3 / 93
異世界帰りへ① 王族の令嬢は○○です
凱旋と報酬②
しおりを挟む
まず俺の異世界強制送還……じゃなかった強制召喚において、とても幸運な点が二つある。
一つは攻略できるほどの力を与えられ、攻略後の日本帰還が保証されていたこと。
大前提だよね。
帰れないから追い詰められて、着の身着のまま背水の陣で頑張る――っていう物語も好きだけどさ。
自分の身に降りかかるのは御免だ。
いきなり国を代表して戦えって、そんなもん断る以外の選択肢がどこにある?
戦って勝てる力があるなら、その力で逃げ果せるわ。普通に考えて。
本気の殺し合いなんてやったらスパッと首刎ねられて死ぬかもしれないんだぞ。
――――だからそれだけでは、命を賭して戦う理由には全く足りない。
そこで二つ目だ。
日本へ帰還する際には、一人、国王と俺の両者が認めた
『ヒロイン』を
『婚約者』として
持ち帰ることができる。
そしてその契約を、互いの命を賭けて履行する。
これが青春を捨てて命を賭す理由に足るかは個人の価値観によるだろうけれど、他に日本へ帰る手段が用意されていないこともあって俺は、この所謂『ヒロイン報酬』を戦う理由に定めた。
日本でそこそこ頑張って勉強をして、そこそこの学歴で、そこそこの仕事をして……。
それでそこそこの嫁を貰うことができれば良いのだけれど、現実は最後の嫁のところだけ異常に難易度が高いからな。
急に難易度をベリーハードに変えたらプレイヤーが混乱することを神様や社会は、理解していないのだ。
皆まだ一周目なんだよ。多分。
「……どうした、悩んでおるのか?」
爺さんは心配してくれている。
強制召喚とか強制スキル授与とか無茶苦茶なイベントを起こすけれど、根はいい人なんだよなあ。
国民からも慕われているし。
実際にこうして大陸制覇まで成し遂げたのだから、これはもう、後世まで語り継がれる名君ってやつだ。
「いえ。五年の旅路に思いを馳せていました」
無意識にこういう切り返しができる程度にはコミュニケーション能力が成長したが、こんなものは上っ面である。
俺は人付き合いなんて面倒くさいと思ってしまうタイプの人間だ。
この世界でスマートフォンやら何やらから解放されて、ちょっと精神的に安らいでしまった程に。
なにあの機械。
なんでプライベートの時間に他人から送られてくるどうでもいい文言を読まないといけないの。
返事をしなかったら距離を置かれるし、頑張って返事を書いたら『言葉が冷たい』とか言われるし、面倒くさくなって画像に頼ったら影で『ちょっとキモい』とか言われるし、どうすればいいんだよ。
大体、半世紀前までそんな文化は欠片もなかったのに、なんで当然のように根付いたのか理解に苦しむ。
ずっとあれに縛られていないと社会的生活を送れないって、どんな罰ゲーム?
そんな俺に、彼女なんてできるわけがない。
もしも『性格変えないと彼女できないよ』なんて言われようものなら、『じゃあできなくていい』って強がって答えて、家に帰ってから一人で枕を濡らすタイプなんだ俺は。
「本当に長い旅じゃったの。疲れも癒えていないじゃろう。少しぐらい、この国でゆっくりしてからでも構わんのじゃよ」
「……日本に、家族がいますから」
神妙な風に言ってみたが、もう五年も経っている。
日本に戻ったら死んだような扱いになっていて、ひょっとしたら家に仏壇が用意されているかもしれない。
部屋に残したあれとかパソコンの中身とか、そういうのを心配するのは一年で飽きたし、突然いなくなって両親に申し訳ないという気持ちは今でもある。
だからなおのこと、良い嫁を連れて帰って色んな意味で安心させてやりたい。
こっちの世界でも勉強はできたし、すぐに高卒認定試験を受けて大学受験をすれば二浪か三浪。かなりの後れを取るけれど、まだ絶望的展開とまでは言えないはずだ。
というか失踪した息子が五体満足で帰ってくるだけで十分だろう。きっと、生きているだけで喜んでくれる。
……いつの間にか、随分ハードルが下がったな。
この子はこんなんでまともな社会人になれるのかしら!? とか、きっともう言われない。
それは、ちょっと寂しいかもしれない。
「そうじゃな。早く両親を安心させてやりなさい」
「はい」
俺が希望に満ちた声で答えると、爺さん――いや国王は、隣に立つ侍従を呼び寄せて、何かを指示した。
――――ついに、契約が果たされる。
一つは攻略できるほどの力を与えられ、攻略後の日本帰還が保証されていたこと。
大前提だよね。
帰れないから追い詰められて、着の身着のまま背水の陣で頑張る――っていう物語も好きだけどさ。
自分の身に降りかかるのは御免だ。
いきなり国を代表して戦えって、そんなもん断る以外の選択肢がどこにある?
