8 / 13
悲しい恋の物語⑦
しおりを挟む
一夜の夢で終わらせる筈だった恋。
しかし少女には、その熱を忘れる事が出来ませんでした。
月に一度。
満月の夜に、少女は星を詠む為に宮殿へ上がり、こっそりと青年の家へと通うようになるのです。
身分も家柄も分からない美しい少女が、いつしか少女から大人の女性へと成長していき、青年の心を彼女一色へと変えてしまいました。
愛される事を知った彼女の美しさは、少女の頃には無かった大人の色香を纏うようになっていきました。
青年と過ごす温かくて穏やかな時間。
この時だけは、自分の辛い身の上を忘れて、愛する人と穏やかで温かい、幸せなひと時を過ごす一人の女性になれたのです。
そんなある日、とうとう国王の5番目の妻として娶られる日が決まってしまいました。
逃げる事の出来ない塔の中、彼女は月の女神に語り掛けます。
「私の命も残り僅か。最後に、あの方と過ごす事はできますか?」
しかし、月の女神は悲しそうに微笑むだけでした。彼女はもう、彼とは永遠に会えないのだと察します。
それと同時に、彼の存在を国王に知られてしまえば、たとえ何も知らなかったとしても…彼も殺されてしまう。
彼女はそう考え、国王の逆鱗に触れてしまう不貞罪を一人で背負う覚悟をします。
国王の5番目の妻になる日が、刻一刻と迫って来ます。
そしていよいよ運命の時がやって来ました。
足枷を外され、真っ白な美しいドレスに身を包み、祝宴が開かれました。
祝宴の後、彼女は第5王妃の宮殿に足を踏み入れます。
自分の一族を皆殺しにし、自分の自由を奪い続けた憎い男。
でも、不思議と彼女の心は穏やかでした。
(今日で全てが終わる…)
絢爛豪華な装飾品に飾られた宮殿の中は、彼女には全て寒々しい景色に見えました。
青年と過ごした家は木造で、隙間風が入るような貧しさだったけれど、暖炉に灯る炎のように温かい空気が溢れていたと…、そう思い返します。
互いに愛し合い、求め合う時間。
彼の温かい腕の中で、このまま時が止まれば良いと何度願ったのか分かりません。
しかし、その願いが決して叶わないという事も、彼女にはわかっておりました。
(もう、朝を迎える度に泣かなくて良い。)
彼の家から城へと戻る度、これが最後になるのかもしれないと、押しつぶされそうに痛む胸を抱えて青年と分かれていた。
けれど、いざその時が来ると、何故だか最後にもう一度、もう一度だけで良い。
あの優しくて温かい腕に抱(いだ)かれたいと願ってしまうのは、人間の性なのかもしれないと彼女は小さく失笑します。
そして覚悟を決め、寝室のある部屋のドアを開けました。
しかし少女には、その熱を忘れる事が出来ませんでした。
月に一度。
満月の夜に、少女は星を詠む為に宮殿へ上がり、こっそりと青年の家へと通うようになるのです。
身分も家柄も分からない美しい少女が、いつしか少女から大人の女性へと成長していき、青年の心を彼女一色へと変えてしまいました。
愛される事を知った彼女の美しさは、少女の頃には無かった大人の色香を纏うようになっていきました。
青年と過ごす温かくて穏やかな時間。
この時だけは、自分の辛い身の上を忘れて、愛する人と穏やかで温かい、幸せなひと時を過ごす一人の女性になれたのです。
そんなある日、とうとう国王の5番目の妻として娶られる日が決まってしまいました。
逃げる事の出来ない塔の中、彼女は月の女神に語り掛けます。
「私の命も残り僅か。最後に、あの方と過ごす事はできますか?」
しかし、月の女神は悲しそうに微笑むだけでした。彼女はもう、彼とは永遠に会えないのだと察します。
それと同時に、彼の存在を国王に知られてしまえば、たとえ何も知らなかったとしても…彼も殺されてしまう。
彼女はそう考え、国王の逆鱗に触れてしまう不貞罪を一人で背負う覚悟をします。
国王の5番目の妻になる日が、刻一刻と迫って来ます。
そしていよいよ運命の時がやって来ました。
足枷を外され、真っ白な美しいドレスに身を包み、祝宴が開かれました。
祝宴の後、彼女は第5王妃の宮殿に足を踏み入れます。
自分の一族を皆殺しにし、自分の自由を奪い続けた憎い男。
でも、不思議と彼女の心は穏やかでした。
(今日で全てが終わる…)
絢爛豪華な装飾品に飾られた宮殿の中は、彼女には全て寒々しい景色に見えました。
青年と過ごした家は木造で、隙間風が入るような貧しさだったけれど、暖炉に灯る炎のように温かい空気が溢れていたと…、そう思い返します。
互いに愛し合い、求め合う時間。
彼の温かい腕の中で、このまま時が止まれば良いと何度願ったのか分かりません。
しかし、その願いが決して叶わないという事も、彼女にはわかっておりました。
(もう、朝を迎える度に泣かなくて良い。)
彼の家から城へと戻る度、これが最後になるのかもしれないと、押しつぶされそうに痛む胸を抱えて青年と分かれていた。
けれど、いざその時が来ると、何故だか最後にもう一度、もう一度だけで良い。
あの優しくて温かい腕に抱(いだ)かれたいと願ってしまうのは、人間の性なのかもしれないと彼女は小さく失笑します。
そして覚悟を決め、寝室のある部屋のドアを開けました。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
あの素晴らしい愛をもう一度
仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは
33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。
家同士のつながりで婚約した2人だが
婚約期間にはお互いに惹かれあい
好きだ!
私も大好き〜!
僕はもっと大好きだ!
私だって〜!
と人前でいちゃつく姿は有名であった
そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった
はず・・・
このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。
あしからず!
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる