恋物語

坂井美月

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悲しい恋の物語⑪

彼女が殺されて最初の満月の夜が来ました。
青年は愛する彼女が来るのを、今か今かと待ち侘びます。
…しかし、彼女が訪れる事はありませんでした。
幾つもの夜が過ぎ、青年はいつしか彼女が、
何処かの国のお金持ちに買われてしまったのかもしれないと考えるようになりす。
自分が愛した彼女が、他の男の手に渡ったと考えるだけで嫉妬に狂いそうになる夜を過ごしました。
こんな思いをするのなら、彼女と出会いたくなかったと、青年は月日と共に彼女を恨むようになります。
明るく優しかった青年は、愛する人を失った失意のあまり、笑わなくなってしまいました。
毎夜、浴びるようにお酒に溺れ、自堕落な生活を送るようになってしまうのです。
月日が流れ、浴びるようにお酒を飲み続けた青年の身体は蝕まれて行きます。
愛する彼女を失った青年にとって、彼女の居ない孤独は耐え難く、いつしか精神をも蝕んでいったのです。
村の人との交流もしなくなり、いつしか働く事も出来なくなってしまいます。
身体が弱まり、青年は自分の死を覚悟しました。看病をしてくれる人もいない、暗く寒々しい自宅。
朦朧とする意識の中、青年が思い出すのは彼女と過ごした温かく幸せだった日々。
そして自分の死が近づいた時、青年は気が付くのです。
もしかしたらあの日、処刑された少女は自分の愛した彼女だったのではなかったのかと。
「旦那様」
と微笑む柔らかい笑顔。
美しいエメラルドの瞳。
焚き火の光に照らされて、金色に輝く美しい金糸のような髪の毛。
(あぁ…きみだったのか…)
自分を守る為に、不特定多数の男に身を預けたと嘘を吐き、1人大勢の観衆の中で殺されたのは、誰よりも愛しい妻だったのだと。
青年は涙を流し、こう思います。
何故、一緒に殺させてはくれなかったのか?
彼女を愛した事が罪ならば、いくらでもその罰をこの身に受けたのに…と。
そして思ったのです。
死の直前になるまで彼女の愛を信じられなかった愚かな自分は、二度と彼女を愛してはいけないと、自分で自分に呪いを掛けます。
死が近付いた時、愛した彼女に良く似た女神が目の前に現れました。
青年はその女神に最後の力を振り絞り
「もし…神様がいるのなら、生まれ変わったとしても、二度と彼女に心を奪われませんように…」
と手を伸ばして祈り、息を引き取りました。
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