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《痴話喧嘩》
トール神は去ったが、現場に居合わせたヨルと狼の姿から人間の姿に戻った聖は警察から事情聴取を受けていた。そのおかげで日はとっくに暮れてしまい、夜の九時を回ってしまった。
へとへとになりつつも、履歴を見れば不在着信が多数見受けられた。急いでシギュンに連絡アプリで「今から帰るから」そうメッセージを入れれば、着信音代わりのバイブが震える。――うさぎのアイコンにしているシギュンからであった。
「もしもし、シギュン? もう帰るって返信した傍から――」
『バカ!! ヨルの大馬鹿者です!!!』
「……はい?」
聖が運転をする車内にて罵声を浴びせられたヨルに聖は疑問符を抱いた。どうやら聖は日常会話はできるが、罵声言葉はわからないらしい。しかし、スピーカーでもないのに大声が聞こえたので、聖は肩を揺らして怒っているのかと尋ねていた。
ヨルは無我夢中で罵声を浴びさせられているので、運転中の聖へ「大丈夫だから運転を続けてくれ」なんて冷静な言葉を放つ。
でも日本語であったというのにも関わらず、シギュンは内容を把握したようで「なにが運転してくれですか! ヨルのうつけ者! 心配野郎! 早漏野郎!」
「……おい、最後はいらないだろ。というか、気にしていんのに……」
早漏発言には肩を落としているヨルに構わず、シギュンは離れてからの経緯を矢継ぎ早に話し出す。
「燐さんと黒服さんに保護されてからもヨルのことが心配でしたし、燐さんに送ってもらって一人で居ても寂しいですし! ……しかも、ヨルが無事なのかさえわからないから……。電話を何度も掛けても不在着信でしたし!」
「あ……ごめん。今、電話の履歴を見た」
「ヨルのバカ!!! すっごく心配したんですからね!!」
馬鹿発言はするが、次第に涙ぐんだ声で訴えかけるシギュンにヨルは心配を掛けさせえてしまったなと反省の色を見せる。ごめんな、なんて謝罪をすればシギュンは本当に泣いてしまったようで、声が震えていた。――アパートに着くまであと数分。
「ヨルは、一人で背負い込みすぎ…、なんですよ! ひぃっく……、いっく! 私はあなたの妻なんですから、妻らしいことを……っ、させて、っぅ……ください……よっ!!」
「シギュン……。本当にごめん。もう家に着くから。だから、泣くな。なっ?」
「……キョウ、”ヨルノ営み”で、ツグナッテもらうカラ」
「えっ?」
そして電話が切れてしまった。
(拙かったけれど、”夜の営み”って聞こえたような……? 気のせいか?)
「ヨル兄さんも隅に置けないね~。奥さんをついに怒らせるとは」
「怒らせたのもなにも、電話なんて滅多に掛からないから着信履歴なんてみないし。それに、シギュンだってさ。今は俺のことを気にかけてくれているけれど、今回の惨状を見たら……」
「見たら、なに?」
ふと頭に過った言葉があったが、車はアパートに着いてしまった。聖が不安げな顔を見せるヨルを見て訝しんだが、なんでもないと答えて「おやすみ。ありがとうな」礼を告げてドアを閉めた。
アパートの階段を上りながら、思わず自分が口にしようとしてやめた言葉を、ヨルはふさぎ込むようにして放つ。
「俺を見限る……とか、思ってもしかたないよな。こんな、不幸を背負っていて、人間を焼き殺す、災厄なんて。いらないに決まっている、よな」
……もしもシギュンが俺と付き合うのをやめるって言っても、俺はちゃんと許さないとな。離れないとな。
心中で強く思って、ヨルは自宅のドアに鍵を差し込み、回してから引き抜いてドアを開け放った。
「ただいま~」
ヨルが靴を脱いで狭い玄関に上がろうとすれば……大きく、そして温かい身体に抱き締められた。苦しいぐらい抱き着かれ、「くる……しい!」背中に腕を回して叩くがびくともしない、褐色肌の青年にヨルはさらに訴えかけようとすれば「バカ!!!」と大声で怒鳴られ、すすり泣く声が響き渡った。
「さみし、かったですっ、……怖かったです! ヨルが死んじゃったかと思った、っ……連絡も、ひっぃく……ないから! 私は、――辛かった。苦しかった!」