戦って勝てる力があるなら、その力で逃げ果せるわ。普通に考えて。
本気の殺し合いなんてやったらスパッと首刎ねられて死ぬかもしれないんだぞ。
――――だからそれだけでは、命を賭して戦う理由には全く足りない。
そこで二つ目だ。
日本へ帰還する際には、一人、国王と俺の両者が認めた
『ヒロイン』を
『婚約者』として
持ち帰ることができる。
そしてその契約を、互いの命を賭けて履行する。
これが青春を捨てて命を賭す理由に足るかは個人の価値観によるだろうけれど、他に日本へ帰る手段が用意されていないこともあって俺は、この所謂『ヒロイン報酬』を戦う理由に定めた。
日本でそこそこ頑張って勉強をして、そこそこの学歴で、そこそこの仕事をして……。
それでそこそこの嫁を貰うことができれば良いのだけれど、現実は最後の嫁のところだけ異常に難易度が高いからな。
急に難易度をベリーハードに変えたらプレイヤーが混乱することを神様や社会は、理解していないのだ。
皆まだ一周目なんだよ。多分。
「……どうした、悩んでおるのか?」
爺さんは心配してくれている。
強制召喚とか強制スキル授与とか無茶苦茶なイベントを起こすけれど、根はいい人なんだよなあ。
国民からも慕われているし。
実際にこうして大陸制覇まで成し遂げたのだから、これはもう、後世まで語り継がれる名君ってやつだ。
「いえ。五年の旅路に思いを馳せていました」
無意識にこういう切り返しができる程度にはコミュニケーション能力が成長したが、こんなものは上っ面である。
俺は人付き合いなんて面倒くさいと思ってしまうタイプの人間だ。
この世界でスマートフォンやら何やらから解放されて、ちょっと精神的に安らいでしまった程に。
なにあの機械。
なんでプライベートの時間に他人から送られてくるどうでもいい文言を読まないといけないの。
返事をしなかったら距離を置かれるし、頑張って返事を書いたら『言葉が冷たい』とか言われるし、面倒くさくなって画像に頼ったら影で『ちょっとキモい』とか言われるし、どうすればいいんだよ。
大体、半世紀前までそんな文化は欠片もなかったのに、なんで当然のように根付いたのか理解に苦しむ。
ずっとあれに縛られていないと社会的生活を送れないって、どんな罰ゲーム?
そんな俺に、彼女なんてできるわけがない。
もしも『性格変えないと彼女できないよ』なんて言われようものなら、『じゃあできなくていい』って強がって答えて、家に帰ってから一人で枕を濡らすタイプなんだ俺は。
「本当に長い旅じゃったの。疲れも癒えていないじゃろう。少しぐらい、この国でゆっくりしてからでも構わんのじゃよ」
「……日本に、家族がいますから」
神妙な風に言ってみたが、もう五年も経っている。
日本に戻ったら死んだような扱いになっていて、ひょっとしたら家に仏壇が用意されているかもしれない。
部屋に残したあれとかパソコンの中身とか、そういうのを心配するのは一年で飽きたし、突然いなくなって両親に申し訳ないという気持ちは今でもある。
だからなおのこと、良い嫁を連れて帰って色んな意味で安心させてやりたい。
こっちの世界でも勉強はできたし、すぐに高卒認定試験を受けて大学受験をすれば二浪か三浪。かなりの後れを取るけれど、まだ絶望的展開とまでは言えないはずだ。
というか失踪した息子が五体満足で帰ってくるだけで十分だろう。きっと、生きているだけで喜んでくれる。
……いつの間にか、随分ハードルが下がったな。
この子はこんなんでまともな社会人になれるのかしら!? とか、きっともう言われない。
それは、ちょっと寂しいかもしれない。
「そうじゃな。早く両親を安心させてやりなさい」
「はい」
俺が希望に満ちた声で答えると、爺さん――いや国王は、隣に立つ侍従を呼び寄せて、何かを指示した。
――――ついに、契約が果たされる。
1
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
「追放された雑用係の俺、《真理の鑑定眼》で隠れた天才を集めたら最強パーティになっていた」
きりざく
ファンタジー
ブラック企業で過労死した男は、異世界に転生し《真理の鑑定眼》を授かった。
それは人や物の“本当の価値”、隠された才能、そして未来の到達点までを見抜く能力だった。
雑用係として軽視され、ついには追放された主人公。
だが鑑定眼で見えたのは、落ちこぼれ扱いされていた者たちの“本物の才能”だった。
初見の方は第1話からどうぞ(ブックマークで続きが追いやすくなります)。
評価されなかった剣士、魔力制御に欠陥を抱えた魔法使い、使い道なしとされた職業――
主人公は次々と隠れた逸材を見抜き、仲間に迎え入れていく。
やがて集ったのは、誰もが見逃していた“未来の最強候補”たち。
鑑定で真価を示し、結果で証明する成り上がりの冒険が始まる。
これは、見る目のなかった世界を置き去りに、
真の才能を集めて最強パーティへと成り上がる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる