異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

文字の大きさ
35 / 93
異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります

良き振る舞い

しおりを挟む
 玉座の間は、ドデカい扉で固く閉ざされていた。


「おいっ、ここを開けてくれ!」


 しかし門番の兵は、いつさい聞く耳を持ってくれない。


「玉座の間は国王陛下とえつけんする者にのみ、開かれる場です。陛下の指示無くとびらを開けることは、あり得ません」

「国がピンチなんだよ!」

「なりません」


 くそ……っ。頭の固いやつだ。
 ライカブルで好感度確認――――っと、好感度ゼロか。
 よく見たら今朝の食事の席にいたな、この人。

 まさかここまで急場にせまられるとは考えていなかった。好感度を上げるよりも国王と側近の関係性を測ることを優先してしまった。

 もしも俺が国王に悪態をついて好感度が大して下がらない側近がいれば、そいつは国王や今の絶対王政を快く思っていない可能性がある。
 上手く取り入って利用できるか、危険人物として差し出して処理をして、他の側近からの好感度を上げるか――。
 どちらにせよ好都合だったわけだ。

 表と裏の顔が違う人間なんて、いくらでもいる。
 しかしこの人は、本当に心から国王を信頼しているわけで、さぶりやこうしようは通じないだろう。


「あの――。私がお願いしても、ダメですか……?」


 リルが一歩前へ出て、気まずそうに言う。


「……ダメです。いかに王族と言えど通せぬものは通せません。――第一、リル様は王族と言えど爵位もなく、ジニ家をげるお立場でもないでしょう」


 めかけの子だから――ってやつか。
 この国は決まった価値観でしか物事を測れない規則にでもなっているのか、と文句を言いたい。……が、だいたい権力者の周りってのはそういうものだ。多分、日本でも。


「お願いします。通してください!」


 リルが兵へ頭を下げる。
 んー……。少しだけ好感度がじようしようした……か?

 これはあくまで俺に対する好感度であって、リルに対するものではない。でもリルが頭を下げたえいきようで俺への好感度まで上がった――。

 王族が頭を下げる事態に、少なからず心を動かされたわけだ。
 この人の弱点は、そこにありそうだな。
 できれば力尽くでのとつはしたくない。


「お願いします!!」


 こうべれたままのリルが再び言葉を発したところで、俺はあえて彼女を制する。


「――リル様、王族が頭を下げるようなことをしては、いけませんよ」

「…………はぁっ?」


 はぁっ? じゃねえよ。本気で『何言ってんのこの人キモいんだけど』みたいな声出して、目なんか点になってるじゃねえか。
 …………まあいい。仕方がないから、このまま続行だ。


「ここは一般人である私が、頭を下げましょう」

「いやいや、いきなり気持ち悪いわよ。なに、私とか一般人とか」

「いくら大陸を制覇した英雄と言えど、王族とは身分が異なります。ここで頭を下げるべきは、リル様ではございません」


 優しく表情を作って語りかけたはずなのに、リルが吐き気をもよおしたような顔をやめてくれない。ほん――っとうに失礼な奴だな!

 俺が国王に召喚された理由はあくまで『武力行使前提の大陸制覇』だった。
 でも俺は血が流れるところも、誰かが武器で殺されるのも、殺すのも、大切な人を失った人を見るのも、居たたまれない。見たくない。

 だからそこに『最大限平和的に解決する』なんて難題を、自ら付け加えた。
 状況を打破するためなら――。


「ちょっ、ハヤトくん!?」


 土下座ぐらい、でもない。


「この通りです! もちろん武器になるものは全てぼつしゆうされても構いません! なんならはだかにされても文句一つ言いません! …………しかし、本当に一大事なのです。国王陛下に知らせなければ、国民も、王城も、取り返しのつかない危機にひんしてしまいます!」


 顔をせたほうが声だけで演技できる分、楽でもある。
 遠くから『ぶよんっ♪』とけな音が定期的に聞こえてくるのが、どうにもしんけんけずっている気がするけれど……。


「し……しかしだなっ」


 土下座中は相手を見ることが出来ないから、ライカブルでの好感度確認も出来ないのが難しいところだ。
 けれどまあ、この人なら下がりはしないだろう。
 そして俺がけしかけているのは、目の前の兵だけではない。


「あ…………あなたは、国の英雄がここまでしても、扉一つ開けられないというのですか!?」


 そうそう。リルが感情的に怒ってくれれば、この状況はより打破しやすくなる。
 これはリルを煽る行動でもあるわけだ。


「いやっ、ですが――」

「確かにこの人は英雄と言っても、ゲスい考えの持ち主で、いかがわしい店を好み、無礼きわまりなく、人妻が大好きで、王族をようしよく扱いする人です!」


 言い過ぎだ! 人のせいへきまでばくするんじゃない! 恥ずかしいだろ!
 つうか養殖ヒロインの件、忘れてないのな。


「しかし彼は、お祖父様が召喚した英雄です! 大陸制覇をげた御方の話に僅かな聞く耳を持つぐらい、国民の務めではありませんか!?」


 うーん。こいつも感情的になった結果、キャラが変わっているな。
 まあ王族としての振るまいがそうさせているのだろう。色んな顔を持つ女性である。そこは嫌いじゃない。

 リルがっているすきを見て、チラリと顔を見上げてみる。
 好感度四十パーセント……。ゼロからのいちじるしいきゆうじようしようだ。
 リルへの好感度はこれよりはるかに高いだろうから、そろそろかんらくしても不思議ではない。


「――英雄ハヤトよ。おもてを上げなさい」


 しかし思わぬ方向から渋みのある声が鳴って、俺たちは声の持ち主に視線をやった。
 同時に『ぶよんっ♪』と、間抜けな音が鳴る。危機感ないなあ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...