7 / 13
悲しい恋の物語⑥
触れた少女の手は冷たくて、ずっと小刻みに震えておりました。
青年は少女を暖炉の傍の椅子に座らせると、暖炉に火を着けてスープを温め始めます。
しばらくして、少女は青年が出してくれたスープを口にすると、自分の全身に温もりが行き渡るのを感じました。
口にしたスープは高級な食材など一切使われてはいないけれど、青年の人柄を表すような優しくて温かい味がしました。
青年は青白くなっていた少女の頬に生気が戻って来たのを確認すると、ゆっくりと少女の座る椅子の前にしゃがんで目線を合わせ
「何処から来たの?」
と、優しく訊ねます。
少女は青年を真っ直ぐに見つめて
「私は旅一座で踊り子をしています。親の借金を返すまで、一座を抜ける事が出来ません。それでも良ければ、私を貴方の妻にしては頂けませんか?それが無理なら、せめて…今宵一夜だけで構いません。私を貴方の恋人にして欲しいのです。」
祈るような思いでそう告げました。
青年は、目の前に居る誰もが心を奪われてしまいそうな程に美しい少女が、何故自分にそのような事を言うのか分かりませんでした。
(からかわれているのかもしれない)
ふと脳裏に過ぎった言葉を打ち消すように、青年は首を振って少女に優しく語りかけます。
「きみほど美しい人なら、これからもっと高貴な家柄の方から申し出がある筈だから…。だから俺のような貧しい人間を相手にしない方が良い」
と伝えます。
すると少女は涙を流し
「貴方以外の方に触れられる位なら、死んだ方がマシです」
そう言うと、自分の手を優しく包む青年の手に触れて
「貴方を…お慕い申し上げております」
と、思いの丈を込めて青年を見つめて気持ちを伝えました。
まるで宝石のように美しい少女に心を奪われた青年は、これ以上、少女を拒む事は出来ませんでした。
これから行う行為への不安に震える少女をそっと抱き寄せ、青年は優しく髪の毛を撫でた時、ふとある事を思い出します。
国の中でも1部の人間しか知らない、国王が「エメラルド」と呼んで愛でていた少女。
決して誰にも姿を見せず、薄暗い塔に1人閉じ込められていた可哀想な女の子。
青年は少女が寂しくないようにと楽しい話を聞かせるようになり、いつしか少女と間に友情のような感情が芽生えたのを思い出します。
そして、まさか目の前の美しい少女は、国王が愛しみ、育てていた少女ではないだろうか?と脳裏をよぎるのです。
しかし、まさか国王が大切にしている少女が、あの頑丈な足枷を外し、高い牢獄のような塔から逃げ出せる筈も無いと考えました。
もし、国王が少女を自由にする時に、美しい身なりで外に出していたら、きっと青年は国王が大切にしている少女だと気付いた事でしょう。
誰にも奪われたく無いが為に、わざと貧しい身なりをさせた事が、青年の判断を狂わせてしまうなどとは夢にも思わなかったのです。
そして少女は、ずっと夢に見ていた青年と、夢のようなひと時を過ごす事となったのです。
青年は少女を暖炉の傍の椅子に座らせると、暖炉に火を着けてスープを温め始めます。
しばらくして、少女は青年が出してくれたスープを口にすると、自分の全身に温もりが行き渡るのを感じました。
口にしたスープは高級な食材など一切使われてはいないけれど、青年の人柄を表すような優しくて温かい味がしました。
青年は青白くなっていた少女の頬に生気が戻って来たのを確認すると、ゆっくりと少女の座る椅子の前にしゃがんで目線を合わせ
「何処から来たの?」
と、優しく訊ねます。
少女は青年を真っ直ぐに見つめて
「私は旅一座で踊り子をしています。親の借金を返すまで、一座を抜ける事が出来ません。それでも良ければ、私を貴方の妻にしては頂けませんか?それが無理なら、せめて…今宵一夜だけで構いません。私を貴方の恋人にして欲しいのです。」
祈るような思いでそう告げました。
青年は、目の前に居る誰もが心を奪われてしまいそうな程に美しい少女が、何故自分にそのような事を言うのか分かりませんでした。
(からかわれているのかもしれない)
ふと脳裏に過ぎった言葉を打ち消すように、青年は首を振って少女に優しく語りかけます。
「きみほど美しい人なら、これからもっと高貴な家柄の方から申し出がある筈だから…。だから俺のような貧しい人間を相手にしない方が良い」
と伝えます。
すると少女は涙を流し
「貴方以外の方に触れられる位なら、死んだ方がマシです」
そう言うと、自分の手を優しく包む青年の手に触れて
「貴方を…お慕い申し上げております」
と、思いの丈を込めて青年を見つめて気持ちを伝えました。
まるで宝石のように美しい少女に心を奪われた青年は、これ以上、少女を拒む事は出来ませんでした。
これから行う行為への不安に震える少女をそっと抱き寄せ、青年は優しく髪の毛を撫でた時、ふとある事を思い出します。
国の中でも1部の人間しか知らない、国王が「エメラルド」と呼んで愛でていた少女。
決して誰にも姿を見せず、薄暗い塔に1人閉じ込められていた可哀想な女の子。
青年は少女が寂しくないようにと楽しい話を聞かせるようになり、いつしか少女と間に友情のような感情が芽生えたのを思い出します。
そして、まさか目の前の美しい少女は、国王が愛しみ、育てていた少女ではないだろうか?と脳裏をよぎるのです。
しかし、まさか国王が大切にしている少女が、あの頑丈な足枷を外し、高い牢獄のような塔から逃げ出せる筈も無いと考えました。
もし、国王が少女を自由にする時に、美しい身なりで外に出していたら、きっと青年は国王が大切にしている少女だと気付いた事でしょう。
誰にも奪われたく無いが為に、わざと貧しい身なりをさせた事が、青年の判断を狂わせてしまうなどとは夢にも思わなかったのです。
そして少女は、ずっと夢に見ていた青年と、夢のようなひと時を過ごす事となったのです。
あなたにおすすめの小説
嘘はあなたから教わりました
菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
恋の終わりに
オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」
私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。
その時、私は
私に、できたことはーーー
※小説家になろうさんでも投稿。
※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。
タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。