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第111話 冒険者たち
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冒険者という言葉を使うのは少し不適切だとは思う。国家が許可証を発行し、関係者で組合……つまりはギルドを作り出す。本来ギルドという存在は閉鎖的なものだったりする。例えば技術、工業の集団としてのギルドは技術や知識の独占を招いたし、それは同時に利益の独占でもあった。
それに反発する形でまた別のギルドなんてものが生まれたりして、その両者で闘争が引き起こされるという歴史も確かに存在する。
ただシステムという点で見れば正直、私たちからすれば管理しやすいという側面もあるし、規律と統率が取れるという点も含めれば元は荒くれの連中たちを社会になじませるという教育の場としても活用できる。
悪影響というものがないわけではないけど、私、そこまで社会保障に詳しいわけじゃないし、そういう難しいのは難しいことを考える人たちに任せるだけ。
まぁ、仕事をした分の報酬は支払えるようには準備はしているけど。
現状、私たちが開設したのは狩猟ギルド。所属するのは腕に覚えのある平民や職にあぶれた次男、三男、そして一応、こちらに下った賊たち。こういった面々を許可証を与えたからと言って野放しにするのは危険である。
許可証は無法を許す免罪符でない。国家資格を持つものは、それに似合うだけの働きをしてもらわないといけない。
狩猟免許を得ること自体は『まだ』簡単だ。狩りさえできればいいし、体が資本なので、身体能力が高ければ一応合格とみなされる。
そして、彼らが狩猟するのは普通の動物ではなく、狂暴性の高いもの。モンスターと呼ばれるものたちが殆どであり、これらの対処は各地で引く手あまたでもある。
季節によって狂暴化するモンスターは違ってくるとはいうのだけど、それらは地域差というのもある。これらのデータをまとめ上げ、世に広めるという役割も彼らには担ってもらっている。
その過程で犠牲者なども当然出てしまうのだけど、悪い言葉を使うと、家族や恋人がいない場合はこっちは死人に対して、弔う以外の行為はない。仮にいた場合は、相応に慰謝料というものを支払うけど、これも厳しい調査の上で判断させてもらっている。
狩猟ギルドは今現在ではサルバトーレの領内にしか大手を振って動けていない。ダウ・ルー側としてもそれでは今すぐに導入しますというわけにもいかないし、あっちはあっちで海賊の対応に追われている。
「ま、当然、出てくるわよね、こういう連中」
で、予測はしていたけど問題が発生する。
支給された装備品などを持ち逃げする馬鹿が現れた。全くの想定内だけど、やられると損が出るし、イラつく。
正直、逃げ出すのであれば放置なのだけど、この場合、装備もそうだけど許可証を悪だくみに使われるのだけが嫌だった。
このあたりはもっとシステムを考えていかないといけないのだけど、それはまだ置いといてもいい。
「で、どうするんだ、イスズ。討伐隊でも出すか?」
お前には組織の長としての経験を積む必要があるとかなんとか言われて、ゴドワンからほぼ無理やりギルドの管理者として放り込まれたアベルはこうして届く離反者報告の対応で疲れた顔をしていた。
「当たり前でしょ。こっちは慈善事業じゃないし、犯罪を犯すのでれば、相応の罰が下されるのは当然よ」
「逃げ出した狩人を、狩人で討伐……でいいのか?」
「それはもう少し組織が成熟してからでいいかもしれないわね。連鎖的に逃げ出されても困るし……とはいえ、見せしめも必要よね。コルンたちを使って、討伐させればいいかしら」
コルンも空軍である以外はこのギルドに所属する狩人である。というよりは状況としてはギルドメンバーから軍人になったという過程を持っている。半ばこれは形骸化しているのだけど、こういう道もあると提示する為の神輿みたいな扱いでもある。
「小銃の使用を許可します。気球も使いたければ使って。ただ、二機まで。連続飛行時間は三時間。その分の燃料は渡す。手段は問いません」
このような『依頼』をギルドを通して狩人たちに実行させる。
そして成功すれば適正な報酬を頂戴する。その成果は大々的に報告されるし、多少の脚色を踏まえつつ、国民にはまるで英雄、ヒーローのように映ることだろう。
実際、コルンは今やちょっとした人気者である。元が悪辣な山賊であると評判であったコルン。実際はそんなことはなかったようだけど、エルフという能力を生かして、こうした離反者を次々と捕らえ、果ては空軍としての動きも見せる。
ある意味では大出世を果たした人物なのは間違いない。彼の配下も、学のない無法者たちだったけど、親分のコルンが実際に動いて、その姿を見せれば奮起をする。自分たちにもその栄光が得られるのだと理解する。
それでも賛同できない馬鹿な人たちはそれまで。狩られる側に落ちるだけだ。
「狩猟ギルドは食い詰めた者が落ちる先じゃあないわ。そうなってしまわないように、こちらで職場を提供する支援組織なの。相応の働きを見せれば、相応の結果として評価する。そうでない者たちは一生そのまま。厳しい世界よ。それでも結果を残せば金が手に入る。選ぶのは自分というわけよ」
