異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

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異世界帰りへ④ 魔法は時として○○にもなります

お邪魔しています②

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 ようやくコントローラーを手放した国王が、首を傾げる。


「はて……。しかしなぜ、いまさらそんな問題になるのかの。ワシがこれを始めたのは五年前じゃよ」

「そこなんだよな……」

「お祖父様のお力が、関係しているのではございませんか?」


 ……ん?


「爺さんの得意魔法って、召喚術だろ?」

「はい。ですから、ゲーム世界から無意識に召喚してしまったのではないかと」

「無意識って……。そりゃまた随分と、はためいわくな話だな」


 ゲーム世界からの召喚、ねえ。


「しかし、それならばやはり、ワシが日本のゲームに手を付けた五年前からこの問題は起こっておるはずじゃ。つじつまが合わぬ」

「お祖父様、ハヤトくんを召喚するために、何年の月日を要しましたか?」

「五年じゃのう」


 ………………おい。


「ちょっと待て。それって、魔法発動に五年の時間がかかるってことか?」

「多分ね」

「そうとは限らぬよ。召喚には『対価』が求められるが、生物は対価の設定が難しいというだけじゃ。物体であれば、対価さえあれば数日、年会費を払えば速くて二十四時間もかからんのじゃが」


 どこのアマゾンだそれは。

 ……しかしこれは想像以上に事が大きい。
 思わず頭を抱えてしまった。


「ってことは対価さえ噛み合えば、これから爺さんが遊んだゲーム世界の影響がバンバン出てくるんじゃねえのか? まさかかたぱしから召喚術使ったりしてないだろうな?」

「………………」

「おいっ」

「…………じゃって、ぶよのキャラクターって可愛いし…………の?」

「だから『の?』じゃねえぇぇぇぇぇっ!! 思いっきりあんたのわざじゃねえか!!」

「違う! ワシの召喚術は人や物を対象にしておる! くうの創造物を現世に降臨させることなどかなわぬ話じゃ!」


 むう……。そりゃまあ確かに。
 架空世界からキャラクターを呼べるなら、俺なんか召喚しないって話になるわけだ。
 この世界にも数々の空想物語があって、英雄たんも定番のジャンルである。そこから英雄を召喚すればいい。
 さぞ品行方正でゆうかんな英雄を呼び寄せられたことだろう。


「しかし……の。試したことは事実じゃが、ワシだけでどうにかなるとは思えぬ。何らかの作用が……。そう、例えば強大な魔力を持った者が、ほうじんに触れて魔力供給を行った――とか」

「強大な魔力、ねえ」


 ――――うん、と考えて、そつこうで思い当たる節が一つしかないことに気付いた。


「どう考えてもマノンじゃねえかッ!! 爺さん、まさか魔方陣って客室にないだろうな!?」

「王が代々ぐ魔方陣がどこにあるか。それは王族のみが知るとくじゃよ」


 ほう。ここまできて王族が云々うんぬん言いやがるか、このジジイ。
 俺は腰に付けている護身用のナイフを取り出した。


「ちょっ、ハヤトくん!?」

「勘違いするな。ジジイを殺したら契約不履行で俺も死ぬんだ。これは――――」


 毎日しっかりいで切れ味を保ったナイフを、スーファミの本体にてた。


「ぶっこわすぞ?」

「待て待て待て!! それに税金がいくら費やされたと思っておる!?」

「そもそも税金でゲーム買ってんじゃねえよ!!」

「むぅ……。…………仕方がないのう」


 ……俺、あんたの国が大変なことになってるから、がんって原因を探してるんだけど?


「お祖父様!」


 よほど秘匿にしなければならない情報なのか、リルが声を大にして、国王の発言を止めようとした。


「いくらハヤトくん――英雄様が相手だからといって、国家の存亡に関わるお話は――っ」


 ん? 俺が聞き出そうとしてる話って、そんな重大こうなの……か?


