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《太陽が許さない》
疑いを通り越して唖然とし「マジかよ……」と、翡翠色の瞳を瞬いて確認をすると、目の前に居る色黒の屈託のない顔で澄んだ青空の瞳は爛々とさせて頷いた。
冷静さが取柄のヨルでさえも、この事実には驚いてしまった。
「う……そ、だろ?」
「嘘じゃないです。……こういう形になってしまったのが早いですが、私たちは結婚をするのですね。まるでアニメのヒロインのような気持ちです!」
いや、展開が早すぎるだろというのも言いたいが、その前には結婚などもってのほかだ。お互いなにも知らぬ状態で結婚だなんて聞いたこともないし、自分は一生の独り身だと決めているし、……それに、自分はこの美しい男を幸せなどできない。
同性だからというのもあるが、その前に人殺しの罪人との結婚だなんて、神々が許すはずなどない。
だからヨルはなぜだが嬉々としているシギュンへちゃんと断りを入れたのだ。
「俺のせいなのは分かっているけれど、お前は俺と離婚すべきだ。いや、籍を入れていないからまだ間に合う。……さっきのキスはなしだ。即刻、別れよう」
”別れる”発言にシギュンは大きな瞳を二回、三回とゆっくりと瞑っては、疑問形で尋ねてきた。
「ヨルは同性と結婚をするのは嫌ですか? 私じゃダメですか?」
「いや、ダメとかじゃなくてな。俺はお前を幸せにできないし、キスしたのはお前が俺の毒に充てられたからであって、なんというか……」
しどろもどろになってしまうが、はっきりと告げようと試みた。罪悪感が勝るが、どうしてだが寛大すぎて心が広すぎる、楽観的なシスターに告げなければならないこと。
結婚を軽んずのは、親父や自分たちを罵った神々だけで十分だとヨルは、シギュンに嫌われるのを覚悟で言い放った。
「俺なんかと一緒に居たら一生、お前は不幸だ。それは、お前には絶対に良くない」
「……ヨル」
”不幸”という言葉と悲痛な顔をして冷酷に言い放つヨルに、シギュンは突き放された感覚に陥る。だが無情にもヨルは言葉を続けた。
「俺と居たらお前は死ぬまで不幸なんだ。せっかく神々の使い、シスターになれたのだから、俺なんか忘れてほかの奴と幸せになれよ。その方がお前に――」
熱弁をしていたせいでシギュンの顔を見ていなかったが、ふと顔を見ればシギュンは涙を一つ零していた。しかも啜るような、しゃくりあげるような声を上げるものだからヨルは慌ててしまう。
なにがどうしてこの褐色肌の大男が涙を流すのかがわからなかった。
「なんで泣くんだよ? 俺とお前はまだ会ったばかりだ。しかも怖い目にも遭っただろう? それを見ただろう?」
「うぅ……で、も、いやです……」
「なにが嫌なんだよ? 俺のキスはへたくそだっただろう? 不幸そうな顔をしているだろう? ……お前はどうして、俺のことを気にかけるんだよ?」
(意味がわからない。どうして……?)
しかしシギュンは深呼吸をしてから右手で涙を拭き、「だって……」と言って言葉を紡ぎだすのだ。
「一目ぼれもしてしまった相手とずっと一緒に居られるのなら、私は幸せです。私はあなたに瞳も、唇も、身体も心も奪われました。……私はそんな相手と結婚をしたいのです。こんな気持ちは、初めてです。でも、あなたは自分のせいで不幸になるからと、勝手に決めつけて離れようとするのが……私はひどく悲しいのです。だって」
――切ないではありませんか。
シギュンの深い青空の瞳はヨルを見据えて離さない。だからヨルも逸らせない。そんな彼にシギュンは言葉を紡ぐのだ。
「あなたが幸せにできないのなら、私が幸せにさせます。籍は入れてはいませんが、私たちはもう夫婦。これからは助け合う関係です」
「……夫婦って。一気に話が飛んだな」
「もう夫婦です! これはお天道様が、太陽が許すはずがない決定事項です!」
(太陽って……。また、親父が罪に課された最大の理由を堂々と……)
まぁ普通は知らないか、なんて思っているとシギュンは照らし出す太陽を見てからヨルを見て、両手で彼の手を囲むようにして合わせたのだ。
「あなたが不幸にさせるのならば、私があなたを幸せにさせましょう。……美青年の童貞卒業など、至極の極みですね」
「……ぶっ飛ばすぞ、お前」
ド下ネタをぶち込まれた童貞の美青年は息を吐いては、軽く頷いて「好きにしろ」と告げた。するとシギュンは花が咲いたように微笑んで、ヨルの手を引いて強く繋ぐのだ。
「じゃあまずは結婚報告です! ゼウス様に報告に参りましょう!」
「おい、引っ張るなって……」