この狩猟ギルドが後年、形を変えて冒険者ギルドなるものに変わっていくのだけど、それは私の預かり知らぬところ。
それに反発する形でまた別のギルドなんてものが生まれたりして、その両者で闘争が引き起こされるという歴史も確かに存在する。
ただシステムという点で見れば正直、私たちからすれば管理しやすいという側面もあるし、規律と統率が取れるという点も含めれば元は荒くれの連中たちを社会になじませるという教育の場としても活用できる。
悪影響というものがないわけではないけど、私、そこまで社会保障に詳しいわけじゃないし、そういう難しいのは難しいことを考える人たちに任せるだけ。
まぁ、仕事をした分の報酬は支払えるようには準備はしているけど。
現状、私たちが開設したのは狩猟ギルド。所属するのは腕に覚えのある平民や職にあぶれた次男、三男、そして一応、こちらに下った賊たち。こういった面々を許可証を与えたからと言って野放しにするのは危険である。
許可証は無法を許す免罪符でない。国家資格を持つものは、それに似合うだけの働きをしてもらわないといけない。
狩猟免許を得ること自体は『まだ』簡単だ。狩りさえできればいいし、体が資本なので、身体能力が高ければ一応合格とみなされる。
そして、彼らが狩猟するのは普通の動物ではなく、狂暴性の高いもの。モンスターと呼ばれるものたちが殆どであり、これらの対処は各地で引く手あまたでもある。
季節によって狂暴化するモンスターは違ってくるとはいうのだけど、それらは地域差というのもある。これらのデータをまとめ上げ、世に広めるという役割も彼らには担ってもらっている。
その過程で犠牲者なども当然出てしまうのだけど、悪い言葉を使うと、家族や恋人がいない場合はこっちは死人に対して、弔う以外の行為はない。仮にいた場合は、相応に慰謝料というものを支払うけど、これも厳しい調査の上で判断させてもらっている。
狩猟ギルドは今現在ではサルバトーレの領内にしか大手を振って動けていない。ダウ・ルー側としてもそれでは今すぐに導入しますというわけにもいかないし、あっちはあっちで海賊の対応に追われている。
「ま、当然、出てくるわよね、こういう連中」
で、予測はしていたけど問題が発生する。
支給された装備品などを持ち逃げする馬鹿が現れた。全くの想定内だけど、やられると損が出るし、イラつく。
正直、逃げ出すのであれば放置なのだけど、この場合、装備もそうだけど許可証を悪だくみに使われるのだけが嫌だった。
このあたりはもっとシステムを考えていかないといけないのだけど、それはまだ置いといてもいい。
「で、どうするんだ、イスズ。討伐隊でも出すか?」
お前には組織の長としての経験を積む必要があるとかなんとか言われて、ゴドワンからほぼ無理やりギルドの管理者として放り込まれたアベルはこうして届く離反者報告の対応で疲れた顔をしていた。
「当たり前でしょ。こっちは慈善事業じゃないし、犯罪を犯すのでれば、相応の罰が下されるのは当然よ」
「逃げ出した狩人を、狩人で討伐……でいいのか?」
「それはもう少し組織が成熟してからでいいかもしれないわね。連鎖的に逃げ出されても困るし……とはいえ、見せしめも必要よね。コルンたちを使って、討伐させればいいかしら」
コルンも空軍である以外はこのギルドに所属する狩人である。というよりは状況としてはギルドメンバーから軍人になったという過程を持っている。半ばこれは形骸化しているのだけど、こういう道もあると提示する為の神輿みたいな扱いでもある。
「小銃の使用を許可します。気球も使いたければ使って。ただ、二機まで。連続飛行時間は三時間。その分の燃料は渡す。手段は問いません」
このような『依頼』をギルドを通して狩人たちに実行させる。
そして成功すれば適正な報酬を頂戴する。その成果は大々的に報告されるし、多少の脚色を踏まえつつ、国民にはまるで英雄、ヒーローのように映ることだろう。
実際、コルンは今やちょっとした人気者である。元が悪辣な山賊であると評判であったコルン。実際はそんなことはなかったようだけど、エルフという能力を生かして、こうした離反者を次々と捕らえ、果ては空軍としての動きも見せる。
ある意味では大出世を果たした人物なのは間違いない。彼の配下も、学のない無法者たちだったけど、親分のコルンが実際に動いて、その姿を見せれば奮起をする。自分たちにもその栄光が得られるのだと理解する。
それでも賛同できない馬鹿な人たちはそれまで。狩られる側に落ちるだけだ。
「狩猟ギルドは食い詰めた者が落ちる先じゃあないわ。そうなってしまわないように、こちらで職場を提供する支援組織なの。相応の働きを見せれば、相応の結果として評価する。そうでない者たちは一生そのまま。厳しい世界よ。それでも結果を残せば金が手に入る。選ぶのは自分というわけよ」
この狩猟ギルドが後年、形を変えて冒険者ギルドなるものに変わっていくのだけど、それは私の預かり知らぬところ。
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