鉱石令嬢~没落した悪役令嬢が炭鉱で一山当てるまでのお話~

甘味亭太丸

文字の大きさ
113 / 125

第111話 冒険者たち

しおりを挟む
 冒険者という言葉を使うのは少し不適切だとは思う。国家が許可証を発行し、関係者で組合……つまりはギルドを作り出す。本来ギルドという存在は閉鎖的なものだったりする。例えば技術、工業の集団としてのギルドは技術や知識の独占を招いたし、それは同時に利益の独占でもあった。
 それに反発する形でまた別のギルドなんてものが生まれたりして、その両者で闘争が引き起こされるという歴史も確かに存在する。

 ただシステムという点で見れば正直、私たちからすれば管理しやすいという側面もあるし、規律と統率が取れるという点も含めれば元は荒くれの連中たちを社会になじませるという教育の場としても活用できる。
 悪影響というものがないわけではないけど、私、そこまで社会保障に詳しいわけじゃないし、そういう難しいのは難しいことを考える人たちに任せるだけ。
 まぁ、仕事をした分の報酬は支払えるようには準備はしているけど。

 現状、私たちが開設したのは狩猟ギルド。所属するのは腕に覚えのある平民や職にあぶれた次男、三男、そして一応、こちらに下った賊たち。こういった面々を許可証を与えたからと言って野放しにするのは危険である。
 許可証は無法を許す免罪符でない。国家資格を持つものは、それに似合うだけの働きをしてもらわないといけない。
 狩猟免許を得ること自体は『まだ』簡単だ。狩りさえできればいいし、体が資本なので、身体能力が高ければ一応合格とみなされる。

 そして、彼らが狩猟するのは普通の動物ではなく、狂暴性の高いもの。モンスターと呼ばれるものたちが殆どであり、これらの対処は各地で引く手あまたでもある。
 季節によって狂暴化するモンスターは違ってくるとはいうのだけど、それらは地域差というのもある。これらのデータをまとめ上げ、世に広めるという役割も彼らには担ってもらっている。
 その過程で犠牲者なども当然出てしまうのだけど、悪い言葉を使うと、家族や恋人がいない場合はこっちは死人に対して、弔う以外の行為はない。仮にいた場合は、相応に慰謝料というものを支払うけど、これも厳しい調査の上で判断させてもらっている。

 狩猟ギルドは今現在ではサルバトーレの領内にしか大手を振って動けていない。ダウ・ルー側としてもそれでは今すぐに導入しますというわけにもいかないし、あっちはあっちで海賊の対応に追われている。

「ま、当然、出てくるわよね、こういう連中」

 で、予測はしていたけど問題が発生する。
 支給された装備品などを持ち逃げする馬鹿が現れた。全くの想定内だけど、やられると損が出るし、イラつく。
 正直、逃げ出すのであれば放置なのだけど、この場合、装備もそうだけど許可証を悪だくみに使われるのだけが嫌だった。
 このあたりはもっとシステムを考えていかないといけないのだけど、それはまだ置いといてもいい。

「で、どうするんだ、イスズ。討伐隊でも出すか?」

 お前には組織の長としての経験を積む必要があるとかなんとか言われて、ゴドワンからほぼ無理やりギルドの管理者として放り込まれたアベルはこうして届く離反者報告の対応で疲れた顔をしていた。

「当たり前でしょ。こっちは慈善事業じゃないし、犯罪を犯すのでれば、相応の罰が下されるのは当然よ」
「逃げ出した狩人を、狩人で討伐……でいいのか?」
「それはもう少し組織が成熟してからでいいかもしれないわね。連鎖的に逃げ出されても困るし……とはいえ、見せしめも必要よね。コルンたちを使って、討伐させればいいかしら」

 コルンも空軍である以外はこのギルドに所属する狩人である。というよりは状況としてはギルドメンバーから軍人になったという過程を持っている。半ばこれは形骸化しているのだけど、こういう道もあると提示する為の神輿みたいな扱いでもある。

「小銃の使用を許可します。気球も使いたければ使って。ただ、二機まで。連続飛行時間は三時間。その分の燃料は渡す。手段は問いません」

 このような『依頼』をギルドを通して狩人たちに実行させる。
 そして成功すれば適正な報酬を頂戴する。その成果は大々的に報告されるし、多少の脚色を踏まえつつ、国民にはまるで英雄、ヒーローのように映ることだろう。
 実際、コルンは今やちょっとした人気者である。元が悪辣な山賊であると評判であったコルン。実際はそんなことはなかったようだけど、エルフという能力を生かして、こうした離反者を次々と捕らえ、果ては空軍としての動きも見せる。
 ある意味では大出世を果たした人物なのは間違いない。彼の配下も、学のない無法者たちだったけど、親分のコルンが実際に動いて、その姿を見せれば奮起をする。自分たちにもその栄光が得られるのだと理解する。
 それでも賛同できない馬鹿な人たちはそれまで。狩られる側に落ちるだけだ。

「狩猟ギルドは食い詰めた者が落ちる先じゃあないわ。そうなってしまわないように、こちらで職場を提供する支援組織なの。相応の働きを見せれば、相応の結果として評価する。そうでない者たちは一生そのまま。厳しい世界よ。それでも結果を残せば金が手に入る。選ぶのは自分というわけよ」

 この狩猟ギルドが後年、形を変えて冒険者ギルドなるものに変わっていくのだけど、それは私の預かり知らぬところ。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした

玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。 しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様” だけど――あれ? この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!? 国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。

処理中です...