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18話
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会議で俺に突っかかってきた騎士——ハヤトの姿だった。彼も他の騎士たちと同様、ワイバーンと戦いながらも、こちらの状況に気づいているようだ。ハヤトは巧みに剣を振るい、ワイバーンの攻撃を次々と切り払っている。
「おい、ハヤト!」
俺は彼に向かって叫んだ。
「もしお前さんが防御魔法が使えるようだったら、できれば引き継いでくれないか!」
ハヤトは俺を見て、明らかに嫌悪感を込めた表情を浮かべた。剣でワイバーンの爪撃を受け流しながら、冷笑を浮かべる。
「防御魔法は使えますが……その程度の魔力しかないのに、どうしてあなたは騎士になったんですか?」
彼は剣でワイバーンを斬り払いながら、毒々しく言い放つ。
「正直、足手まといですよ」
(やっぱり、そう思われているか……)
ハヤトの冷たい言葉に、俺は内心で苦笑いを浮かべた。確かに彼の言う通りだ。魔力量で言えば、俺なんかよりハヤトの方がよほど優秀だろう。
しかし——今は自分のプライドより人命優先だ。
「すまん、お前の言葉はもっともだ。……頼まれてくれるか?」
俺の素直すぎる謝罪に、ハヤトの表情がわずかに変わった。もっと言い返されるか、反発されると思っていたのだろう。
「……そうですね、その場で土下座してくれたら考えてあげます」
ハヤトは冷笑しながら言った。それでも彼は手を休めることなく、次々とワイバーンに攻撃を仕掛け続けている。その口調は挑発的だったが、どこか探るような響きも感じられた。
(くそっ、仕方ないっ)
俺は迷わず、その場で土下座した。
「頼む!」
地面に額を擦り付けながら、俺は必死に頼み込んだ。俺のプライドなんてどうでもいい。今は一人でも多くの人を守ることが最優先だ。
ハヤトはそんな俺の姿を見て、呆れたような、どこか困ったような顔を浮かべた。
「まさか、本当に土下座するなんて……」
彼の声には、嫌悪感よりも困惑の方が勝っていた。
だが、ハヤトは俺の態度に戸惑いつつも、防御魔法を展開しようと呪文の詠唱を始めてくれた。どうやらちゃんと防御魔法は引き継いでくれるつもりらしい。
「光よ、ここに来りて人の身を護れ——」
その時だった。
彼の背後に、ワイバーンが襲い掛かってきた。
ハヤトが防御魔法を展開しようとしたそのほんの一瞬の隙を狙って、鋭い爪を振り下ろしてくる。空中から急降下してきたワイバーンは、まるで矢のような速度で彼に向かって突っ込んでいた。ハヤトは攻撃に気づくのが遅れ、反応ができていない。
このままだと攻撃がモロに当たってしまう。
(さすがの俺でも、あのスピードの攻撃を今から防御魔法を再度展開して防ぐのは無理……こうなったら!)
「うおおおお!」
俺は迷わずハヤトを突き飛ばして庇った。
ワイバーンの鋭い爪が俺の背中を引き裂く。激痛が全身を駆け抜け、俺は思わず悲鳴を上げた。温かい血が背中から流れ出しているのが見なくても分かる。
「お、お前……!」
ハヤトの声が震えていた。俺を見る彼の表情には、明らかに動揺が浮かんでいる。
「ぼうっとしてないで、早く防御魔法を展開しろ!」
俺はハヤトに向かって叫んだ。背中の痛みで声が掠れる。
ハヤトははっとした表情を見せ、慌てて詠唱を再開し光属性の防御魔法を展開させる。
淡い金色の魔力壁が草原を覆い、俺の防御魔法と入れ替わる形で展開された。
俺はほっとして身体から力を抜いたが、その拍子に膝からガクッと崩れ落ちてしまう。
その騒動で、ソウマが俺が倒れたことに気づいて飛んできた。
「レイジさん!」
ソウマの顔は青ざめていた。俺を抱き起こし、背中の傷を確認しようとする。
俺は力なく笑いながら言った。
「最大戦力のお前さんが前線離れちゃダメだろ……」
「黙ってください。応急手当をします」
ソウマは真剣な表情で俺の傷を診ようとしたが、俺は首を振った。
「いや、俺のことよりまずワイバーンをなんとかしなくちゃならない」
俺は血を流しながらも、空を見上げた。
「ワイバーンの行動パターンから判断して、たぶんあの中に上位種がいると考えて間違いない。その上位種を倒せば、統率行動が取れなくなりずっと戦いやすくなるはずだ」
