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EP02 Q.好みの女性は?
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放課後。夕星はバスに揺られながら隣町を目指していた。手にしたスマートフォンには、唯一の悪友から「遊びにいこうぜ」とメッセージが届いている。
「『集合場所はいつものゲーセンでいいよな?』っと」
そこまでのLINEを打ち終えた夕星は車窓へと視線を移す。前方を進むのは迷彩色を纏うトラックだ。さらに前方にも同じような車両が数台並んで、ちょっとした渋滞を作っていた。
三年前、初めて〈エクステンド〉が怪獣を倒した際に、残された死骸をどうするかが問題となった。二〇メートルを超える巨大生物の死骸を放置出来るわけがない。さらには各国の研究機関がこぞって死骸を欲しがり、外交問題一歩手前の大騒ぎへと発展したのだ。
けれど、この問題は意外な形で解決を迎えることになる。────死骸が、何の変哲もない砂塵になってしまったのだから。
当時の研究者たちはこぞって度肝を抜かれたことであろう。「怪獣を構成する筋繊維や骨格が、何の変哲もない砂塵になる訳がない」というのが研究者たちの総意であったが、事実としてそうなってしまったのだから、彼らも口を噤むことしか出来なかった。
これも〈エクステンド〉や怪獣の正体が謎のままである要因の一つであるが、街に残された砂塵は、誰かが回収して処理しなくてはならない。
「多分、アイツらの行き先も隣町なんだろうな」
あのトラックたちは、降り積もった砂塵を然るべき保管施設へと運ぶための車両なのだろう。
もっとも最近は回収した砂塵を保管するスペースが足りなくなって、海洋の埋め立てなんかに使っているという噂なのだが……
『悪い。ちょっと遅れそうだ』とLINEを打てば、『了解』という簡素な返信が返ってきた。
まぁ、アイツのことだ。数十分くらいの時間は適当に潰すはずだろう。
夕星はLINEを閉じて、各種SNSを開く。
そこで「〈エクステンド〉」と検索ワードを入れたなら、昼間のザリガニ怪獣との奮闘をカメラに収めたものが大量にヒットした。中には間近のローアングルで撮ったと思われるものや、機体各所のメンテナンスハッチや装甲同士の継ぎ目が見えるようなものまである。
「へへっ、やっぱり大きなメカは下から煽るように撮るのが一番映えるよな。それに、この緻密なディテールにも、ロマンが詰まってるってもんよ!」
いつもは「不謹慎!」とお説教をしてくる幼馴染様も、今日は委員総会らしく、学校に残ったままだ。
つまり、今の夕星を邪魔する奴は誰もいない。
お気に入りの画像を保存し終えた夕星は、ルンルン気分で鼻歌を奏でるのであった。
◇◇◇
トラック群は別ルートを使うようで、渋滞を抜け出たバスは程なくして駅前へと停車する。
そこから歩いて四、五分程度。夕星は行き付けのゲームセンターに辿り着いた。
自動ドアを潜れば、店内の喧騒感が夕星の心を踊らせる。そして、ざっと店内を見渡せば、一際目立つスペースに設置された筐体の前でレバーを握る男子生徒を見つけた。
夕星の羽織る黒ジャケットとは正反対な白学ランは、進学校で知られる明王高校のものだ。けれど、夕星は物怖じすることもなく彼のゲーム画面を覗き込む。
「おっ、やってるな」
画面の中で派手なエフェクトと共に映し出されるのは、〈エクステンド〉と怪獣の姿だ。
これは〈エクステンド〉を題材にリリースされた格闘ゲームなのだから、画面に〈エクステンド〉や怪獣が映ること自体に不思議はない。が、プレイヤーを示すカーソルには違和感があった。
矢印が怪獣の方を指しているのだ。しかも、彼が軽やかにコマンドを打ち込めば、対峙する〈エクステンド〉のヒットポイントがガリガリと削られていく。
