口に含んで照れ隠ししてしまう。
こういう時、どうしたら良いのか分からなくなる。
すると部屋のインターフォンが鳴る。
「あ、亮君かな?」
店長の奥様は玄関へ向かいドアを開ける。
「あ、杉ちゃん」
「あの…柊さんの様子はどうですか?」
心配そうな声に店長の奥様は
「取り敢えず中に入れば?」
そう言うと、杉野チーフを中に招き入れた。
(えっと…ここは私の部屋だよね…)
苦笑してそう思っていると、杉野チーフが私の顔を見るなり抱き付いて来た。
「柊さん、大丈夫!ごめんね、体調悪いの全然気付いてあげられなくて」
今にも泣きそうな顔で杉野チーフが何度も謝る。
「そんな…私こそ、仕事に穴を空けてすみません」
そう答える私に
「ううん。柊さん、本当に頑張ってくれたから大丈夫だよ。取り敢えず、お医者様も2~3日は安静って言ってたみたいだし、ゆっくり休んで」
笑顔で言う杉野チーフには申し訳無いけど…、3日も森野さんの顔を見られないのか…って、そう、ぼんやり考えていた。
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