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異世界帰りへ① 王族の令嬢は○○です
凱旋と報酬③
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国王は雄弁に語る。
「既知のことじゃが、報酬のヒロインは王国が総力を上げて、日本に置ける理想のヒロイン像を研究し、確実に其方が気に入るよう育て上げた。其方の英雄譚を聞き、強い好意も抱いておる」
ちょっとした源氏物語だ。
だが悪くない。
というか有り難い。ものすっごく有り難い。
大陸を制覇している最中でも遠慮なく御用聞きを遣わせて、好みにお変わりはございませんか、とか訊きにきてくれて、五年前の好みのままということもなく、今の俺が好む女性、理想のヒロイン像の把握に努めてくれた。
そして俺は思うのだ。
ああ、この国王、本気だな――と。
本気で大陸制覇のために俺を召喚して、本気の餌で釣りにかかっているな――と。
「では。……リル、こちらへ」
横にある扉が開かれて、控えめな足音が、こと――、こと――、と柔らかく響く。
こんな俺の婚約者になってくれる女性と、初めてのご対面だ。緊張に手が震える。
しかし彼女は、そんな俺の強張った心を一瞬で変えてしまった。
王座の横へ歩き向かうまでの間に見えた横顔。
整った目鼻立ちであることに特段の驚きはない。一国の王が本気を出せば、そういう女性を見つけることぐらい造作もないだろう。
しかし淑やかな表情と落ち着き払った所作が、まるでウェディングドレスを着た花嫁のようで、彼女という存在が心にグッと押し入った。
「紹介しよう。其方のために立ち上げた『ヒロイン養成学校』で首席の成績を収めた、リル・ティシエールじゃ」
彼女は振り向いて、こちらを見詰めた。
正に理想のヒロイン像。
脳内の妄想を形にすればこうなる――と断言できる。
想像通り。
いや想像以上。
一目見ただけで惚れてしまうような、正に俺好みの女性。
ただ美しいだけでなく、可憐で、落ち着きがあり、知性的で、おっぱいはちょっと大きいぐらいで、身長は高すぎず低すぎず、横幅は少し細めで。
約束。――いや、正確には契約。それも魔法を使った、反故にすれば死ぬような呪い付きの、重い契約。
国王と俺の『双方』が認めるヒロインを日本へ持ち帰ることができる。
双方となっている以上は、気に入らなければ突き返しても構わないということになるのだが、彼女を見て突き返す必要などどこにあるだろうか。
見たところ二十歳前で俺より少し年下だろう。なのに子供感はなく、奥ゆかしく、雅やかですらある。
よくぞ――、よくぞここまで精確に日本の心を理解してくれたものだ。
国王、心の中で爺さんとかジジイとか呼んでごめん。あんた……最高だ!
「英雄、ハヤト様――」
上品で透き通る声は、王座の間に心地好く反響した。
「お初にお目にかかります。今日の日を待ち侘びておりました」
両手でスカートの裾を軽く持ち上げて、腰を曲げて深々と頭を下げる。丁寧で清楚、そして優美だ。
こんな女の子、本当に俺なんかに――。
思わず唾を飲んでしまう。
それを見てか、国王は安心させるかのように、少しフランクな、気取らない調子で語る。
「彼女はワシの孫でもある。赤子の頃から知っておるが、性格も器量も良い」
なるほど。国王の孫――、つまり王族の令嬢。
古典的ではあるが、それもヒロインを構成する大きな要素となり得るものだ。
位と気品に溢れる彼女から一度国王に視線を移して、俺は思ったままの言葉を口にした。
「彼女こそ、理想のヒロインそのものです」
「うむ。ワシも孫を手放すことに抵抗がないわけではない。しかし其方が相手であればきっとリルは幸せになれる――。そう、信じておる」
俺、日本に帰ったら頑張ろう。
この子を幸せにするためなら、何でもできる気がする。
頑張って勉強して、働いて、王族並とまではいかなくても、せめて不自由のない生活を送ってもらえるように、俺、頑張ろう。
決意して、リルという名の少女に視線を向け直す。
すると彼女はにこりと笑い、やはり些かとも濁りを感じさせないピュアな声で、ゆっくり言葉を紡いだ。
