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プロローグ
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執務室の窓から夕日が差し込んでいる。
辺境伯フェアフィールド家の当主、サイラス・フェアフィールドは手にしていた書類を置き、その光景をしばし眺めた。
部屋全体が朱に染まる、この黄昏の時間。昼の活気と夜の静寂が交じり合うこのひととき──現実と夢の境が曖昧になるかのようなこの時間を、サイラスはとりわけ好んでいた。
そして今日も、この黄昏の時間に彼が来る。
サイラスは瞳を細め、窓の外へと視線を向けた。
一週間前、ある男が領主の館を訪れた。男はサイラスに頼み事をし、サイラスはその願いを叶える代わりにある「契約」を課した。 契約の内容は単純だ。一カ月の間、毎日この黄昏の時間に屋敷を訪れ、サイラスと共に過ごすこと。そしてその間、サイラスの命に従い彼の要求を満たすこと。
男は約束を守り続けている。契約を交わしてから今日まで、一度も遅れることなく、欠かすこともなく。
サイラスはこの男の訪れを心から待ち焦がれていた。男が義務感だけでここに来ていようと、そんなことは重要ではなかった。
ふと思い立ち、サイラスは執務机の引き出しから銀製の鏡を取り出した。映る自分の姿を改めて確認する。金髪は西日を浴びて淡く輝き、白い肌を際立たせていた。母親によく似た、中性的な容貌。サイラス自身はあまり気に入っていない外見だが──この容姿のおかげで契約がうまく進んだと考えれば、この顔もそう悪くはない。
そう思いながら鏡を眺めていた時、部屋に控えめなノックが響いた。
「入れ」
鏡を置き、扉の向こうに声をかける。扉が音もなく開き、執事が姿を現した。
「サイラス様。エドガー氏がお見えです」
その名を聞いた瞬間、サイラスの口角がわずかに上がった。来たか。無茶ともいえる自分の要求に応じ、今日も約束どおり足を運ぶとは──まったく、本当に馬鹿真面目な男だ。
「分かった。下がっていろ」
執事は一瞬、何か言いたげにサイラスを見たが言葉を飲み込み、静かに身を引いた。彼は父の代から仕える古参の従者だ。彼が自分に複雑な感情を抱いていることなど、とうに承知している。
特に、彼は自分の悪癖をよく知っている。 ──時おり、自分が気に入った男を屋敷に招くという、領主としてあるまじき癖のことを。
あの表情から察するに、苦言を呈したいのを耐えているのか、もはや諦めているのか。──どちらにせよ、大した違いはないが。
間もなく、再び扉を叩く音が響いた。
「入れ」
サイラスが促すと、一人の男が部屋に入ってきた。
ほどよく日に焼けた肌に、短く刈り込まれた黒髪。質素な麻布の服は農民のそれに見えるが、その引き締まった筋肉と無駄のない立ち居振る舞いは、彼がかつて戦いにその身を置く者であったことを雄弁に物語っている。
男──エドガーは、朱に染まった部屋に足を踏み入れるなり、気まずそうにサイラスから視線をそらした。
「やあ、エドガー。今日も約束通りに来てくれて嬉しいよ」
サイラスはその様子を楽しむように微笑み、軽やかに歩み寄った。指先が触れそうな距離に立ち、顎を上げて彼を見上げる。白い指で彼の頬を撫でると、エドガーの肩がびくりと揺れた。身体が強張り、緊張しているのがよく分かる。
「頬を撫でられただけで、その反応か」
サイラスは囁き、挑むように問いかけた。
「……お前、本当に私を抱けるのか?」
