魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します

悠月

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第一章 婚約破棄されたので魔王のもとに向かいます

11 ステータス画面が見えるようになりました

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「お嬢様、どうなさったのですか? お嬢様!?」

 私が鏡を叩いた音に驚いたのか、一人の侍女が部屋の中に飛び込んで来る。
 小さな頃から私に仕えてくれているアンナだ。

「アンナ……」
「お嬢様、意識が戻られたのですね。奥方様を呼んでまいります」
「ありが……」

 アンナに視線を移した私は、驚きのあまり思わず、言いかけた礼の言葉を引っ込めた。
 アンナの前に、半透明のウインドウが浮かんでいて、文字や数字が書かれている。
 アンナの上半身に被さるように、不自然に宙に浮かぶウインドウには、次のような文字列が書かれていた。

 ――――――――――――――――――
 名前:アンナ・カロー
 種族:人間
 職業:侍女

 HP:30
 MP:1

 STR(力):8
 VIT(体力):11
 DEX(器用さ):13
 AGI(敏捷性):10
 INT(知性):12
 ――――――――――――――――――

(アンナは普通の人間で、魔力は使えないからMPは1しかない。侍女として料理や裁縫、掃除が得意だから器用さは比較的高め。公爵家に長く仕えている侍女だから、それ相応の知性を備えている。力は女性だからあまりない……って、冷静に分析してしまったけど、何コレ……!)

「ちょ、ちょっ……ちょ、これって……ステータス画面……!?」
「……お嬢様、大丈夫ですか?」

 アンナが心配そうに私の顔を覗き込む。
 アンナの頭の上には、「称号:サヴァティエ家侍女長」という半透明の文字も見える。

「だ、大丈夫のような、大丈夫じゃないような……」

 私が前世の記憶を思い出したのが、きっかけなのだろうか。
 前世でゲームをプレイしていた時に見えていたのと、そっくりなステータス画面まで見えるようになってしまった。
 そう、まさにステータス画面だ。そうとしか、思えない。

「ねえ、アンナ、驚くと思うけど聞いて。この世界は、ゲームなのよ。『聖なる乙女と光の騎士たち』というゲームの中の世界なの。それでもって、私は、悪役令嬢なの。主人公のヴァレリーをいじめたことと魔女である罪を問われて、婚約を破棄されてしまう悪役令嬢で……、さらに、我がサヴァティエ公爵家は、今後、爵位を剥奪はくだつされて、没落してしまうのだわ!」
「お嬢様、大丈夫ですか? どうか落ち着いてくださいませ、お嬢様」
「婚約破棄――これは、シナリオ上、避けられないイベントだったのだけど……。これから、どうしたら……。ああ、もう一度、セーブした地点まで戻ってやりなおして、なんとかイベントの回避を……いや、だからこのイベントを回避できるルートなんて存在しないんだってば!」

 前世であった当時の、オタクな日本人女性の口調で、次々とまくしたてる私を目の前にしたアンナは、一瞬驚きの表情を見せた。そして、それは次第に哀れみの表情へと変わる。
 同時に、私の脳内に、「ピロロロン~」という情けない電子音が響いたかと思うと、アンナの顔の近くから黄色い星の図形がひとつ落ちた。
 私は目を細めるようにして、アンナの表情からステータス画面の方へともう一度ピントを合わせる。
 ステータス画面の中には、「好感度」という数値も示されている。それが今、「MAX」からひとつ下がったことを理解した。
 気が狂ったとでも思ったのか、あるいは公爵令嬢にふさわしくない口ぶりが原因か、その理由まではわからないが、今、アンナから私に対する好感度がひとつ落ちたのだ。

「お嬢様、お医者様をお呼びしましょう」

 さすが、ベテランの侍女だ。
 好感度が下がったことなど微塵も感じさせず、落ち着いた表情でそう告げるとアンナは部屋から出て行った。
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