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人類の危機はいったんお休み 傾向と対策
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20××年 8月15日
人類の進化と絶滅をかけた三番勝負、一本目はあたしの敗北だった。
ここまでに分かったこと。“謎の存在”は、概念を直接、対象となる相手にぶつけることができるけど、他者の心を読むことまではできない。本人談なのでどこまで本当かは分からないが。ただし、他者の思考を色として認識することができる。それは今後、ポーカー系のゲームを持ちかけられた時、著しくあたしが不利じゃんか。
とあれ。
そもそもにして、何故あたしが人類代表として選ばれたか。“謎の存在”は、理由を問うこと自体がナンセンスだという。よし、仮定しよう。仮定して推論しよう。あたしは、あの日、崖から落ちて死ぬはずだった。だから、この状況は、走馬燈。というか、死ぬまでの一瞬で高速回転するあたしの脳が生み出した仮想現実。手塚先生に申し訳ないくらい程度の低い夢オチという可能性は、十分にありえる。
ありえるんだけど、でも、だから人類が進化するはともかく滅亡する、っていうのは、ちょっとヤバい。夢だった良い。仮想現実でも良い。ただ、リアルだった時―。
そこまで考えた時、あたしはゲームの途中で思い立ったことを思い出す。想起する。そもそもにしてあたしは死ぬわけであったし、そんなあたしが人類を救う?理由なんてない。よく、物語では人類っていう大きなものを救うためじゃなく、身近な大切な人を救うために頑張る、なんて話がある。だけどあたしには、そういうものも人も、ない・いない。だから、ゲームをする理由がない。そんな逡巡が。隙になった。どうでもいいやとは思わなかったけど、少なくとも、“謎の存在”が色を変えるくらいには、ゲームの勝敗に影響が出た。
あのあと、“謎の存在”は言った。
「恵さんに、あ、善戦した君に敬意を表して名前で呼ぶよ。ネアンデルタール人以来だね。これは。恵さんに言っておきたい。人類が進化するか、絶滅するかの瀬戸際というのは、リアリティがないかもしれないけど、でも事実、恐竜たちは隕石によって絶滅したし、ネアンデルタール人をはじめとしたホモ・サピエンスの仲間たちは現代に1人も生きていない。全部僕がやったんだ。痛快ではなかったし、痛烈でもなかった。事務作業なんだ。それも面倒なタイプの。できるなら、絶滅にはしたくない。かと言って、ゲームで手を抜くことはないよ。これは、人類向けの言葉を使うなら、摂理なんだ。曲げちゃいけない、理。ということで、僕は本気だから、次のゲームを楽しみにしていてね」
よく喋るなおい。
人類にとって不幸なことに、あたしには、戦う理由がない。これっぽっちも。だったらゲームを棄権すれば良いようなものだけど。でも何故か(何故って問うのは人類が初めてと彼は言っていた)、あたしは次のゲームのことがちょっと楽しみになっていた。
人類の進化と絶滅をかけた三番勝負、一本目はあたしの敗北だった。
ここまでに分かったこと。“謎の存在”は、概念を直接、対象となる相手にぶつけることができるけど、他者の心を読むことまではできない。本人談なのでどこまで本当かは分からないが。ただし、他者の思考を色として認識することができる。それは今後、ポーカー系のゲームを持ちかけられた時、著しくあたしが不利じゃんか。
とあれ。
そもそもにして、何故あたしが人類代表として選ばれたか。“謎の存在”は、理由を問うこと自体がナンセンスだという。よし、仮定しよう。仮定して推論しよう。あたしは、あの日、崖から落ちて死ぬはずだった。だから、この状況は、走馬燈。というか、死ぬまでの一瞬で高速回転するあたしの脳が生み出した仮想現実。手塚先生に申し訳ないくらい程度の低い夢オチという可能性は、十分にありえる。
ありえるんだけど、でも、だから人類が進化するはともかく滅亡する、っていうのは、ちょっとヤバい。夢だった良い。仮想現実でも良い。ただ、リアルだった時―。
そこまで考えた時、あたしはゲームの途中で思い立ったことを思い出す。想起する。そもそもにしてあたしは死ぬわけであったし、そんなあたしが人類を救う?理由なんてない。よく、物語では人類っていう大きなものを救うためじゃなく、身近な大切な人を救うために頑張る、なんて話がある。だけどあたしには、そういうものも人も、ない・いない。だから、ゲームをする理由がない。そんな逡巡が。隙になった。どうでもいいやとは思わなかったけど、少なくとも、“謎の存在”が色を変えるくらいには、ゲームの勝敗に影響が出た。
あのあと、“謎の存在”は言った。
「恵さんに、あ、善戦した君に敬意を表して名前で呼ぶよ。ネアンデルタール人以来だね。これは。恵さんに言っておきたい。人類が進化するか、絶滅するかの瀬戸際というのは、リアリティがないかもしれないけど、でも事実、恐竜たちは隕石によって絶滅したし、ネアンデルタール人をはじめとしたホモ・サピエンスの仲間たちは現代に1人も生きていない。全部僕がやったんだ。痛快ではなかったし、痛烈でもなかった。事務作業なんだ。それも面倒なタイプの。できるなら、絶滅にはしたくない。かと言って、ゲームで手を抜くことはないよ。これは、人類向けの言葉を使うなら、摂理なんだ。曲げちゃいけない、理。ということで、僕は本気だから、次のゲームを楽しみにしていてね」
よく喋るなおい。
人類にとって不幸なことに、あたしには、戦う理由がない。これっぽっちも。だったらゲームを棄権すれば良いようなものだけど。でも何故か(何故って問うのは人類が初めてと彼は言っていた)、あたしは次のゲームのことがちょっと楽しみになっていた。
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