異世界帰りは寝取られ令嬢と共に。 ～命がけで頑張ったので、ただ可愛すぎるだけの人はお断りします～

異世界帰りへ⑤ 国王は新たな○○を画策する

パティ② あの頃、みんなが言っていた

　数々の史上最年少記録を樹立した、国を代表する女賢者が、正座を崩くずして足にしがみついてくる。


「もうハヤトさんの・のぞきはしまぜんがらぁぁぁ。私の唯ゆい一いつの趣しゆ味みを奪わないでくだざいぃぃぃぃ」


　涙をボッロボロ流して鼻水まで垂らして、もはや賢者の威い厳げんなんて一ミリも感じられない。


「俺以外にならやるって言ってるようなもんじゃねえか！！　だいたい、なんで一いつ生しよう懸けん命めい勉強して変態行為働いてるんだよ！！」

「他には悪いごとしてまぜんからぁぁぁぁっ……」

「悪いことってのは一つやってりゃ罪なの！　お前がこの国で法を司つかさどってるとか、怖すぎるぞ！！」


　この国、もういっそ滅ほろんだほうがいいんじゃないか？
　国王が国中の美女にネトラレを仕し込こんで、王族令れい嬢じようまできっちりネトラレ属性に仕上がってるわ。
　十四歳の引きこもりが国を破は壊かいできる力を持っているわ、賢者は盗撮魔だわ……。

　俺はなんのために十字大陸統一なんて、頑がん張ばっちゃったのだろうか。空くう虚きよだよ、空虚。
　命張って頑張った結果がこれとか、ガッカリにも程がある。


「ぐすんっ、えぐっ――ぅ、ぐずぅ――」


　本気で泣きじゃくる賢者を、マノンが汚お物ぶつ扱いする。


「一生懸命勉強した知ち恵えを変態行為に活用するとか、引きこもりより遙かに質たちが悪いですよ」


　まあ、なあ。引きこもりは犯罪ではないわけで。


「言っていることはわかるけど、そこまで言ってやるなって。パティはあれだ。その……………………きっと、勉強しすぎて頭がおかしくなってんだ」

「その理り屈くつで犯罪が赦ゆるされるなら、賢者なんて必要ありませんよ」

「仰るとおりで……」


　これってあれだよな。日本的に言えば、最高裁判所の裁判官が盗とう撮さつしていた……みたいな話だよな。
　大スキャンダルじゃねえか。国が揺ゆらぐわ。


「賢者が悪いことをしたら、どうなるのです？」

「さあ――。王族や貴族は大抵のことを揉もみ消けせるだろうし、実際に問題も沢たく山さん起こしているみたいだけれど……。賢者はみんな勤勉っつうか、あんまり犯罪とかやらなさそうな印象だからな。過去にそういう事例があったのかどうか」

「無いことを祈いのりたいですねぇ」

「こいつら、殺人事件も裁いてるからな……」


　ああ。なんでマノンとの『ぬくぬくおうちデート』が、こんなヘヴィな話に……。
　この国は中世風の絶対王権。
　下手に王族へ逆らえばギロチン首。
　そうじゃなくたって、大罪を働けば首を落とされる。

　しかし現国王は法を重視し、賢者による裁判の仕組みを作り上げた。これによって王族に逆らっても、とりあえずギロチン首になる前には、裁判が行われることとなっている。
　正直、こんな世界で公平な裁判をやっているとは、到とう底てい思えないけれど。

　ただまあ、なににせよ司法という存在があって、そこには裁く者と裁かれる者が存在するわけである。
　裁く者が清廉潔白せいれんけっぱくでなければ、裁かれる者は納なつ得とくできるはずもないわけで。
　日本ではこういう時、弾だん劾がい裁判で裁判官の罷ひ免めんを問うわけだ。


「…………とりあえず、国王にチクってくるか」

「ですね」

「ぞれだけはご勘かん弁べんをぉぉぉぉ…………」


　なんかもう『せーんせいに、言ってやろ～っ』のノリである。小学生レベルか、この国は。