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EP14 【OUTBURST】(後編)

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 ゴングが鳴ったのは決着が付いてから三十秒もあとのことだった。審判席は唖然として、しばし目の前の光景が信じられなかったのだろう。

 観客や司会たちの目には、ほとんど満身創痍な俺が軽く触れただけで、デストロイヤーを爆発させたように見えた筈だ。

 有り余る魔力によって、魔法陣ごと自爆させるなんて馬鹿なことを考える奴は、そう多くはない。それでも勝ちは勝ちであって、俺はリングに立っている。

 不本意ながら、ネジの想いにも応えられたみたいだしな。

 さて、そんな訳で。命がけだった試合も終わった。

 ネジのおかげで、新しく暴発魔法も会得。

 多額の賞金をで借金も返済。これで無事に人間の体に戻れる! ……筈だったんだ。そうなる筈だったのによぉ!

「へーい、らっしゃいせー。締めて五〇〇ペルになりまーす」

 今の俺は未だに修理を終えた〈ドール〉の身体のまんまで働いていた。

 ここはネジの紹介先の魔道具店。そこで俺は花柄のエプロンをつけながらにレジ当番だ。

「借金を返し終えたら身体を返して貰えるんじゃなかったか」って? はは……今の俺にその質問をするとは、なかなかいい度胸をしてるな。

 確かに、俺はバベル闘技場で勝利し金を得た。だが、それはたったの一万二千ペルだ!

 命懸けで戦って、勝利したってのに、貰える額は一週間、土木現場で働いたときに貰った給料と二千ペルしか変わらねぇ。

 賭けの倍率は四倍にも膨れ上がってのに、俺の収入は一万二千ペル。

 グレゴリーに賭けていた観客たちは数千万は大損して顔を真っ青にするなか、俺が勝つことに賭けていたごく一部の観客は一億ペルも稼いでやがった。

 それでも俺の収入は一万二千ペル。

 一番頑張ったはずの収入は一万二千ペル……やはりおかしいッ! 納得ができねぇッ!

「ふーん。ここの店員さんはずいぶん酷い顔で接客するのね。少しはフレデリカを見習ったら?」

 憎たらしい声の客が商品籠をどん! と置いた。籠に詰まっているのは魔女の必需品である箒を改造するための部品たち。

 これで、俺の前に立つ女が誰か、薄々察しがついたんじゃないか?

「何しに来やがった、ネジ・アルナート!」

 生きた害悪。無責任で俺の大っ嫌いなクソ女。

「何って買い物に決まってるでしょ……けど、アンタのその態度は少し教育が必要そうね」

「あぁ、上等だよ。俺もこの間の収入の件で話がしたいと思ってたんだ」

 最低でも十万だ。この女からは、相応の額を支払って貰わないと納得ができねぇ。
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