その問いかけに、エドガーは戸惑いの色を浮かべた。だがすぐに表情を引き締め、瞳を真っ直ぐにサイラスへ向ける。
「申し訳ございません。……ですが、約束はきちんと果たします。それが貴方との『契約』ですので」
エドガーの眼差しを受け、サイラスの胸がぞくりと疼いた。
「なら、その証明に私にキスをしろ」
短い沈黙ののち、エドガーはサイラスの腰をそっと抱き、ぎこちなく唇を重ねた。
サイラスは笑みを含んだまま唇をわずかに開き、舌先で彼を誘った。驚きに硬直したエドガーの舌を絡め取り、優しく蹂躙していく。戸惑いの息遣いがエドガーの喉から漏れた。
しかしそれでも彼は、その支配的なキスを拒まなかった。サイラスの舌が口腔の奥深くを探ると、エドガーも熱に駆られるように、わずかにその舌を動かし始める。
戸惑いながらも応じるその舌の動きに、サイラスの情欲はさらに煽られた。その熱に身を委ねるように、さらに深く唇を重ねていく。
いったいどれほどの時間、二人で長い口づけを交わしていただろう。サイラスが名残惜しげに唇を離すと、エドガーはぼんやりと熱を宿した瞳でサイラスを見つめていた。
その視線に、サイラスは全身に熱を帯びるのを感じた。抑えきれぬ衝動に駆られ、彼の手を引いて寝室へと歩き出した。エドガーは逆らわず、されるがままについてくる。
寝室もまた、書斎と同じく西日を浴び、すべてが濃い朱色に染まっていた。わずかに開いた窓から流れ込む風が、薄いカーテンをゆるやかに揺らしている。
だがサイラスの目には、もはや外の景色も、夕日の色さえも映っていなかった。視界にあるのは、ただ一人──目の前にいる男、エドガーだけ。
突き動かされるように、サイラスは朱色に染まったベッドにエドガーを押し倒した。そして、彼の上に跨るようにして乗り上げる。
「領主様、何を……!」
「おや、そんな呼び方はいただけないな。ムードが台無しだ」
「で、でしたら、どう呼べば……」
「簡単だろう、名前で呼べばいい。サイラス、と」
「……サイラス、様」
「そう。よくできました」
愛しい声で名を呼ばれただけで、全身が甘く痺れる。サイラスは胸元に口づけを落としながら、迷子のように戸惑う彼の表情を愉しんだ。
ああ。──彼をもっと困らせたい。もっと乱したい。
いても立ってもいられず、サイラスはエドガーの股部分にズボンの上から手を這わせた。長い口づけの余韻のせいか、そこはわずかに膨らみを帯びている。
その反応に満足し、サイラスは容赦なく彼のズボンを下着ごと引き下ろした。すると目の前に、日に焼けた肌に映える立派なものが露わになった。まだ完全には硬さを増していないのに、この大きさ。思わず喉が鳴る。
サイラスはそれを手に包み込み、そっと先端に唇を寄せた。
「……ッ!」
エドガーの肩が大きく震え、声なき喘ぎが漏れる。
必死に声を押し殺すのは、この部屋のすぐ近くに使用人たちがいることを知っているからだろう。その生真面目さが、また可笑しくて、愛おしい。
次に、サイラスはそのつるりとした亀頭に舌を這わせた。エドガーは唇を強く噛み締め、声を殺そうと抗う。だが、身体の反応はあまりにも正直だ。エドガー喉の奥で小さな呻きが漏れるのと同時に、サイラスの舌が触れている部分が、ビクッとわずかな痙攣を見せた。
それは彼が快楽を誤魔化せていない揺るぎない証拠だ。それでもなお声を押し殺そうと抗うから、サイラスは余計に弄りたくてたまらなくなる。
「強情な奴め。……なら、もう容赦はしないからな」
そう耳元で囁くと同時に、サイラスは大きく頬張るようにしてエドガーの猛る熱を口に咥えた。濡れた舌をカリ首の際を円を描くように這わせ、同時に裏筋の溝を丁寧に舐めてやる。
