恋物語

坂井美月

文字の大きさ
9 / 13

悲しい恋の物語⑧

ドアを開けた部屋には、天蓋のあるベッドが置かれ、それは絵本に出てきそうな煌びやかな装飾品が飾られておりました。
(どうせ、今夜で使われなくなるというのに…。余計なことを…)
彼女は冷めた目で部屋を眺め、お付きのメイドに促されて中へと足を踏み入れます。
ドレスを脱がされ、国王を迎える為の支度が進められて行きます。
仕立ての良い真っ白な絹の寝衣に着替えると、メイド達は一礼して部屋を後にしました。
ふと目をやったベッドには、真っ新な白いシルクの寝具が敷かれ、天蓋にはレースで出来たカーテンが施されておりました。
おそらく、第5王妃としては最上の扱いを受けているのだろうと彼女は思いながら、どんなに煌びやかな装飾品よりも、青年と過ごすあの家が恋しくてたまりませんでした。
一瞬、窓から逃げ出そうと考えても、何故かこの宮殿だけは窓に格子がされており、部屋もメイド達が外から鍵を閉めたらしく出られないようになっておりました。
彼女は暮らす場所が薄暗い塔から、煌びやかな宮殿に変わっただけなのだと思い知らされ、結局は籠の中の鳥なのだと格子のされた窓から外を見上げます。
瞬く星が夜空を覆い、三日月が夜空を照らしておりました。
ぼんやりと三日月を見つめていると、部屋のドアが開く音がして、彼女はゆっくりと音の方へと振り向きます。
威厳のある風貌の王が現れ、彼女はいつものように跪いて深々と頭を下げ
「偉大なる我が国王」
と挨拶をします。
王は、手元で今か今かと待ち侘びた彼女を手に出来る喜びで上機嫌でした。
彼女の手を取り口付けを落とすと
「フィアナ、今日という日を待ち侘びたぞ」
そう言うと、彼女を抱き上げてベッドへと下ろします。
彼女はついにその『時』が来たと、覚悟を決めます。
嫌悪感しかない行為。
触れられる度に嫌悪と悍ましさで震える彼女を、王は初めての事で震えているのだと思っておりました。
そしていざ国王が彼女と結ばれた時、彼女が初めてでは無いとわかります。
「お前…男を知っておるな!」
怒りに震える国王に、彼女は冷静に身を起こし
「一生、あなたの奴隷になるのでしたら、私は見ず知らずの男に抱かれる道を選びました」
こう告げるのです。
嫉妬と怒りに震えた国王は、彼女の髪の毛を掴み
「この恩知らずが!」
と叫び、美しい頬に何度も平手を打ち付けます。しかし彼女は、この男にこれ以上汚される位なら、殴られた方がマシだとそれを黙って受け止めておりました。
国王は近くにあった剣に手を伸ばし、彼女の首に突き付けて
「相手は誰だ!教えれば、お前の命は救ってやる」
そう叫びました。
しかし彼女は怯えるでも無く、落ち着いた顔で国王を見上げ
「誰かなど知りませぬ。その日限りの、通りすがりの不特定多数のお方ですので」
と答えたのです。
国王は宝石のように大切に愛でてきた彼女の裏切り行為に怒り狂い、公開処刑を命じました。
すぐに宮殿から地下牢へと運ばれ、日が昇ったら処刑されることになりました。
しかし、彼女の顔には絶望などは無く、むしろ幸せそうに笑みを浮かべておりました。
それが国王の感情を逆撫でしてしまったのでしょう。
こんなに直ぐに処刑されてしまう彼女を、誰もが可哀想に思いました。
しかし、彼女は窓の下で祈りながら
(これでやっと…私は自由になれる)
と、そう思っていたのです。
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

恋の終わりに

オオトリ
恋愛
「我々の婚約は、破棄された」 私達が生まれる前から決まっていた婚約者である、王太子殿下から告げられた言葉。 その時、私は 私に、できたことはーーー ※小説家になろうさんでも投稿。 ※一時間ごとに公開し、全3話で完結です。 タイトル及び、タグにご注意!不安のある方はお気をつけてください。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。