大声で怒鳴られてしまうがまずは謝罪が大事だ。だからヨルは反省の色を示す。
「……シギュン。本当にごめんな? 俺の配慮が足りなかったよ。だから泣くな。お前が泣くと、俺も辛いから。お前の気が済むなら、俺はなんでもするから」
「なんでも。……ナンデモ、デスネ?」
急に泣き止んだかと思えば、拙い日本語で含むような言い方をされたので、ヨルは首を傾げた。というか、日本語なんていつの間に覚えたのだろうかと、シギュンの顔を見上げようとした。
――その瞬間。大きく厚い唇が小さく薄い唇を奪った。
舌を絡ませ、ねっとりとした液に絡まれてヨルのひ弱な唇は荒く息をする。
「んぁ……んぅ……! ――シギュン、まったぁ……。うぅん……!」
だらだらとはしたない透明な銀糸と絡まる真っ赤でいやらしく貪る舌に、ヨルはさらに背中に手を回して……気が付いた。
先ほどは布の生地だったし、前面も生地だから気が付かなかった。だが、手探りで触れていくと、しっとりとして筋肉質な素肌であったのだ。筋骨隆々な広背筋まで直に触れられる。
さすがに驚いてシギュンはいったいどんな服装をしているのか思い、長いキスが終わって呼吸を乱しながら見てみればさらに驚く。
シギュンはウサギの可愛らしいエプロンをしていたのだ。――素っ裸で身に纏って。
「シ、シギュンっ!?? なんで、あの、えっ!??」
まさかの裸エプロンに激しく動揺したヨルではあったが、そんな彼など知らぬように、シギュンはヨルを軽く持ち上げて姫様抱っこした。……そして耳もとで囁く。
「……キョウは、いっぱい、エッチするから、です」
「だからその日本語はどこで習った!??」疑念をぶつけてもシギュンはヨルをソファベッドに組み敷いて、妖美に笑う。
――壁に飾られたウサギとクマの壁時計にヨルは気づけずにいるのは、目の前に居る大男の熱情を注がれたからだ。
へとへとになりつつも、履歴を見れば不在着信が多数見受けられた。急いでシギュンに連絡アプリで「今から帰るから」そうメッセージを入れれば、着信音代わりのバイブが震える。――うさぎのアイコンにしているシギュンからであった。
「もしもし、シギュン? もう帰るって返信した傍から――」
『バカ!! ヨルの大馬鹿者です!!!』
「……はい?」
聖が運転をする車内にて罵声を浴びせられたヨルに聖は疑問符を抱いた。どうやら聖は日常会話はできるが、罵声言葉はわからないらしい。しかし、スピーカーでもないのに大声が聞こえたので、聖は肩を揺らして怒っているのかと尋ねていた。
ヨルは無我夢中で罵声を浴びさせられているので、運転中の聖へ「大丈夫だから運転を続けてくれ」なんて冷静な言葉を放つ。
でも日本語であったというのにも関わらず、シギュンは内容を把握したようで「なにが運転してくれですか! ヨルのうつけ者! 心配野郎! 早漏野郎!」
「……おい、最後はいらないだろ。というか、気にしていんのに……」
早漏発言には肩を落としているヨルに構わず、シギュンは離れてからの経緯を矢継ぎ早に話し出す。
「燐さんと黒服さんに保護されてからもヨルのことが心配でしたし、燐さんに送ってもらって一人で居ても寂しいですし! ……しかも、ヨルが無事なのかさえわからないから……。電話を何度も掛けても不在着信でしたし!」
「あ……ごめん。今、電話の履歴を見た」
「ヨルのバカ!!! すっごく心配したんですからね!!」
馬鹿発言はするが、次第に涙ぐんだ声で訴えかけるシギュンにヨルは心配を掛けさせえてしまったなと反省の色を見せる。ごめんな、なんて謝罪をすればシギュンは本当に泣いてしまったようで、声が震えていた。――アパートに着くまであと数分。
「ヨルは、一人で背負い込みすぎ…、なんですよ! ひぃっく……、いっく! 私はあなたの妻なんですから、妻らしいことを……っ、させて、っぅ……ください……よっ!!」
「シギュン……。本当にごめん。もう家に着くから。だから、泣くな。なっ?」
「……キョウ、”ヨルノ営み”で、ツグナッテもらうカラ」
「えっ?」
そして電話が切れてしまった。
(拙かったけれど、”夜の営み”って聞こえたような……? 気のせいか?)