「っ……そ、そこ…やめ……!」
大きく、制御不能に震えるエドガーの身体。サイラスは含み笑いを浮かべつつ、エドガーの猛りの先端を舌の先で舐め上げながら、もう一方の手でその裏筋を根本へと擦り上げた。
度重なる刺激に応じて、エドガーの昂ぶりはみるみるうちに硬度を増していく。張り詰めた怒張はグロテスクなほど荒々しい脈動を訴え、先走りが艶やかに滴り落ちていた。
この様子では、彼はもうすぐにでも果ててしまいそうだ。
──けれど、それでは到底満たされない。
サイラスは激しく欲していた。この熱い昂ぶりを、ただ見ているだけでは終わらせられない。自身の中へ、今すぐにでも導きたいと。
サイラスはエドガーの猛りを口から離すと、突き動かされねように下衣を脱ぎ捨て、再び彼の腰に跨った。
「サ、サイラス様……今度は……何を……」
「いいから。お前はそこで見てるだけでいい」
耳元で囁き、わざと見せつけるように自らの指先を口に咥えて弄ぶ。 そしてそのまま、唾液に濡れたその指を、自らの下半身の孔へとゆっくりと差し入れた。
「……んっ……はぁ……っ」
指を入れると、下半身からくちゅ……と淫猥な音がした。
自らの指で奥を押し広げる。滑稽な行為のはずなのに、眼下の男に見せつけていると思うだけで、背筋が痺れるほどの興奮が込み上げた。
視線を向ければ、エドガーは息を呑んだまま硬直している。けれど、その瞳は一瞬たりとも自分から逸らしていない。
その事実に胸が灼け、衝動が抑えられなくなる。
サイラスは自らの下半身を慣らしていた手を止め、エドガーの張り詰めた怒張へと腰を寄せた。そして、濡れた入口にその先端をぴたりと押し当てる。
敏感な孔が脈打つ熱を受け止め、ぞくりと快感が走った。
あと少し腰を落とせば、容易く彼の熱を呑み込んでしまうだろう。
だが、サイラスは動かない。先端を入口でぴたりと止め、唇に微笑を浮かべる。
「さぁ、約束だ。……ここから先は、お前の意志で、私を抱いてもらおうか」
その一言に、エドガーの瞳が揺らぐ。今まで流されるままだった男は、初めて選択を迫られたのだ。ここから先に進むなら、自ら腰を動かし、サイラスの身体を貫かなくてはならない。
エドガーは一瞬、何かを考えるように息を呑んだ。だがすぐにサイラスの腰を強く掴むと、その張り詰めた熱を思い切り、容赦なくサイラスの最奥に突き立てた。
「ンぁっ、ぁ、ああ……っ!」
サイラスの口から、抑えきれない嬌声が漏れた。
待ち焦がれた猛りが、容赦なくサイラスの最奥を穿つ。その瞬間、エドガーの心の枷が外れたように見えた。つい先ほどまでなすがままだった男とは思えないほど、エドガーは貪るようにサイラスの中へ激しい突き上げを繰り返した。 理性のタガが外れたようなその勢いに、サイラスは思わず声を漏らす。
「やぁっ……んっ……あ……すごい……ッ!」
肌と肌がぶつかり合う音を聞きながら、サイラスは歓喜に震えた。
今、自分は、愛しく思う人に激しく抱かれている。
それが自分の無茶な要求に従った結果だろうと、挑発的な誘いに誘われたせいだろうと、そんなことは些細なことだ。
今、自分はこうして彼に抱かれている。それは紛れもない事実なのだから。
激しさを増す突き上げを受け、サイラスはエドガーの腰に手を回す。
エドガーはサイラスが抱きついてきたことに気づき、ふと我に返ったように動きを緩めた。そして、荒い息を吐きながら、その唇に激しい突き上げとは正反対の、労わるような優しいキスを落とす。
そのキスの甘さに酔いしれながら、サイラスは改めて目を閉じた。
そして、心の中で小さく呟く。