「しかし、その上位種はどうやって見分ければ……?」
「そうなんだよなぁ……」
空を見上げると、相変わらずそこには数百匹を超えそうなワイバーンの群れが飛んでいる。もしかしたら上位種は他の種類と違う特徴があるのかもしれないが、あれだけ数がいて、しかも空を飛んでいちゃ見分けがつくものもつかない。
そこまで考えて、俺は自分の意識が薄れていくのを感じた。
(やばい、血が出すぎている……)
視界の端がぼやけ始め、立っているのも辛くなってきた。
「レイジさん! しっかりしてください!」
ソウマが俺の名を叫ぶ。
俺は意を決した。このまま意識を失うんだったら、最後にできることをやっておかなければ。
「ソウマ、これからお前に呪文をかける」
俺は真剣な表情でソウマを見つめた。
「この呪文を使えば、お前さんは肉体、魔力、感覚、すべてにおいて能力が飛躍的に上がる。つまり、簡単に言うと超バフ魔法だ。これを使えば、お前さんならあのワイバーンの中から上位種を見つけられるだろう」
俺の説明を聞き、ソウマの表情が変わる。
「だが、まあ、ご想像の通り、この魔法を使えば俺は魔債契約の効果で倒れちまう。それに、その後も……」
俺はソウマの目をまっすぐ見つめた。
「頼めるか?」
ソウマは一瞬迷うような表情を見せたが、すぐに決意を固めた。
「……分かりました。お願いします」
その言葉を受けて、俺は呪文を詠唱し始めた。
その魂に、焔のごとき熱き闘志を——
その血潮に、清流のごとき気高き理を——
その肉体に、疾風のごとき鋭き俊敏を——
魔力が俺の身体から流れ出し、ソウマに向かって注がれていく。彼の身体が淡い光に包まれ、その光が次第に強くなっていく。
「三界の理よ、我が呼び声に応えよ——極限覚醒!」
呪文と同時に、出血と魔力枯渇で俺の意識が遠くなっていく。
そして俺の意識は、瞬く間に闇の中に沈んでいった。
「おい、ハヤト!」
俺は彼に向かって叫んだ。
「もしお前さんが防御魔法が使えるようだったら、できれば引き継いでくれないか!」
ハヤトは俺を見て、明らかに嫌悪感を込めた表情を浮かべた。剣でワイバーンの爪撃を受け流しながら、冷笑を浮かべる。
「防御魔法は使えますが……その程度の魔力しかないのに、どうしてあなたは騎士になったんですか?」
彼は剣でワイバーンを斬り払いながら、毒々しく言い放つ。
「正直、足手まといですよ」
(やっぱり、そう思われているか……)
ハヤトの冷たい言葉に、俺は内心で苦笑いを浮かべた。確かに彼の言う通りだ。魔力量で言えば、俺なんかよりハヤトの方がよほど優秀だろう。
しかし——今は自分のプライドより人命優先だ。
「すまん、お前の言葉はもっともだ。……頼まれてくれるか?」
俺の素直すぎる謝罪に、ハヤトの表情がわずかに変わった。もっと言い返されるか、反発されると思っていたのだろう。
「……そうですね、その場で土下座してくれたら考えてあげます」
ハヤトは冷笑しながら言った。それでも彼は手を休めることなく、次々とワイバーンに攻撃を仕掛け続けている。その口調は挑発的だったが、どこか探るような響きも感じられた。
(くそっ、仕方ないっ)
俺は迷わず、その場で土下座した。
「頼む!」
地面に額を擦り付けながら、俺は必死に頼み込んだ。俺のプライドなんてどうでもいい。今は一人でも多くの人を守ることが最優先だ。
ハヤトはそんな俺の姿を見て、呆れたような、どこか困ったような顔を浮かべた。
「まさか、本当に土下座するなんて……」
彼の声には、嫌悪感よりも困惑の方が勝っていた。
だが、ハヤトは俺の態度に戸惑いつつも、防御魔法を展開しようと呪文の詠唱を始めてくれた。どうやらちゃんと防御魔法は引き継いでくれるつもりらしい。
「光よ、ここに来りて人の身を護れ——」
その時だった。
彼の背後に、ワイバーンが襲い掛かってきた。
ハヤトが防御魔法を展開しようとしたそのほんの一瞬の隙を狙って、鋭い爪を振り下ろしてくる。空中から急降下してきたワイバーンは、まるで矢のような速度で彼に向かって突っ込んでいた。ハヤトは攻撃に気づくのが遅れ、反応ができていない。
このままだと攻撃がモロに当たってしまう。
(さすがの俺でも、あのスピードの攻撃を今から防御魔法を再度展開して防ぐのは無理……こうなったら!)
