恋物語

坂井美月

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悲しい恋の物語④

それから程なくして、少女の予言の通り。
第一王女ご懐妊の一報が街に流され、国を上げてお祝いムードに酔いしれていた。
そんな中、少女はたった一度だけのチャンスが来るの待っておりました。
月の女神から
『王子誕生のお祭りの日、あなたは自由になれます。その日に彼と出会えなれば、あなたは永遠に国王の所有物として生涯を生きる事になるでしょう』
そう告げられたのです。
王妃がご懐妊されて、無事に王子が生まれるまでの十月十日。
少女は祈り続けます。
どうか、ご無事で産まれて来ますようにと…。
唯一、子供に恵まれなかった第1王妃は、子宝に恵まれて幸せそうにしておりました。
そんなある日の出来事でした。
普段、決して開く事の無い扉が開かれ、可愛らしい幼い少女が顔を出したのです。
歳の頃は、4~5歳という感じでしょうか。
幼い少女は、美しい少女を見て
「絵本の中のお姫様みたい」
っと可愛らしい声で叫ぶと、少女へと走り寄ります。
そして後から現れた国王に
「お父様、私、この方とお友達になりたいの」
そう叫んだのです。
「私の名前はアイシャ。あなたは?」
澄んだ美しい青い瞳が少女を見上げます。
「私の名は…フィアナ」
決して誰にも口を開かなかった少女が、初めて名前を告げた瞬間でした。
国王は、愛娘が来客の為に舞を舞った少女に憧れて、何度も国王に会いたいとせがまれておりました。
そんな愛娘の誕生日のプレゼントに「あの美しい舞を舞うあの方に会わせて欲しい」とお願いされてしまったのです。
仕方なく連れて来たものの、今まで決して口を開かなかった少女が、初めてお告げ以外で声を発し、しかも何度聞いても答えなかった少女の名前を告げた事が余程嬉しかったのでしょう。
愛娘、アイシャとだけは少女と会わせるようになるのです。
月に一度の星詠みの日と、少女が気まぐれに自分に会いに来てくれる時だけ、彼女の足枷が外されて自由になれる瞬間でした。
容姿の愛らしさだけでは無く、誰からも愛されて来た王の第三王妃の娘アイシャは、素直で可愛らしい性格でした。
少女は彼女と過ごす庭園でのひと時に安らぎを覚え、自分を真っ直ぐに愛してくれるアイシャを愛おしいと思うようになっていきます。「フィアナ、あなたは月の女神様なのよ」
アイシャはある日そう言うと
「きっといつか、お月様へ帰ってしまうわ。もし、お月様に帰っても、私の事を忘れないでね」
小さな手で少女の手を掴み、アイシャは
そう呟いた。
(この子はこの国の唯一の光。でも…)
星を詠み、人の人生が見えてしまう少女は、このアイシャの行末も見えておりました。
政略結婚の果て、嫁いだ先の王の裏切りで父王の怒りを買い、国を滅ぼされる時に殺されてしまう。
この時代、女は男の政治の為の道具でしかありませんでした。
逃れられない運命を知っても、そこから救えない悲しみを隠し、それならば今、まだ何も知らない幼いアイシャが幸せな笑顔を浮かべていられるように…と、そう願いながら共に時間を過ごしておりました。
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