異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ① 王族の令嬢は○○です

リル③ 王族の力

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 今こいつ、魔法を唱えた?

 確かにこの世界には魔法が存在するが、一般レベルでは『生活にちょっと便利な程度の単純魔法』しか広まっていない。
 複雑な魔法はけんじやの持ち分だ。

 とは言っても、そもそも人間の持つ魔力量が少ないのか、例えば火の魔法はマッチ棒がいらなくなる程度のもの。火起こしがいらないというのは革命的に便利だけれど、持続も強化も不可能という、その程度。
 これは賢者も変わらない。もちろん、たんれんと創意工夫で、一般レベルよりは遙かに強力になるが。

 しかし王族は、『魔法の才』を生まれ持つ。
 何か一つの魔法で秀でるというのは、王族が王族である証だ。


「リミデス――。それは、呪いの魔法」


 おい解説し始めたぞ。
 っていうか、呪いの魔法!?


「あんたは、私からの好感度が下がったまま朝をむかえた瞬間、死ぬわ」


 美少女は親指を立てて自分の首を切るような仕草を見せた。
 目はわり、本当にもう、最初の印象なんて欠片も残っていない。
 ――っておい! 死ぬ!?


「ちょ――ぉ。ちょっと待て! おまっ、俺は英雄だぞ!?」

「あら。私がハヤト様のことを好きになれるような言動を取って頂けたら、何も問題ないじゃありませんか」


 ふふっ、と、リルはけがれのないほほみをかべる。
 だが言っていることはちく極まりない。
 死にたくないなら私の思い通りふるえ――ってことになる。


「それにハヤト様は、相手の好感度をにんできるユニークスキルをお持ちと聞きます。その力を持って諸国の猛者もさを相手にも上手くこうしよう事を進めてきたとか――。なら、私のようなむすめの好感度を上げることぐらい、赤子の手をひねるようなものでしょう? 可愛い悪戯いたずらじゃないですか。……くすくす」


 いつわりの清楚キャラの中にかくしきれない毒気をんでやがる。隠す気が無いというのが正解だろうけれど。
 確かに俺には好感度視認スキル『ライカブル』が与えられているし、それを使って交渉を有利に進めてきた。
 だがそれは限られた人間だけが知る情報だったはず。


「おいジジイ。なんでこいつが、国家機密レベルのことを知っている?」


 こんな交渉に置けるチートスキル、最大限隠されているべきだ。


「王族じゃからのう」


 くそぅ。王族なら何でも許されると思いやがって。この中世め!
 俺は面倒くさくなって、溜息と同時に侍従へ言う。


「おい。扉の外で待ってる賢者を呼んでくれ」

「パトリシア様でございますね」

「ああ」

「かしこまりました」
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