「ヨル兄さんも隅に置けないね~。奥さんをついに怒らせるとは」
「怒らせたのもなにも、電話なんて滅多に掛からないから着信履歴なんてみないし。それに、シギュンだってさ。今は俺のことを気にかけてくれているけれど、今回の惨状を見たら……」
「見たら、なに?」
ふと頭に過った言葉があったが、車はアパートに着いてしまった。聖が不安げな顔を見せるヨルを見て訝しんだが、なんでもないと答えて「おやすみ。ありがとうな」礼を告げてドアを閉めた。
アパートの階段を上りながら、思わず自分が口にしようとしてやめた言葉を、ヨルはふさぎ込むようにして放つ。
「俺を見限る……とか、思ってもしかたないよな。こんな、不幸を背負っていて、人間を焼き殺す、災厄なんて。いらないに決まっている、よな」
……もしもシギュンが俺と付き合うのをやめるって言っても、俺はちゃんと許さないとな。離れないとな。
心中で強く思って、ヨルは自宅のドアに鍵を差し込み、回してから引き抜いてドアを開け放った。
「ただいま~」
ヨルが靴を脱いで狭い玄関に上がろうとすれば……大きく、そして温かい身体に抱き締められた。苦しいぐらい抱き着かれ、「くる……しい!」背中に腕を回して叩くがびくともしない、褐色肌の青年にヨルはさらに訴えかけようとすれば「バカ!!!」と大声で怒鳴られ、すすり泣く声が響き渡った。
「さみし、かったですっ、……怖かったです! ヨルが死んじゃったかと思った、っ……連絡も、ひっぃく……ないから! 私は、――辛かった。苦しかった!」
大声で怒鳴られてしまうがまずは謝罪が大事だ。だからヨルは反省の色を示す。
「……シギュン。本当にごめんな? 俺の配慮が足りなかったよ。だから泣くな。お前が泣くと、俺も辛いから。お前の気が済むなら、俺はなんでもするから」
「なんでも。……ナンデモ、デスネ?」
急に泣き止んだかと思えば、拙い日本語で含むような言い方をされたので、ヨルは首を傾げた。というか、日本語なんていつの間に覚えたのだろうかと、シギュンの顔を見上げようとした。
――その瞬間。大きく厚い唇が小さく薄い唇を奪った。
舌を絡ませ、ねっとりとした液に絡まれてヨルのひ弱な唇は荒く息をする。
「んぁ……んぅ……! ――シギュン、まったぁ……。うぅん……!」
だらだらとはしたない透明な銀糸と絡まる真っ赤でいやらしく貪る舌に、ヨルはさらに背中に手を回して……気が付いた。
先ほどは布の生地だったし、前面も生地だから気が付かなかった。だが、手探りで触れていくと、しっとりとして筋肉質な素肌であったのだ。筋骨隆々な広背筋まで直に触れられる。
さすがに驚いてシギュンはいったいどんな服装をしているのか思い、長いキスが終わって呼吸を乱しながら見てみればさらに驚く。
シギュンはウサギの可愛らしいエプロンをしていたのだ。――素っ裸で身に纏って。
「シ、シギュンっ!?? なんで、あの、えっ!??」
まさかの裸エプロンに激しく動揺したヨルではあったが、そんな彼など知らぬように、シギュンはヨルを軽く持ち上げて姫様抱っこした。……そして耳もとで囁く。
「……キョウは、いっぱい、エッチするから、です」
「だからその日本語はどこで習った!??」疑念をぶつけてもシギュンはヨルをソファベッドに組み敷いて、妖美に笑う。
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