──契約の期間は一ヶ月。
それが過ぎるまで、彼は、自分のものだ──と。
辺境伯フェアフィールド家の当主、サイラス・フェアフィールドは手にしていた書類を置き、その光景をしばし眺めた。
部屋全体が朱に染まる、この黄昏の時間。昼の活気と夜の静寂が交じり合うこのひととき──現実と夢の境が曖昧になるかのようなこの時間を、サイラスはとりわけ好んでいた。
そして今日も、この黄昏の時間に彼が来る。
サイラスは瞳を細め、窓の外へと視線を向けた。
一週間前、ある男が領主の館を訪れた。男はサイラスに頼み事をし、サイラスはその願いを叶える代わりにある「契約」を課した。 契約の内容は単純だ。一カ月の間、毎日この黄昏の時間に屋敷を訪れ、サイラスと共に過ごすこと。そしてその間、サイラスの命に従い彼の要求を満たすこと。
男は約束を守り続けている。契約を交わしてから今日まで、一度も遅れることなく、欠かすこともなく。
サイラスはこの男の訪れを心から待ち焦がれていた。男が義務感だけでここに来ていようと、そんなことは重要ではなかった。
ふと思い立ち、サイラスは執務机の引き出しから銀製の鏡を取り出した。映る自分の姿を改めて確認する。金髪は西日を浴びて淡く輝き、白い肌を際立たせていた。母親によく似た、中性的な容貌。サイラス自身はあまり気に入っていない外見だが──この容姿のおかげで契約がうまく進んだと考えれば、この顔もそう悪くはない。
そう思いながら鏡を眺めていた時、部屋に控えめなノックが響いた。
「入れ」
鏡を置き、扉の向こうに声をかける。扉が音もなく開き、執事が姿を現した。
「サイラス様。エドガー氏がお見えです」
その名を聞いた瞬間、サイラスの口角がわずかに上がった。来たか。無茶ともいえる自分の要求に応じ、今日も約束どおり足を運ぶとは──まったく、本当に馬鹿真面目な男だ。
「分かった。下がっていろ」
執事は一瞬、何か言いたげにサイラスを見たが言葉を飲み込み、静かに身を引いた。彼は父の代から仕える古参の従者だ。彼が自分に複雑な感情を抱いていることなど、とうに承知している。
特に、彼は自分の悪癖をよく知っている。 ──時おり、自分が気に入った男を屋敷に招くという、領主としてあるまじき癖のことを。
あの表情から察するに、苦言を呈したいのを耐えているのか、もはや諦めているのか。──どちらにせよ、大した違いはないが。
間もなく、再び扉を叩く音が響いた。
「入れ」
サイラスが促すと、一人の男が部屋に入ってきた。
ほどよく日に焼けた肌に、短く刈り込まれた黒髪。質素な麻布の服は農民のそれに見えるが、その引き締まった筋肉と無駄のない立ち居振る舞いは、彼がかつて戦いにその身を置く者であったことを雄弁に物語っている。
男──エドガーは、朱に染まった部屋に足を踏み入れるなり、気まずそうにサイラスから視線をそらした。
「やあ、エドガー。今日も約束通りに来てくれて嬉しいよ」
サイラスはその様子を楽しむように微笑み、軽やかに歩み寄った。指先が触れそうな距離に立ち、顎を上げて彼を見上げる。白い指で彼の頬を撫でると、エドガーの肩がびくりと揺れた。身体が強張り、緊張しているのがよく分かる。
「頬を撫でられただけで、その反応か」
サイラスは囁き、挑むように問いかけた。
「……お前、本当に私を抱けるのか?」
その問いかけに、エドガーは戸惑いの色を浮かべた。だがすぐに表情を引き締め、瞳を真っ直ぐにサイラスへ向ける。
「申し訳ございません。……ですが、約束はきちんと果たします。それが貴方との『契約』ですので」
エドガーの眼差しを受け、サイラスの胸がぞくりと疼いた。
