赤髪の免罪

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

文字の大きさ
2 / 38

《奇妙な噂》

 東ヨーロッパのある国には確立された集落があった。……その名も聖域サンクチュアリ。集落というよりかは支援団体が集結してできた小国である。
 その国はある神話を模倣して作られたルールがあり、そのなかには突飛すぎるものがある。――愛こそが正義。これが一番なのだ。
 金も大事なので献金も募るが、第一に自分の”性欲”を大事にするというおかしな掟なのだ。
 異性だろうが同性だろうが、精通していて近親者でなければ誰とでも結婚してもいいという、普通の信仰であったら頭が痛くなりそうな宗教。
 ……その信仰者の一人の大男は、夜の営みから家を出て礼拝堂へ向かった。彼は異国の地が混ざっているのか褐色肌ではあるが、筋肉質な身体で情事以外は身体を隠すように白と黒の修道服を着ている。
 そしてあどけない顔立ちは人の良さそうな顔をしていて、いかにも困っていそうな人が居たら助けてしまいそうな……不幸を自分が喜んで買ってしまいそうないで立ちだ。――だから彼には蝶も寄ってくるがハエも寄ってきてしまう。
 男は豪奢な礼拝堂に入室し、ある老人の前で跪いた。
「ゼウス様。ミサの時間に遅れてしまい申し訳ありませんでした」
 ”ゼウス”と呼ばれた老人は、椅子に座って足を組んだかと思えば息を吐いた。老人の割には肌がよく、程よい筋肉を保って黒いベースの修道服を着こんでいる。
「お前な……、また嫌な虫たちと戯れていたのだろう? あいつらはお前を”性玩具”としか思われていないと忠告したはずだが」
 ゼウスの発言に男は視線を罰が悪そうな顔をした。
「すみません……。ですが、ゼウス様! 愛は正義だと――」
「人間と見ない人間は論外だ。あぁかわいそうに……。首筋に嫌なあとがついている。あのような虫けらの分際が……」
 すると男は首筋に付いた青い痣を隠すように修道服を着なおした。確かにゼウスの言う通り、今、性行為をしている相手は最初一人であったが、次第に増えていき、今では三人がかりで相手することがあった。もっと多い時もあった。
 相手をするのは苦しかったが、相手が自分で満たされたような顔をされると嬉しくなって行為に励んでしまうのだ。
 そんな彼にゼウスは祈りを込める。
「あぁ神よ。わたくしもなんとかさせていただきますが、どうか”シギュン”に群がるハエどもに鉄槌を与えてください」
「……ゼウス様」
 ゼウスは神仏の象徴する像に祈るように手を組んで合わせた。シギュンはなんとも言えない複雑な気持ちになってしまうが、彼の心情と打って変わってゼウスはある噂を口にした。
「そういえばだが、この聖域サンクチュアリによそ者が現れたそうだ。そいつは罪人で、なんと死人を出させたのだ」
 滔々と話していくゼウスにシギュンは身震いをしてしまう。まさかこの地区に死人を出させるなんて思いもしなかった。
 性犯罪に走る人間はしょっちゅうあるのだが、この地区では警察と連携をして対策を練って罪を課している。しかし、死人が出るというのは驚きであった。
「その、その人は今もここに……?」
「おそらく今も居るはずだ。だが滑稽なことに、殺された死人は警察へ逮捕間際になっていたし……それに、お前に害を成したハエの一人だ。これを良いと言ってか、悪いと言ってかと言われると、私はこの聖域サンクチュアリのゼウスで良かったなと思ってしまう。……しかも焼身だぞ? 罪人にはふさわしいではないか」
 ゼウスがどこか満足げな顔をして雄弁に語るが、被害者であったシギュンは思い詰めたような顔をして彼の言葉を反芻する。
(焼身……焼き殺したのか。でもいったいどうして?)
 疑問が募るが、シギュンは疑問を傍らに悪戯に笑うゼウスへこのような申し出をした。
「ゼウス様。ミサにも遅れてしまいましたし、助言も受けさせていただきました。……なのでお詫びと言ってはなんですが、買い物に行かせてもらえせんか?」
「今日はお前の担当ではないぞ?」
「いえ、それでもさせてください。……今日から、家にいるあの者たちを穏便な形で出て行かせます。ゼウス様のお力を煩わせてしまうのは忍びありません」
 そう言ってゼウスに一礼をしたかと思えば、シギュンは「行って参ります」と言って踵を返すのだ。
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。