「仕方がなかろう。スーファミを壊されるわけにもいかぬ」

「しかしっ!」


 いやいや、爺さんもそれならそれで黙ってろよ。なにスーファミと国家の存亡をてんびんにかけて、しれっとスーファミ選んでんだよ。


「日本では子供がゲームに熱中するあまり、親がゲーム機をかいすることもあると聞く」

「なんだその情報は。どこで聞いたんだ」


 ふと、昔のおくがよみがえる――――――。



 ……引きこもっていた頃の俺はPSPを片手に、母ちゃんへ『おねだり』をした。


『母ちゃん、今度出るゲームソフトがしいんだけど……』

『そうかい。……そんなにゲームが欲しいのかい』

『だからその、おづかいを――』


 俺がそう口にした瞬間、母ちゃんはキレた。


『こんなものがあるから引きこもるんだよ!! そう、これが悪いの! 私の育て方は間違ってないの! このゲームが全て悪いの! こんなものぉぉぉぉぉ――ッ!!』

『なっ、何すんだクソババアァァァァァッ!!』


 そうして俺のPSPは、母ちゃんのひざでバキィッと割られた。



「…………ハヤトくん? ねえ、ハヤトくんってば」

「――はっ! お――俺は今、何を――」

「すっごいうつろな顔してたよ。大丈夫?」


 思い出さなくていいことを思い出させやがって……。
 あのあと、母ちゃんはPSPを買い直してくれた。それなのに俺は、初期型のほうが画面がれいだとか言って、文句ばっかり。

 母ちゃん、あの時はごめん。
 必ず良いよめさんを連れて帰るから、もう少しだけ待っていてください。


「とにかく、だ。スーファミの命がしければ、吐け」

「……そこのかべを見るがよい」


 国王は液晶テレビの後ろ側にある壁を指差した。
 がくぶちに入ってかざられているのは、城を中心に広がる城下町の地図だ。
 町は本当に真円と呼べるぐらい綺麗な円形で、大通りの作りも何もかもが、絵にいたかのようにスッキリ整備されている。まるで何かの模様だ。


「…………って、おい。まさか――」

「そうじゃ。魔方陣はこの城と城下町、全て――。それがこの国の秘密じゃよ」

「いや、でも、だってそれじゃおかしいだろ!? マノンはずっとこの城下町に暮らしていたはずだ!」

「城が中央にあることも、無意味ではないのじゃ。真円の中心に近づけば近づくほど、魔方陣への影響力は強まる。丁度この真上にある玉座の間が中心の一つじゃ。客室もそう遠くはない」

「でも被害は、もっと前から起こっていて――っ」

「思うに……ハヤトにも原因があるのではないかのう?」

「俺……?」


 そんなことを言われたって、俺はいくつかのユニークスキルを与えられたぐらいで、魔法の才にはすぐれていない。
 使える魔法と言えば、勉強とスキルで覚えた、生活に必要な基礎魔法ぐらいのものだ。
 そこら辺の一般人だって使える程度――。


「被害が起こり始めた時期とハヤトがこの城へ凱旋した日は、重なっておらぬか?」


 俺の凱旋が一週間ほど前で、ぶよが現れた時期も…………。確か街の外周で、一週間ほど前と聞いたような気がする。
 確かに、重なってはいる……な。


「ハヤトは早く日本へ帰りたがっていた。そこをワシが召喚術で必死に食い止めていたわけじゃが」

「……おい。そんじゃジジイさえいなけりゃ、俺は帰れてたのかよ」

「そうじゃ。ハヤトが魔方陣から離れれば離れるほど効力は弱まるからの。大変じゃったわい」


 くっそ……。
 でも爺さん殺しちゃったら俺も死んじゃうしな。あの契約はそういう意味もあったのかよ。
 変なところだけ頭回りやがって。
 まあ第一、俺に人殺しなんてできるわけないんだけれど。


「しかし大陸統一を果たした今は、ハヤト自身が『帰りたくない』と願っておる。『ヒロイン報酬を受け取るまでは帰れない』――と」

「まあ、否定はしない」

「そこで召喚の維持に必要な魔力が、不要になったのじゃよ。簡単に言えば、ハヤトの召喚に必要な力を他の召喚術へ回せるようになった――。そういうことじゃ」


 それで召喚されてるのが『ぶよ』かよ……。


「――OK。わかった。じゃあ今のこれは、止めることができるんだな?」

「どれだけマノンちゃんの魔力がながんでいようと、術の使用者はあくまでワシじゃ。問題ない」


 ――――――そうして、国王は召喚術を解除。
 城からも城下町外周からもぶよは消え、俺たちには一時いっときの平和がおとずれた。
 ……本当に、一時・・の平和が。
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