OverKill:LifeMeter

トンボ

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#51 お客さん

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 白夜が帰宅すると、火孁はいなかった。しんと静まる自分の部屋で、どかっとソファーに座ってみる。

 ぼーっと、ソファーの前、テーブルを挟んで向こう側にある小さなテレビを見つめた。付いていないテレビの黒い画面は白夜の姿を微妙に反射する。しかし、全く掃除していなかったせいで白いほこりがついていて、画面に移る自分の姿がよく見えなかった。

「……」

 白夜はぼーっと、そのよく見えない姿を見ていた。

 ――終わったのだ、全部。

 金剛寺との因縁も、宿星の五人カルディアンとの因縁も、全てが終わった。静かで安心できる場所に戻ってきて、初めてその実感がようやく湧き出てきた。

 胸の辺りがキューと締め付けられ、思わず口元が緩みそうになる。胸が躍る、そんな表現がお似合いかもしれない。

「……掃除、ちゃんとしよう」

 白夜はそれだけ言って、目を閉じたのだった。


 ◆


 気が付けば、口の渇きが気になって仕方がなくなっていた。白夜はゆっくりと目を開ける。その先は天井で、誰かが寝ている間に白夜を布団の上に移動させたようだ。

「痛ぅ……」

 体を起こそうとしたら、左肩にピキリと痛みが走る。

 視線をそちらへ向けると、包帯がまず目に入った。改めて自分の体を見ると、上半身は脱がされていて、所々包帯が巻かれている。

 白夜は状況を把握してみた。記憶にある限り、白夜はソファーの上で睡魔に襲われ力尽きたはずだ。そんな白夜を布団の上に寝かせ、さらに簡単な治療まで施せる人物がいる。

 考えられる中では、それができる人物は一人しか思いつかなかった。

火孁ひるめ……」

 白夜はその名前をぼそりと口にした。

 今回のこともそうだが、その前からずっと、彼女には世話になってばかりであった。顔を合わせて素直になるのは少し恥ずかしいが――白夜は少し嬉しくて、ちょっと口元を緩めた。

 そして白夜は膝の上に退けた掛け布団に乗っけた拳で、それをぎゅっと掴む。このままではいられない。まずは言葉だけでもいい、一向に早く――。

「……っ!」

 突然、部屋の襖が開けられた。そこから光が差し込んできて目が刺激される。白夜はビクっとしてリビングへ繋がっているその襖の方を見た。

「おっ、起きてたのか」

 襖を開けたのは火孁だった。いつもの改造巫女服ではなく黒い薄着ネグリジェを着ており、普段は巫女服の奇抜さで隠されていた絶妙な幼さを感じられる。

「火孁……」

「寝ぼけてる? 早く起きなよ、お客さんだ」

 ふわりと服を回せて、火孁は襖に手をかけたままきびすを返した。白夜はすぐに起き上がって火孁へ口を開く。

「待て火孁、俺はお前に……!」

 と、ここで徐々に覚醒してきた頭が改めて火孁の姿を認識する。そして火孁がさっき言った言葉も思い出して、目を細めた。

「……もしかしてお前、そんな恰好でお客さんとやらの前に出たのか……?」

「……? ああ、勿論」

 きょとんとして当然のように答える火孁に、白夜は頭を抱えずに入れらなかった。言いたいことが自然に喉の奥に引っ込んで、静かに今の心境を火孁へと告げる。

「そんなだらしない恰好で戸口を開けるなよ……心配になる……」

「心配……? ハッ、強者の特権だよこれは」

「そういうことじゃ……いや、そういう意味も多少はあるけど……」

 白い肩を出し、上下一体の薄着でそう笑う火孁。白夜はため息をつくと、火孁の隣を歩いてリビングへ歩き出た。

 そして、リビングに足を踏み入れた途端、ここにいるはずがない人と目があって白夜は硬直した。彼女はソファーの後ろにある、テーブルを囲んだイスの一つに座っていた。

「……」

「な、なんでお前が……」

 ジトリとこちらを見つめる少女――雪音を前にして、白夜は目を丸くする。そんな白夜に、今度は雪音がため息をついた。

「……他人ひとの事をとやかく言う前に、自分のことを気にしてみては?」

「……あっ」

 冷静な雪音の言葉につられて自分の姿を見る白夜。上半身は包帯以外に身に纏っているものはなく、下半身はボロボロのズボン――同じく雪音の言葉を聞いた火孁は腕を組み、隣でしたり顔をしながら白夜を見た。

「……ごめん、着替えてくる」

 
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