異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ③ 英雄は○○を好みます

朝食

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 ごうな朝食を頂くのは嫌いじゃないけれど、好きでもない。
 この落ち着いた落ち着かないふん――。
 朝なんだから、景気づけにもっとあいあいとしていたってよかろうに。

 ちなみにマノンはばくすい中で、同席しているのは国王、リル、パティ、俺。さっきとわらないメンバー。
 マノンの食事は全て部屋まで持っていくそうだ。もうルームサービスには別料金を付ければいいと思う。

 それにしても落ち着かない俺とは対照的なもので、賢者たるパティははらっている。王族のリルに至ってはさも当然のようにふるって、さすがは王族令嬢――となつとくさせられた。

 食べ物を口に運ぶなんていう生物の原点みたいな所作ですら、気品があふれる。
 その魔法のようなりよくは、日本でしよみんとして育った俺には当然身に付いていないものだ。


「なあパティ、お前よくこの落差についていけるな」


 しかしパティとは一緒に旅をした仲で、この間まで火であぶった獣の干し肉に固いパンという、ワイルドな朝食を済ませていたわけだ。
 師団を率いていたから調理担当者は当然いたけれど、旅の道中で腐りやすい生肉や水分の多いわやらかいパンなんて、出るわけがない。熱を通せるスープ類だけは、まあ、飲めたけれど。その程度だ。
 それが城に帰るとたんにこの生活。
 堂々とゆうにしていられるのを見るとみような気分になる。


「どうした、ハヤト。何か不満でもあるのかの?」

「いやぁ……。朝食ってのはもうちょっとあいあいというか、あわただしかったり、一日の始まりにさわしい感じでも良いんじゃねえかな……と。そう思ってるだけだ」

「ほう。確かにこれでは、パンをくわえて曲がり角でドンッ――という王道展開にはめぬな」


 この爺さんが日本から取り寄せた品々を今度すみずみまでチェックしてやろう。王道と言っても意外と無いからな? そういう作品。


「そんなこと期待しちゃいないけど、にもプロの料理人が全力で作りましたって感じじゃ、朝から気が張ってつかれるんだ。手作り感ゼロっていうかさ」

「其方は、そういった朝食の席が希望だと申したいのか?」

「ああ。こういうのはあんまりまない」


 ……と、ここまで言って気付いたけれど、俺はこうしてリルを始め養成学校の女性全員へめいわくをかけてしまったわけだ。

 日本の食生活がこいしすぎるのかもしれない。
 しるとかおにぎりを食べたら多分、うぇんうぇん泣くと思う。


「なるほどのう……。言われてみるとハヤトが城へ帰ってくるのは旅のちゆうの報告のみ。いて三日、というところじゃったか。馴染まないのも仕方がない。しかし今回は、長期にわたる可能性もある」

「そういうこと。如何にも中世らしいけものにくと固いパンで生きく自信はあるけれど、この貴族生活を長続きさせる自信はない。――つうか、日本に帰ることを考えたら落差が激しすぎる。うちは普通の家庭なんだ」


 俺はぎようが悪いほうじゃ無いと自負しているが、あえてテーブルにひじをついてだるく振舞った。このほうが不満が伝わるってもんだ。

 そして食事中にこうして国王が会話する、それも相手がため口で――というのは原則的にはつなのだろう。周りで待機している侍従や料理人、しつが明らかに不満そうな顔をしている。

 王に直接れるような立場の人間は、位が高い。
 そんな彼らから見れば英雄なんて、ポッと出の成り上がりみたいなもんだ。異世界人となればなおさらである。それが王とこんな調子で会話をしていたら、そりゃあ良く思わないだろう。
 侍従以外の好感度もすぐに底を付いた。

 俺の態度に問題があるのは重々承知というか、今この場に関しては無礼ないをわざと演じているわけだけど。
 こうして一気に底を付くってことは本当に王を敬っているのか、それとも自分より上に立たれて気分が悪いのか、どっちだろうねぇ。
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