異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ~命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします~

本山葵

文字の大きさ
40 / 93
異世界帰りへ⑤ 国王は新たな○○を画策する

マノン⑩ 天才と賢者

しおりを挟む
 ぶよぶよそうどうからしばらく月日を経た朝。
 マノンがねむそうな目で、こんなことを言い出した。


「そういえば、リルさんとデートしたらしいですね」

「仕事だよ」


 相変わらず、この子はおれの部屋に出入りしている。毎晩やってきて朝を過ごして、夕食ぐらいになると部屋にもどる。
 意外とさみしがりなのだろうか?


りんするだんさんの言い訳みたいです」

よめこいびともいないのに、不倫なんてできるかよ……」


 十四さいの口から聞きたくないワードだな。俺が夢を持ちすぎなのだろうか。
 いや、男なんてたいていそんなもんだろう。どうしても男ってのは、女の子にはじゆんすいでいてもらいたいと望んでしまいがちだ。


「じゃあ、私ともデートしてみます?」

「おまっ…………! 外に出る気になったのか!?」

だれがデートイコール外出だと決めたのですか? おうちデートに決まっているじゃないですか」


 なんだろう。マノンと接していると、俺が引きこもっていたころ、いかに親にめいわくと心配をかけていたかがわかるような気がしてきた……。母ちゃんごめんよ。
 でも引きこもっている子を外に連れ出すなんて、最悪のせんたくなわけで。
 こうして人との関わり合いを――――。
 たとえ日本での引きこもり生活にられてだろうが、持とうとしている。そこを評価すべきなのかもしれないな。



 さて、おうちデートと言われて俺が思いついたのは、いつしよに映画を見たりゲームをしたりという、その程度だ。
 しかしこの世界に映画はないし、テレビの類いもない。
 じいさんからえきしようテレビとスーファミを借りるにしても、電源コードが部屋まで届かないだろうし。
 そもそもテレビゲームの件をマノンに知られると、あまり好ましくないことが起きそうなんだよな。しようかん術使えちゃいました! みたいな。……うん。これ、絶対知られちゃダメなやつだ。


「カードゲームも、ずーっとやっているときますねえ……」


 ということで日本で言うトランプに近いカードゲームに興じているわけだけれど、マノンは人と一緒に何かをすることに楽しみを見いだすことが難しいタイプのようで、つまらなさそうにほとんど全勝する。

 この天才め。
 俺としても負けっぱなしだと気がってくるわけだ。
 他に何かすることは――なんて考えていたところで、とうとつに部屋のドアが、コンコンと鳴った。


「誰だー?」

「パティです。入ってもよろしいでしょうか?」

「おーぅ」


 マノンのやる気のなさがでんせんしてしまった。なんだか眠い。俺も少し引きこもろうかな……。


「朝からすみません。どうしても、日本語の解読が追いつかなくて」

「どれどれ……。ちょっと見せてみろ」


 ドサッと書類を受け取る。中々の重さだ。
 パティはがらなほうだから、これを持ち歩くだけでも労を要しただろう。

 そしてこの世界にはばんを使った古典的な活版かっぱん印刷機しかない。だからこういった資料の文字は、全て手書きである。
 賢者ならほうを使って文字をかびがらせたりもできるわけだけれど、そっちのほうがほど大変だそうだ。


「軽く見て、五百枚ぐらいはありそうなんだが」

「角のところを折ってあるのががいとうページです」

「……お前さ、少し働き過ぎじゃないか?」

「いえ。これが仕事ですから」


 こいつが一番、日本社会に向いている気がする……。
 なにせ朝から夜まで働きづめで、必要とあれば仕事を持ち帰っててつ。ブラックな業界でも働いて行けるかもしれない。
 働きづめでたおれなきゃいいけれど。
 過労死なんてことになったら、全く笑えない展開になってしまう。


「俺がやっといてやるから、そこのベッドでちょっとてろ」

「えっ、いや、でも……」

「いいから寝てろ。終わったら起こすから」


 強めに言うと、パティはフラフラとベッドへ歩き向かって、前のめりにバタンと倒れた。
 ……これは過労死するタイプだな。倒れて数秒でいきを立てている。トイレとかでちするやつだ。


「何してるのです?」


 小柄なパティから受け取った書類を、さらに小柄なマノンがのぞきむ。


「犯罪者リストと、犯行のがいようだ。これを日本の法律に当てはめて、この国流にかいしやくしながら適用していくんだと」


 国王は日本のかんきようを本気で気に入っているようだ。
 しかし社員を過労死させるところまでるのはすすめられないな。今度ちゃんと言っておこう。
 パティとは一緒に旅をして、一緒に命をけた仲だ。この世界に置いて行くにしたって、環境は整えておいてやりたい。


「これはなんです?」

「犯行写真だな。これはせつとう――。ただ、あんまりせんめいじゃないんだよ。しようとしてはかなりみようなレベルだ」


 サイズはスマホ画面の半分ぐらい。ガラケーの画面程度。
 解像度は低くせんめいで、その上、モノクロ。


「誰かが現場でったのですか?」

「いや。これは光系魔法とにん系魔法、あとはえんかく操作と念写の組み合わせで作った、パティのオリジナル魔法で撮ってるらしい。目と同じ役割を果たす光の球を飛ばして、映像をかくにんしながら、いつしゆんを切り取って紙に念写している――――って話なんだけど。正直、高度すぎてよくわからん」


 パティは賢者で、魔法をもうしている。
 更に基礎魔法を組み合わせたりして応用化することで、魔法の形を進化させる。

 これは体系的に説明ができる進化であり、王族の持つなぞの領域とはちがって、学ぶことさえできれば誰でもあつかえるようになるわけだ。
 賢者は魔法学のかいたくしやでもあって、かれらのかつやくはいずれ国民生活に反映されて国を豊かにする。
 これこそが賢者と呼ばれる所以ゆえんである。

 まあ時々、人々にわたると混乱を招くようなものも発明してしまうから、そういう場合は使いかたも覚えかたも国で厳重に管理することになるけれど。


「ふぅむ……。光系だと、こんな感じですかね」


 マノンはほんの一秒ぐらい考えた後、急に、ボワンっと大きな光の球を生み出して宙にかせた。


「すっげ――。ほんと魔法なら何でもありだな」

「これを視認系魔法で目の代わりにして遠隔操作を可能に――、あとは見たものを念写すればいいのですよね?」

「ああ。……でも目立ちすぎだ。パティのはもっと小さくて、目立たないようにできている」

「なるほど。調整は難しいのですが……なんとか。あっ、映像はリアルタイムで確認できたほうがいいですか? 私だけで見ても、おもしろくないですし」

「そりゃ、できることなら……」


 ああ、これパティ以上のことをやっちゃうパターンだわ。
 けんめいに勉強して働く賢者が必死になって編み出したことを、勉強する気なんてかけもないガチの引きこもりが一瞬でく――。
 パティのやつ、メンタルへし折られなきゃいいけれど……。


「うぉっ!?」


 かべ一面にこの部屋の映像が投写された。それも鮮明でカラー。ちようおおがたテレビ…………いや、プロジェクターの状態だ。


「一気に、部屋が映画館みたいになったな」

「これ、面白いかもです! 部屋にいながら外の世界のことを知ることができますよ!」

「部屋を出てくれ」


 しかし、マノンも外に興味がないわけじゃなかったんだな。ちょっと安心した。
 外の世界なんて見てもつまらない――なんて言われるより、数倍マシな反応だ。
 おうちデートだし、映画の代わりにこれで外の世界を見てみるのも、悪くないかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

処理中です...