異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ① 王族の令嬢は○○です

リル④ 好感度アップは爆弾処理です

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 パトリシア――。あいしようはパティ。
 大陸制覇に長く付き合ってくれた女賢者で、としは下だが賢者と呼ばれるだけあって頭脳めいせきたよのある良い相棒だ。

 しばらくして彼女は王座の間に入り、下のほうでかしずいた。
 元々身長が低めのパティを相手にするとどうしても視線が下がるのだが、それにしてもこうして堂々と上からながめるというのは、妙にえらくなった気分になる。


「パティ。俺にかけられた呪いを解いてほしい」

「……呪い、ですか?」


 賢者らしく場と立場をわきまえているのだろう。
 だんより少しトーンを落とした声で、パティは訊いてきた。


「ああ。こいつにかけられたんだ」


 俺がリルを指差すと、パティは驚いて目を丸くする。次いで中指をメガネに当て、くいっと上げた。


「リル様が――、呪いの魔法を?」

「お前なら解けるだろ」


 パティは国を代表する賢者。
 魔法の扱いにもけていて、特に解除は得意としている。
 必要なのは知識とかいせき能力で、絡まった糸を解いていく作業と似ているのだとか。


「……申し訳ありませんが、それは不可能にございます」

「なっ、そんなわけないだろ!」

いつかいの賢者に過ぎない私が王族の魔法を解くなど、ゆるされることではありません」


 この中世め――っ!

 人の命がかっていることをあっさり上下関係で割り切りやがって。


「わかった。じゃあ、あとでこっそり――」

「どうやったところでバレます」


 そりゃそうだろうな。
 好感度を下げたまま朝になって『なんで死んでないのよ!?』みたいな話になったら、俺と仲の良いパティが真っ先に疑われる。
 あきらめてリルの顔を見ると、あくのような表情でほくそんでいた。さっきの清楚キャラはどこへ飛んだ?


「わかったぁ? あんたはもう、私からげられないの。…………くすくす。あー、いい気味」


 ジジイ、さっきこいつのこと性格も器量も良いとか言ってなかったか? どこがだよ! どう見てもしようわるじゃねえか!!

 悪のていおうみたいな女は、ビッと俺を指差した。


「死にたくないなら大人しく私を愛して、そしてだれかに寝取られなさいっ!」


 俺はとりあえず、ライカブルを使って変態少女の好感度を確認してみる。

 グラフ表示の割合で、四十パーセント程度ってところか。
 …………想像よりだいぶ高いな。
 半分近い好感度が残っている相手に、死の呪いかけちゃったの、こいつ? ……まあネトラレを望むぐらいだから、相手の感情なんて構っていないのだろう。
 最悪だ、ほんと。

 好感度が下がったまま朝を――という言葉をそのまま受け取ったとして、好感度グラフを高中低に分けた三十三パーセント辺りがデッドラインだろうか。
 現状では安全マージンを取れていないが、慌ててこいつの好感度を上げる必要にまでは迫られていないようだ。
 好感度ってのは一瞬で上がり一瞬で下がることもあるやつかいなもので、調ちようせいは難しい。下手に触れて刺激しないほうがいい場合もある。

 ついでに周囲もぐるりと見回してみる。ジジイも案外、八十パーセント程度と高い。
 侍従や近衛兵たちはほとんどゼロだ。
 目の前で国王にたていて、あまつさえジジイ呼ばわりしているのだから、無理もないか。

 んでパティは百パーセント――と。見捨てやがったくせに。王族の言うがままにするのが当然だと思ってるしようだ。

 なら、この状況で利用すべきは、権力を持つ国王の好感度だな。


「――わかった。じゃあ爺さん、ヒロイン養成学校とやらに所属する全てのヒロイン候補をここへ集めることはできるか? 俺だって契約は履行したい」

「一声で集まるわい」


 ナイス中世。国王の命令は絶対――ってやつだ。
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