「あぁ、バカ! そんなことしたら、〈エクステンド〉が⁉」
夕星が発した悲痛な声も画面の中までは届かず、〈エクステンド〉が爆発のエフェクトに包まれた。
画面にデカデカと表示されるのは「YOU WIN」の文字。それを見届けた彼は得意げな笑みを浮かべて、こちらに振り返る。
「見たか夕星? この俺の華麗なるスーパープレイを!」
彼は鳥居十悟(とりいじゅうご)。夕星の中学からの悪友であった。
オールバックの髪と猛禽のように鋭い瞳は、相変わらず他者へ威圧感を与えるものだ。けれど、彼の浮かべる人懐っこい笑みは、それすらも帳消しにしてしまう。
寧ろ、愛想のよい好青年に見えてしまうのが若干ムカつくくらいだ。
「特に最後の決め技のコンボ。これを決めるために毎日三時間も練習したのさ」
進学校の生徒が勉学や部活に精を出さず、放課後ゲーセンに通い詰めるのはどうかと思うが、コイツは昔からこういう奴だった。
地頭が良いからテストで困ったなんて、経験をしたこともないのだろう。
「あーもう、わかったから!」
ウザ絡みしてくる悪友を押し退けながら、夕星は向かいの筐体へと腰かけた。
真っ先に〈エクステンド〉を操作キャラに設定。五〇〇円玉を入れて対人モードを選択する。
「おっ、いきなりか?」
「こっちは大好きな〈エクステンド〉が一方的に倒されるところを見せられたんだ。一人のオタクとして黙ってられるかよ」
「なるほどな。けど、それはあまり賢い選択とは言えないぜ」
「んだよ……?」
「コンピューターが操作する推しが俺に負けるより、自分で操作した推しが俺に負ける方がショックも大きいだろうと思ってさ」
十悟も操作キャラのカブトムシ怪獣を選択した。投げ技を主体とするカブトムシ怪獣は、軽快な技の多い〈エクステンド〉に対して不利となる。
わざわざそんなキャラを選ぶのは、きっと十悟なりの挑発なのだろう。
「上等だ。その喧嘩買ってやる」
夕星の交友関係は限りなく狭く、その原因は中学時代につるんでいた不良仲間たちと縁を切ったからだった。
その選択自体に後悔はない。けれど、十悟とだけは唯一縁を切ろうと思えなかったのだ。
「ほらほら、ガードが甘いんじゃないか?」
「クソ! キャラ相性ならこっちの方が有利だってのに!」
十悟は中学の頃から、成績も運動神経もズバ抜けていた。絶対に口に出すつもりはないが、彼には憧れてしまうところも多くある。
そんな悪友に対し、夕星がゲームでくらい一矢報いたいと思うのも当然であった。
画面の中の〈エクステンド〉はかなりダメージを食らったが、おかげで必殺技のゲージも満タンになっている。勝負を賭けるなら一瞬だ。
「なぁ、十悟。エリート校でも教えてもらえないことを一つ教えてやるよ」
夕星は素早く筐体のレバーを弾き、必殺技のコマンドを挿入する。
「勝負事はいつだって、ビビったら負けなんだよッ!」
筐体のスピーカーが一際大きな打撃音を吐き出して、カブトムシ怪獣が画面の向こうまで吹っ飛んだ。〈エクステンド〉の連撃からのアッパーカットが炸裂したのだ。
「よっしゃ! 見たかよ、これが〈エクステンド〉の本気だ!」
「マジか……これは手痛いな。けど、勝負は三ラウンド制。まだまだ喜ぶのは早いだろ?」
十悟はほんの一瞬目を丸くするも、すぐに余裕を取り戻してみせた。
「フン、だったら速攻で二ラウンド目も取らせてもらうだけだ!」
大丈夫。次のラウンドも同じようにカウンターを狙えば、カブトムシ怪獣に大ダメージが与えられる。
けれど、十悟は唐突に思わぬことを聞いてきた。
「ところでさ。夕星はやっぱり幼馴染の陽真里ちゃん派か? それとも養護教諭の未那月先生派?」
「ブッッ────⁉」
全く予想外な角度からの質問に、夕星は吹き出してしまう。
「なっ、何だよ、いきなり!」
「だから、陽真里ちゃんと未那月先生のどっちがタイプかを聞いてるんだよ。二人は天川高校の二大美人ってことで有名なんだぜ。未那月先生に至ってはうちの高校にもファンクラブがあるほどだし」