「シギュンです! さぁ、参りましょう!」
「まったく……お前は」
先ほどとは打って変わって幸せそうに笑う大男に、ヨルは自分が必要とされている気がして嬉しくなってしまうが恥ずかしくて言えなかった。
冷静さが取柄のヨルでさえも、この事実には驚いてしまった。
「う……そ、だろ?」
「嘘じゃないです。……こういう形になってしまったのが早いですが、私たちは結婚をするのですね。まるでアニメのヒロインのような気持ちです!」
いや、展開が早すぎるだろというのも言いたいが、その前には結婚などもってのほかだ。お互いなにも知らぬ状態で結婚だなんて聞いたこともないし、自分は一生の独り身だと決めているし、……それに、自分はこの美しい男を幸せなどできない。
同性だからというのもあるが、その前に人殺しの罪人との結婚だなんて、神々が許すはずなどない。
だからヨルはなぜだが嬉々としているシギュンへちゃんと断りを入れたのだ。
「俺のせいなのは分かっているけれど、お前は俺と離婚すべきだ。いや、籍を入れていないからまだ間に合う。……さっきのキスはなしだ。即刻、別れよう」
”別れる”発言にシギュンは大きな瞳を二回、三回とゆっくりと瞑っては、疑問形で尋ねてきた。
「ヨルは同性と結婚をするのは嫌ですか? 私じゃダメですか?」
「いや、ダメとかじゃなくてな。俺はお前を幸せにできないし、キスしたのはお前が俺の毒に充てられたからであって、なんというか……」
しどろもどろになってしまうが、はっきりと告げようと試みた。罪悪感が勝るが、どうしてだが寛大すぎて心が広すぎる、楽観的なシスターに告げなければならないこと。
結婚を軽んずのは、親父や自分たちを罵った神々だけで十分だとヨルは、シギュンに嫌われるのを覚悟で言い放った。
「俺なんかと一緒に居たら一生、お前は不幸だ。それは、お前には絶対に良くない」
「……ヨル」
”不幸”という言葉と悲痛な顔をして冷酷に言い放つヨルに、シギュンは突き放された感覚に陥る。だが無情にもヨルは言葉を続けた。
「俺と居たらお前は死ぬまで不幸なんだ。せっかく神々の使い、シスターになれたのだから、俺なんか忘れてほかの奴と幸せになれよ。その方がお前に――」
熱弁をしていたせいでシギュンの顔を見ていなかったが、ふと顔を見ればシギュンは涙を一つ零していた。しかも啜るような、しゃくりあげるような声を上げるものだからヨルは慌ててしまう。
なにがどうしてこの褐色肌の大男が涙を流すのかがわからなかった。
「なんで泣くんだよ? 俺とお前はまだ会ったばかりだ。しかも怖い目にも遭っただろう? それを見ただろう?」
「うぅ……で、も、いやです……」
「なにが嫌なんだよ? 俺のキスはへたくそだっただろう? 不幸そうな顔をしているだろう? ……お前はどうして、俺のことを気にかけるんだよ?」
(意味がわからない。どうして……?)
しかしシギュンは深呼吸をしてから右手で涙を拭き、「だって……」と言って言葉を紡ぎだすのだ。
「一目ぼれもしてしまった相手とずっと一緒に居られるのなら、私は幸せです。私はあなたに瞳も、唇も、身体も心も奪われました。……私はそんな相手と結婚をしたいのです。こんな気持ちは、初めてです。でも、あなたは自分のせいで不幸になるからと、勝手に決めつけて離れようとするのが……私はひどく悲しいのです。だって」
――切ないではありませんか。
シギュンの深い青空の瞳はヨルを見据えて離さない。だからヨルも逸らせない。そんな彼にシギュンは言葉を紡ぐのだ。
「あなたが幸せにできないのなら、私が幸せにさせます。籍は入れてはいませんが、私たちはもう夫婦。これからは助け合う関係です」
「……夫婦って。一気に話が飛んだな」
「もう夫婦です! これはお天道様が、太陽が許すはずがない決定事項です!」
(太陽って……。また、親父が罪に課された最大の理由を堂々と……)
まぁ普通は知らないか、なんて思っているとシギュンは照らし出す太陽を見てからヨルを見て、両手で彼の手を囲むようにして合わせたのだ。
「あなたが不幸にさせるのならば、私があなたを幸せにさせましょう。……美青年の童貞卒業など、至極の極みですね」
「……ぶっ飛ばすぞ、お前」
ド下ネタをぶち込まれた童貞の美青年は息を吐いては、軽く頷いて「好きにしろ」と告げた。するとシギュンは花が咲いたように微笑んで、ヨルの手を引いて強く繋ぐのだ。
「じゃあまずは結婚報告です! ゼウス様に報告に参りましょう!」
「おい、引っ張るなって……」
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