「うおおおお!」
俺は迷わずハヤトを突き飛ばして庇った。
ワイバーンの鋭い爪が俺の背中を引き裂く。激痛が全身を駆け抜け、俺は思わず悲鳴を上げた。温かい血が背中から流れ出しているのが見なくても分かる。
「お、お前……!」
ハヤトの声が震えていた。俺を見る彼の表情には、明らかに動揺が浮かんでいる。
「ぼうっとしてないで、早く防御魔法を展開しろ!」
俺はハヤトに向かって叫んだ。背中の痛みで声が掠れる。
ハヤトははっとした表情を見せ、慌てて詠唱を再開し光属性の防御魔法を展開させる。
淡い金色の魔力壁が草原を覆い、俺の防御魔法と入れ替わる形で展開された。
俺はほっとして身体から力を抜いたが、その拍子に膝からガクッと崩れ落ちてしまう。
その騒動で、ソウマが俺が倒れたことに気づいて飛んできた。
「レイジさん!」
ソウマの顔は青ざめていた。俺を抱き起こし、背中の傷を確認しようとする。
俺は力なく笑いながら言った。
「最大戦力のお前さんが前線離れちゃダメだろ……」
「黙ってください。応急手当をします」
ソウマは真剣な表情で俺の傷を診ようとしたが、俺は首を振った。
「いや、俺のことよりまずワイバーンをなんとかしなくちゃならない」
俺は血を流しながらも、空を見上げた。
「ワイバーンの行動パターンから判断して、たぶんあの中に上位種がいると考えて間違いない。その上位種を倒せば、統率行動が取れなくなりずっと戦いやすくなるはずだ」
「しかし、その上位種はどうやって見分ければ……?」
「そうなんだよなぁ……」
空を見上げると、相変わらずそこには数百匹を超えそうなワイバーンの群れが飛んでいる。もしかしたら上位種は他の種類と違う特徴があるのかもしれないが、あれだけ数がいて、しかも空を飛んでいちゃ見分けがつくものもつかない。
そこまで考えて、俺は自分の意識が薄れていくのを感じた。
(やばい、血が出すぎている……)
視界の端がぼやけ始め、立っているのも辛くなってきた。
「レイジさん! しっかりしてください!」
ソウマが俺の名を叫ぶ。
俺は意を決した。このまま意識を失うんだったら、最後にできることをやっておかなければ。
「ソウマ、これからお前に呪文をかける」
俺は真剣な表情でソウマを見つめた。
「この呪文を使えば、お前さんは肉体、魔力、感覚、すべてにおいて能力が飛躍的に上がる。つまり、簡単に言うと超バフ魔法だ。これを使えば、お前さんならあのワイバーンの中から上位種を見つけられるだろう」
俺の説明を聞き、ソウマの表情が変わる。
「だが、まあ、ご想像の通り、この魔法を使えば俺は魔債契約の効果で倒れちまう。それに、その後も……」
俺はソウマの目をまっすぐ見つめた。
「頼めるか?」
ソウマは一瞬迷うような表情を見せたが、すぐに決意を固めた。
「……分かりました。お願いします」
その言葉を受けて、俺は呪文を詠唱し始めた。
その魂に、焔のごとき熱き闘志を——
その血潮に、清流のごとき気高き理を——
その肉体に、疾風のごとき鋭き俊敏を——
魔力が俺の身体から流れ出し、ソウマに向かって注がれていく。彼の身体が淡い光に包まれ、その光が次第に強くなっていく。
「三界の理よ、我が呼び声に応えよ——極限覚醒!」
呪文と同時に、出血と魔力枯渇で俺の意識が遠くなっていく。
そして俺の意識は、瞬く間に闇の中に沈んでいった。
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