「なら、その証明に私にキスをしろ」
短い沈黙ののち、エドガーはサイラスの腰をそっと抱き、ぎこちなく唇を重ねた。
サイラスは笑みを含んだまま唇をわずかに開き、舌先で彼を誘った。驚きに硬直したエドガーの舌を絡め取り、優しく蹂躙していく。戸惑いの息遣いがエドガーの喉から漏れた。
しかしそれでも彼は、その支配的なキスを拒まなかった。サイラスの舌が口腔の奥深くを探ると、エドガーも熱に駆られるように、わずかにその舌を動かし始める。
戸惑いながらも応じるその舌の動きに、サイラスの情欲はさらに煽られた。その熱に身を委ねるように、さらに深く唇を重ねていく。
いったいどれほどの時間、二人で長い口づけを交わしていただろう。サイラスが名残惜しげに唇を離すと、エドガーはぼんやりと熱を宿した瞳でサイラスを見つめていた。
その視線に、サイラスは全身に熱を帯びるのを感じた。抑えきれぬ衝動に駆られ、彼の手を引いて寝室へと歩き出した。エドガーは逆らわず、されるがままについてくる。
寝室もまた、書斎と同じく西日を浴び、すべてが濃い朱色に染まっていた。わずかに開いた窓から流れ込む風が、薄いカーテンをゆるやかに揺らしている。
だがサイラスの目には、もはや外の景色も、夕日の色さえも映っていなかった。視界にあるのは、ただ一人──目の前にいる男、エドガーだけ。
突き動かされるように、サイラスは朱色に染まったベッドにエドガーを押し倒した。そして、彼の上に跨るようにして乗り上げる。
「領主様、何を……!」
「おや、そんな呼び方はいただけないな。ムードが台無しだ」
「で、でしたら、どう呼べば……」
「簡単だろう、名前で呼べばいい。サイラス、と」
「……サイラス、様」
「そう。よくできました」
愛しい声で名を呼ばれただけで、全身が甘く痺れる。サイラスは胸元に口づけを落としながら、迷子のように戸惑う彼の表情を愉しんだ。
ああ。──彼をもっと困らせたい。もっと乱したい。
いても立ってもいられず、サイラスはエドガーの股部分にズボンの上から手を這わせた。長い口づけの余韻のせいか、そこはわずかに膨らみを帯びている。
その反応に満足し、サイラスは容赦なく彼のズボンを下着ごと引き下ろした。すると目の前に、日に焼けた肌に映える立派なものが露わになった。まだ完全には硬さを増していないのに、この大きさ。思わず喉が鳴る。
サイラスはそれを手に包み込み、そっと先端に唇を寄せた。
「……ッ!」
エドガーの肩が大きく震え、声なき喘ぎが漏れる。
必死に声を押し殺すのは、この部屋のすぐ近くに使用人たちがいることを知っているからだろう。その生真面目さが、また可笑しくて、愛おしい。
次に、サイラスはそのつるりとした亀頭に舌を這わせた。エドガーは唇を強く噛み締め、声を殺そうと抗う。だが、身体の反応はあまりにも正直だ。エドガー喉の奥で小さな呻きが漏れるのと同時に、サイラスの舌が触れている部分が、ビクッとわずかな痙攣を見せた。
それは彼が快楽を誤魔化せていない揺るぎない証拠だ。それでもなお声を押し殺そうと抗うから、サイラスは余計に弄りたくてたまらなくなる。
「強情な奴め。……なら、もう容赦はしないからな」
そう耳元で囁くと同時に、サイラスは大きく頬張るようにしてエドガーの猛る熱を口に咥えた。濡れた舌をカリ首の際を円を描くように這わせ、同時に裏筋の溝を丁寧に舐めてやる。
「っ……そ、そこ…やめ……!」
大きく、制御不能に震えるエドガーの身体。サイラスは含み笑いを浮かべつつ、エドガーの猛りの先端を舌の先で舐め上げながら、もう一方の手でその裏筋を根本へと擦り上げた。
