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悲しい恋の物語⑧
ドアを開けた部屋には、天蓋のあるベッドが置かれ、それは絵本に出てきそうな煌びやかな装飾品が飾られておりました。
(どうせ、今夜で使われなくなるというのに…。余計なことを…)
彼女は冷めた目で部屋を眺め、お付きのメイドに促されて中へと足を踏み入れます。
ドレスを脱がされ、国王を迎える為の支度が進められて行きます。
仕立ての良い真っ白な絹の寝衣に着替えると、メイド達は一礼して部屋を後にしました。
ふと目をやったベッドには、真っ新な白いシルクの寝具が敷かれ、天蓋にはレースで出来たカーテンが施されておりました。
おそらく、第5王妃としては最上の扱いを受けているのだろうと彼女は思いながら、どんなに煌びやかな装飾品よりも、青年と過ごすあの家が恋しくてたまりませんでした。
一瞬、窓から逃げ出そうと考えても、何故かこの宮殿だけは窓に格子がされており、部屋もメイド達が外から鍵を閉めたらしく出られないようになっておりました。
彼女は暮らす場所が薄暗い塔から、煌びやかな宮殿に変わっただけなのだと思い知らされ、結局は籠の中の鳥なのだと格子のされた窓から外を見上げます。
瞬く星が夜空を覆い、三日月が夜空を照らしておりました。
ぼんやりと三日月を見つめていると、部屋のドアが開く音がして、彼女はゆっくりと音の方へと振り向きます。
威厳のある風貌の王が現れ、彼女はいつものように跪いて深々と頭を下げ
「偉大なる我が国王」
と挨拶をします。
王は、手元で今か今かと待ち侘びた彼女を手に出来る喜びで上機嫌でした。
彼女の手を取り口付けを落とすと
「フィアナ、今日という日を待ち侘びたぞ」
そう言うと、彼女を抱き上げてベッドへと下ろします。
彼女はついにその『時』が来たと、覚悟を決めます。
嫌悪感しかない行為。
触れられる度に嫌悪と悍ましさで震える彼女を、王は初めての事で震えているのだと思っておりました。
そしていざ国王が彼女と結ばれた時、彼女が初めてでは無いとわかります。
「お前…男を知っておるな!」
怒りに震える国王に、彼女は冷静に身を起こし
「一生、あなたの奴隷になるのでしたら、私は見ず知らずの男に抱かれる道を選びました」
こう告げるのです。
嫉妬と怒りに震えた国王は、彼女の髪の毛を掴み
「この恩知らずが!」
と叫び、美しい頬に何度も平手を打ち付けます。しかし彼女は、この男にこれ以上汚される位なら、殴られた方がマシだとそれを黙って受け止めておりました。
国王は近くにあった剣に手を伸ばし、彼女の首に突き付けて
「相手は誰だ!教えれば、お前の命は救ってやる」
そう叫びました。
しかし彼女は怯えるでも無く、落ち着いた顔で国王を見上げ
「誰かなど知りませぬ。その日限りの、通りすがりの不特定多数のお方ですので」
と答えたのです。
国王は宝石のように大切に愛でてきた彼女の裏切り行為に怒り狂い、公開処刑を命じました。
すぐに宮殿から地下牢へと運ばれ、日が昇ったら処刑されることになりました。
しかし、彼女の顔には絶望などは無く、むしろ幸せそうに笑みを浮かべておりました。
それが国王の感情を逆撫でしてしまったのでしょう。
こんなに直ぐに処刑されてしまう彼女を、誰もが可哀想に思いました。
しかし、彼女は窓の下で祈りながら
(これでやっと…私は自由になれる)
と、そう思っていたのです。
(どうせ、今夜で使われなくなるというのに…。余計なことを…)
彼女は冷めた目で部屋を眺め、お付きのメイドに促されて中へと足を踏み入れます。
ドレスを脱がされ、国王を迎える為の支度が進められて行きます。
仕立ての良い真っ白な絹の寝衣に着替えると、メイド達は一礼して部屋を後にしました。
ふと目をやったベッドには、真っ新な白いシルクの寝具が敷かれ、天蓋にはレースで出来たカーテンが施されておりました。
おそらく、第5王妃としては最上の扱いを受けているのだろうと彼女は思いながら、どんなに煌びやかな装飾品よりも、青年と過ごすあの家が恋しくてたまりませんでした。
一瞬、窓から逃げ出そうと考えても、何故かこの宮殿だけは窓に格子がされており、部屋もメイド達が外から鍵を閉めたらしく出られないようになっておりました。
彼女は暮らす場所が薄暗い塔から、煌びやかな宮殿に変わっただけなのだと思い知らされ、結局は籠の中の鳥なのだと格子のされた窓から外を見上げます。
瞬く星が夜空を覆い、三日月が夜空を照らしておりました。
ぼんやりと三日月を見つめていると、部屋のドアが開く音がして、彼女はゆっくりと音の方へと振り向きます。
威厳のある風貌の王が現れ、彼女はいつものように跪いて深々と頭を下げ
「偉大なる我が国王」
と挨拶をします。
王は、手元で今か今かと待ち侘びた彼女を手に出来る喜びで上機嫌でした。
彼女の手を取り口付けを落とすと
「フィアナ、今日という日を待ち侘びたぞ」
そう言うと、彼女を抱き上げてベッドへと下ろします。
彼女はついにその『時』が来たと、覚悟を決めます。
嫌悪感しかない行為。
触れられる度に嫌悪と悍ましさで震える彼女を、王は初めての事で震えているのだと思っておりました。
そしていざ国王が彼女と結ばれた時、彼女が初めてでは無いとわかります。
「お前…男を知っておるな!」
怒りに震える国王に、彼女は冷静に身を起こし
「一生、あなたの奴隷になるのでしたら、私は見ず知らずの男に抱かれる道を選びました」
こう告げるのです。
嫉妬と怒りに震えた国王は、彼女の髪の毛を掴み
「この恩知らずが!」
と叫び、美しい頬に何度も平手を打ち付けます。しかし彼女は、この男にこれ以上汚される位なら、殴られた方がマシだとそれを黙って受け止めておりました。
国王は近くにあった剣に手を伸ばし、彼女の首に突き付けて
「相手は誰だ!教えれば、お前の命は救ってやる」
そう叫びました。
しかし彼女は怯えるでも無く、落ち着いた顔で国王を見上げ
「誰かなど知りませぬ。その日限りの、通りすがりの不特定多数のお方ですので」
と答えたのです。
国王は宝石のように大切に愛でてきた彼女の裏切り行為に怒り狂い、公開処刑を命じました。
すぐに宮殿から地下牢へと運ばれ、日が昇ったら処刑されることになりました。
しかし、彼女の顔には絶望などは無く、むしろ幸せそうに笑みを浮かべておりました。
それが国王の感情を逆撫でしてしまったのでしょう。
こんなに直ぐに処刑されてしまう彼女を、誰もが可哀想に思いました。
しかし、彼女は窓の下で祈りながら
(これでやっと…私は自由になれる)
と、そう思っていたのです。
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