「――では、ハヤト様。早く私を寝取られてくださいね」
俺は血が出るまで耳を穿った。
「既知のことじゃが、報酬のヒロインは王国が総力を上げて、日本に置ける理想のヒロイン像を研究し、確実に其方が気に入るよう育て上げた。其方の英雄譚を聞き、強い好意も抱いておる」
ちょっとした源氏物語だ。
だが悪くない。
というか有り難い。ものすっごく有り難い。
大陸を制覇している最中でも遠慮なく御用聞きを遣わせて、好みにお変わりはございませんか、とか訊きにきてくれて、五年前の好みのままということもなく、今の俺が好む女性、理想のヒロイン像の把握に努めてくれた。
そして俺は思うのだ。
ああ、この国王、本気だな――と。
本気で大陸制覇のために俺を召喚して、本気の餌で釣りにかかっているな――と。
「では。……リル、こちらへ」
横にある扉が開かれて、控えめな足音が、こと――、こと――、と柔らかく響く。
こんな俺の婚約者になってくれる女性と、初めてのご対面だ。緊張に手が震える。
しかし彼女は、そんな俺の強張った心を一瞬で変えてしまった。
王座の横へ歩き向かうまでの間に見えた横顔。
整った目鼻立ちであることに特段の驚きはない。一国の王が本気を出せば、そういう女性を見つけることぐらい造作もないだろう。
しかし淑やかな表情と落ち着き払った所作が、まるでウェディングドレスを着た花嫁のようで、彼女という存在が心にグッと押し入った。
「紹介しよう。其方のために立ち上げた『ヒロイン養成学校』で首席の成績を収めた、リル・ティシエールじゃ」
彼女は振り向いて、こちらを見詰めた。
正に理想のヒロイン像。
脳内の妄想を形にすればこうなる――と断言できる。
想像通り。
いや想像以上。
一目見ただけで惚れてしまうような、正に俺好みの女性。
ただ美しいだけでなく、可憐で、落ち着きがあり、知性的で、おっぱいはちょっと大きいぐらいで、身長は高すぎず低すぎず、横幅は少し細めで。
約束。――いや、正確には契約。それも魔法を使った、反故にすれば死ぬような呪い付きの、重い契約。
国王と俺の『双方』が認めるヒロインを日本へ持ち帰ることができる。
双方となっている以上は、気に入らなければ突き返しても構わないということになるのだが、彼女を見て突き返す必要などどこにあるだろうか。
見たところ二十歳前で俺より少し年下だろう。なのに子供感はなく、奥ゆかしく、雅やかですらある。
よくぞ――、よくぞここまで精確に日本の心を理解してくれたものだ。
国王、心の中で爺さんとかジジイとか呼んでごめん。あんた……最高だ!
「英雄、ハヤト様――」
上品で透き通る声は、王座の間に心地好く反響した。
「お初にお目にかかります。今日の日を待ち侘びておりました」
両手でスカートの裾を軽く持ち上げて、腰を曲げて深々と頭を下げる。丁寧で清楚、そして優美だ。
こんな女の子、本当に俺なんかに――。
思わず唾を飲んでしまう。
それを見てか、国王は安心させるかのように、少しフランクな、気取らない調子で語る。
「彼女はワシの孫でもある。赤子の頃から知っておるが、性格も器量も良い」
なるほど。国王の孫――、つまり王族の令嬢。
古典的ではあるが、それもヒロインを構成する大きな要素となり得るものだ。
位と気品に溢れる彼女から一度国王に視線を移して、俺は思ったままの言葉を口にした。
「彼女こそ、理想のヒロインそのものです」
「うむ。ワシも孫を手放すことに抵抗がないわけではない。しかし其方が相手であればきっとリルは幸せになれる――。そう、信じておる」
俺、日本に帰ったら頑張ろう。
この子を幸せにするためなら、何でもできる気がする。
頑張って勉強して、働いて、王族並とまではいかなくても、せめて不自由のない生活を送ってもらえるように、俺、頑張ろう。
決意して、リルという名の少女に視線を向け直す。
すると彼女はにこりと笑い、やはり些かとも濁りを感じさせないピュアな声で、ゆっくり言葉を紡いだ。
「――では、ハヤト様。早く私を寝取られてくださいね」
俺は血が出るまで耳を穿った。
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