度重なる刺激に応じて、エドガーの昂ぶりはみるみるうちに硬度を増していく。張り詰めた怒張はグロテスクなほど荒々しい脈動を訴え、先走りが艶やかに滴り落ちていた。
この様子では、彼はもうすぐにでも果ててしまいそうだ。
──けれど、それでは到底満たされない。
サイラスは激しく欲していた。この熱い昂ぶりを、ただ見ているだけでは終わらせられない。自身の中へ、今すぐにでも導きたいと。
サイラスはエドガーの猛りを口から離すと、突き動かされねように下衣を脱ぎ捨て、再び彼の腰に跨った。
「サ、サイラス様……今度は……何を……」
「いいから。お前はそこで見てるだけでいい」
耳元で囁き、わざと見せつけるように自らの指先を口に咥えて弄ぶ。 そしてそのまま、唾液に濡れたその指を、自らの下半身の孔へとゆっくりと差し入れた。
「……んっ……はぁ……っ」
指を入れると、下半身からくちゅ……と淫猥な音がした。
自らの指で奥を押し広げる。滑稽な行為のはずなのに、眼下の男に見せつけていると思うだけで、背筋が痺れるほどの興奮が込み上げた。
視線を向ければ、エドガーは息を呑んだまま硬直している。けれど、その瞳は一瞬たりとも自分から逸らしていない。
その事実に胸が灼け、衝動が抑えられなくなる。
サイラスは自らの下半身を慣らしていた手を止め、エドガーの張り詰めた怒張へと腰を寄せた。そして、濡れた入口にその先端をぴたりと押し当てる。
敏感な孔が脈打つ熱を受け止め、ぞくりと快感が走った。
あと少し腰を落とせば、容易く彼の熱を呑み込んでしまうだろう。
だが、サイラスは動かない。先端を入口でぴたりと止め、唇に微笑を浮かべる。
「さぁ、約束だ。……ここから先は、お前の意志で、私を抱いてもらおうか」
その一言に、エドガーの瞳が揺らぐ。今まで流されるままだった男は、初めて選択を迫られたのだ。ここから先に進むなら、自ら腰を動かし、サイラスの身体を貫かなくてはならない。
エドガーは一瞬、何かを考えるように息を呑んだ。だがすぐにサイラスの腰を強く掴むと、その張り詰めた熱を思い切り、容赦なくサイラスの最奥に突き立てた。
「ンぁっ、ぁ、ああ……っ!」
サイラスの口から、抑えきれない嬌声が漏れた。
待ち焦がれた猛りが、容赦なくサイラスの最奥を穿つ。その瞬間、エドガーの心の枷が外れたように見えた。つい先ほどまでなすがままだった男とは思えないほど、エドガーは貪るようにサイラスの中へ激しい突き上げを繰り返した。 理性のタガが外れたようなその勢いに、サイラスは思わず声を漏らす。
「やぁっ……んっ……あ……すごい……ッ!」
肌と肌がぶつかり合う音を聞きながら、サイラスは歓喜に震えた。
今、自分は、愛しく思う人に激しく抱かれている。
それが自分の無茶な要求に従った結果だろうと、挑発的な誘いに誘われたせいだろうと、そんなことは些細なことだ。
今、自分はこうして彼に抱かれている。それは紛れもない事実なのだから。
激しさを増す突き上げを受け、サイラスはエドガーの腰に手を回す。
エドガーはサイラスが抱きついてきたことに気づき、ふと我に返ったように動きを緩めた。そして、荒い息を吐きながら、その唇に激しい突き上げとは正反対の、労わるような優しいキスを落とす。
そのキスの甘さに酔いしれながら、サイラスは改めて目を閉じた。
そして、心の中で小さく呟く。
──契約の期間は一ヶ月。
それが過ぎるまで、彼は、自分のものだ──と。
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