「まじかよ……」
昼間のように、普段から未那月の奇行を見せられている夕星からすれば、ファンクラブを作る連中の気が知れなかった。それに気になるのは、寧ろ────
「ちなみに俺は陽真里ちゃん派かな。中学の頃は同じ生徒会の役員同士だったわけだし」
「はぁっ⁉」
そういえばそうだったと思い出す。当時の十悟は不良であったにもかかわらず、女子生徒から多くの得票率を獲得し、生徒会長の地位にまで登り詰めたのだ。
ちなみに陽真里は「十悟のアホを一人にしたら何をしでかすか分からん」との理由で、教師たちから半ば強制的に副会長の地位に押し上げられていた。
「なぁ、夕星。幼馴染のお前が良いって言うのなら、今度陽真里ちゃんをデートに誘おうと思うんだが、どう思う?」
「なっ、なんで、そこで俺の許可がいるんだよッ! 大体、わっかんねーな! ヒバチみたいな口うるさいだけの女のどこが良いんだか?」
けれど、陽真里の横に十悟が並ぶ姿を想像して。
それが何故だか、面白くなかったのだ。
「はい、隙あり!」
そんなことを考えていたからであろう。画面の中の〈エクステンド〉はピタリと動きが止まっていた。
当然、そんなチャンスを十悟が見逃すわけもなく。二ラウンド目は彼にあっさりと奪われてしまった。
画面に大きく表示された「YOU LOOSE」がなおのこと哀愁を際立たせる。
「おいコラ、十悟ッ! 俺を動揺させようとワザと変な質問をしやがったなッ!」
「ははっ。それは言い掛かりじゃないか? プレイヤー同士の駆け引きも、ゲームの醍醐味だろうに」
向かいの筐体から顔を覗かせた十悟は、ニンマリとほくそ笑んでいた。
先程は人懐っこい笑みと評したが、訂正しよう。見る人間の神経を逆撫でする悪辣な笑みだ。
「よし、わかった……絶対泣かしてやるよ」
そう決意した夕星が再び、レバーを力強く握ろうとした瞬間だ。
今日で〝二度目〟となろう轟音が空を裂いて、鼓膜の奥を震わせた。────画面の外で、本物の〈エクステンド〉が飛来したのだ。
「『集合場所はいつものゲーセンでいいよな?』っと」
そこまでのLINEを打ち終えた夕星は車窓へと視線を移す。前方を進むのは迷彩色を纏うトラックだ。さらに前方にも同じような車両が数台並んで、ちょっとした渋滞を作っていた。
三年前、初めて〈エクステンド〉が怪獣を倒した際に、残された死骸をどうするかが問題となった。二〇メートルを超える巨大生物の死骸を放置出来るわけがない。さらには各国の研究機関がこぞって死骸を欲しがり、外交問題一歩手前の大騒ぎへと発展したのだ。
けれど、この問題は意外な形で解決を迎えることになる。────死骸が、何の変哲もない砂塵になってしまったのだから。
当時の研究者たちはこぞって度肝を抜かれたことであろう。「怪獣を構成する筋繊維や骨格が、何の変哲もない砂塵になる訳がない」というのが研究者たちの総意であったが、事実としてそうなってしまったのだから、彼らも口を噤むことしか出来なかった。
これも〈エクステンド〉や怪獣の正体が謎のままである要因の一つであるが、街に残された砂塵は、誰かが回収して処理しなくてはならない。
「多分、アイツらの行き先も隣町なんだろうな」
あのトラックたちは、降り積もった砂塵を然るべき保管施設へと運ぶための車両なのだろう。
もっとも最近は回収した砂塵を保管するスペースが足りなくなって、海洋の埋め立てなんかに使っているという噂なのだが……
『悪い。ちょっと遅れそうだ』とLINEを打てば、『了解』という簡素な返信が返ってきた。
まぁ、アイツのことだ。数十分くらいの時間は適当に潰すはずだろう。
夕星はLINEを閉じて、各種SNSを開く。
そこで「〈エクステンド〉」と検索ワードを入れたなら、昼間のザリガニ怪獣との奮闘をカメラに収めたものが大量にヒットした。中には間近のローアングルで撮ったと思われるものや、機体各所のメンテナンスハッチや装甲同士の継ぎ目が見えるようなものまである。
「へへっ、やっぱり大きなメカは下から煽るように撮るのが一番映えるよな。それに、この緻密なディテールにも、ロマンが詰まってるってもんよ!」
いつもは「不謹慎!」とお説教をしてくる幼馴染様も、今日は委員総会らしく、学校に残ったままだ。
つまり、今の夕星を邪魔する奴は誰もいない。
お気に入りの画像を保存し終えた夕星は、ルンルン気分で鼻歌を奏でるのであった。
◇◇◇
トラック群は別ルートを使うようで、渋滞を抜け出たバスは程なくして駅前へと停車する。
そこから歩いて四、五分程度。夕星は行き付けのゲームセンターに辿り着いた。
自動ドアを潜れば、店内の喧騒感が夕星の心を踊らせる。そして、ざっと店内を見渡せば、一際目立つスペースに設置された筐体の前でレバーを握る男子生徒を見つけた。
夕星の羽織る黒ジャケットとは正反対な白学ランは、進学校で知られる明王高校のものだ。けれど、夕星は物怖じすることもなく彼のゲーム画面を覗き込む。
「おっ、やってるな」
画面の中で派手なエフェクトと共に映し出されるのは、〈エクステンド〉と怪獣の姿だ。
これは〈エクステンド〉を題材にリリースされた格闘ゲームなのだから、画面に〈エクステンド〉や怪獣が映ること自体に不思議はない。が、プレイヤーを示すカーソルには違和感があった。
矢印が怪獣の方を指しているのだ。しかも、彼が軽やかにコマンドを打ち込めば、対峙する〈エクステンド〉のヒットポイントがガリガリと削られていく。
「あぁ、バカ! そんなことしたら、〈エクステンド〉が⁉」
夕星が発した悲痛な声も画面の中までは届かず、〈エクステンド〉が爆発のエフェクトに包まれた。
画面にデカデカと表示されるのは「YOU WIN」の文字。それを見届けた彼は得意げな笑みを浮かべて、こちらに振り返る。
「見たか夕星? この俺の華麗なるスーパープレイを!」
彼は鳥居十悟(とりいじゅうご)。夕星の中学からの悪友であった。
オールバックの髪と猛禽のように鋭い瞳は、相変わらず他者へ威圧感を与えるものだ。けれど、彼の浮かべる人懐っこい笑みは、それすらも帳消しにしてしまう。
寧ろ、愛想のよい好青年に見えてしまうのが若干ムカつくくらいだ。
「特に最後の決め技のコンボ。これを決めるために毎日三時間も練習したのさ」
進学校の生徒が勉学や部活に精を出さず、放課後ゲーセンに通い詰めるのはどうかと思うが、コイツは昔からこういう奴だった。
地頭が良いからテストで困ったなんて、経験をしたこともないのだろう。
「あーもう、わかったから!」
ウザ絡みしてくる悪友を押し退けながら、夕星は向かいの筐体へと腰かけた。
真っ先に〈エクステンド〉を操作キャラに設定。五〇〇円玉を入れて対人モードを選択する。
「おっ、いきなりか?」
「こっちは大好きな〈エクステンド〉が一方的に倒されるところを見せられたんだ。一人のオタクとして黙ってられるかよ」
「なるほどな。けど、それはあまり賢い選択とは言えないぜ」
「んだよ……?」
「コンピューターが操作する推しが俺に負けるより、自分で操作した推しが俺に負ける方がショックも大きいだろうと思ってさ」
十悟も操作キャラのカブトムシ怪獣を選択した。投げ技を主体とするカブトムシ怪獣は、軽快な技の多い〈エクステンド〉に対して不利となる。
わざわざそんなキャラを選ぶのは、きっと十悟なりの挑発なのだろう。
「上等だ。その喧嘩買ってやる」
夕星の交友関係は限りなく狭く、その原因は中学時代につるんでいた不良仲間たちと縁を切ったからだった。
その選択自体に後悔はない。けれど、十悟とだけは唯一縁を切ろうと思えなかったのだ。
「ほらほら、ガードが甘いんじゃないか?」
「クソ! キャラ相性ならこっちの方が有利だってのに!」
十悟は中学の頃から、成績も運動神経もズバ抜けていた。絶対に口に出すつもりはないが、彼には憧れてしまうところも多くある。
そんな悪友に対し、夕星がゲームでくらい一矢報いたいと思うのも当然であった。
画面の中の〈エクステンド〉はかなりダメージを食らったが、おかげで必殺技のゲージも満タンになっている。勝負を賭けるなら一瞬だ。
「なぁ、十悟。エリート校でも教えてもらえないことを一つ教えてやるよ」
夕星は素早く筐体のレバーを弾き、必殺技のコマンドを挿入する。
「勝負事はいつだって、ビビったら負けなんだよッ!」
筐体のスピーカーが一際大きな打撃音を吐き出して、カブトムシ怪獣が画面の向こうまで吹っ飛んだ。〈エクステンド〉の連撃からのアッパーカットが炸裂したのだ。
「よっしゃ! 見たかよ、これが〈エクステンド〉の本気だ!」
「マジか……これは手痛いな。けど、勝負は三ラウンド制。まだまだ喜ぶのは早いだろ?」
十悟はほんの一瞬目を丸くするも、すぐに余裕を取り戻してみせた。
「フン、だったら速攻で二ラウンド目も取らせてもらうだけだ!」
大丈夫。次のラウンドも同じようにカウンターを狙えば、カブトムシ怪獣に大ダメージが与えられる。
けれど、十悟は唐突に思わぬことを聞いてきた。
「ところでさ。夕星はやっぱり幼馴染の陽真里ちゃん派か? それとも養護教諭の未那月先生派?」
「ブッッ────⁉」
全く予想外な角度からの質問に、夕星は吹き出してしまう。
「なっ、何だよ、いきなり!」
「だから、陽真里ちゃんと未那月先生のどっちがタイプかを聞いてるんだよ。二人は天川高校の二大美人ってことで有名なんだぜ。未那月先生に至ってはうちの高校にもファンクラブがあるほどだし」
「まじかよ……」
昼間のように、普段から未那月の奇行を見せられている夕星からすれば、ファンクラブを作る連中の気が知れなかった。それに気になるのは、寧ろ────
「ちなみに俺は陽真里ちゃん派かな。中学の頃は同じ生徒会の役員同士だったわけだし」
「はぁっ⁉」
そういえばそうだったと思い出す。当時の十悟は不良であったにもかかわらず、女子生徒から多くの得票率を獲得し、生徒会長の地位にまで登り詰めたのだ。
ちなみに陽真里は「十悟のアホを一人にしたら何をしでかすか分からん」との理由で、教師たちから半ば強制的に副会長の地位に押し上げられていた。
「なぁ、夕星。幼馴染のお前が良いって言うのなら、今度陽真里ちゃんをデートに誘おうと思うんだが、どう思う?」
「なっ、なんで、そこで俺の許可がいるんだよッ! 大体、わっかんねーな! ヒバチみたいな口うるさいだけの女のどこが良いんだか?」
けれど、陽真里の横に十悟が並ぶ姿を想像して。
それが何故だか、面白くなかったのだ。
「はい、隙あり!」
そんなことを考えていたからであろう。画面の中の〈エクステンド〉はピタリと動きが止まっていた。
当然、そんなチャンスを十悟が見逃すわけもなく。二ラウンド目は彼にあっさりと奪われてしまった。
画面に大きく表示された「YOU LOOSE」がなおのこと哀愁を際立たせる。
「おいコラ、十悟ッ! 俺を動揺させようとワザと変な質問をしやがったなッ!」
「ははっ。それは言い掛かりじゃないか? プレイヤー同士の駆け引きも、ゲームの醍醐味だろうに」
向かいの筐体から顔を覗かせた十悟は、ニンマリとほくそ笑んでいた。
先程は人懐っこい笑みと評したが、訂正しよう。見る人間の神経を逆撫でする悪辣な笑みだ。
「よし、わかった……絶対泣かしてやるよ」
そう決意した夕星が再び、レバーを力強く握ろうとした瞬間だ。
今日で〝二度目〟となろう轟音が空を裂いて、鼓膜の奥を震わせた。────画面の外で、本物の〈エクステンド〉が飛来したのだ。
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