赤髪の免罪

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《恋人以上》

 授業を終えてから掃除をし終えた。そして遊びに誘ってくれるクラスメートに断りを入れて、小走りで廊下駆けてスマホを弄る。
 アプリのアイコンをタップし着信音を鳴らし、呼び音が数回鳴ったところで意中の相手が『はい』と答えた。――シギュンはその声を聞いただけで、疲れが吹っ飛んだ。
「ヨル、オツカレサマです。もう、ジュギョウがオワッタよ。これから、帰る、です」
『帰るです、じゃなくて帰りますな? でも、日本語も上手くなったもんだ』
 電話越しで感心しているヨルの顔を想起し、嬉しさが募る。ヨルしてはメッセージだけでも良いと言っているのだが、「日本語の勉強のために付き合ってください!」などとシギュンが懇願して、帰り際に電話を掛けるようになったのだ。……まぁ、シギュンがヨルの声さえも好きだからというのもあるが。
 そんなことなど知らないヨルは電話越しで話していく。
『俺は駅で待っているから、気を付けて来な。――あっ、あと。買い物にも付き合ってくれよ?』
「ワカッテいます。ヨルのゴハンも、ヨルもダイスキ、です!」
 するとヨルは間を空けて「……待っているから」と告げて電話を切った。
 シギュンは知っている。――ヨルは恥ずかしさのあまり言葉が出なかったのだというのを。可愛いヒトだな~なんて呟いていると、突然、肩を叩かれたので身体を震わせた。しかし後ろを見ると……レイフロがニヤつきながら、流暢な英語でシギュンを揺さぶるのだ。
「おいおい~。なにが大好きだって? この色男が。遊びに誘っても毎回断るのはそういう意味か。……可愛いだなんて言いやがって」
「べ、別に。良いじゃないですか、……本当に可愛いし」
「そういうのを”のろけ”って言うんだ。……どうせ、夜のプロレス大会なんて開催したら、お前はその彼女さんの可愛い顔みたさに求めるんだろう?」
 ……いや、私は女役でヨルの方が男役なんです。……ヨルの可愛らしい顔見たさに、腰を振りまくっていますが。
 とは言えないが、言葉を濁そうとしても顔を真っ赤にしてしまうシギュンを図星と見たようで、レイフロは小突いた。
「まぁでも、付き合ってどのくらいかは知らないけどさ~。彼女は良いよな~。――おっと、もう時間か。野暮用で悪かったな」
「いえいえ。じゃあまた月曜日に」
「おう! 彼女さんによろしくな~」
 レイフロが手を振ってシギュンも手を振り返し、別れた。
 普段通りの道を歩き、巨大な駅の改札にて人ごみを避けて一人で待つ奇妙な青年が居た。彼は深くフードを被って、ジーンズを履きこなした細身で色白な青年である。――だが、前髪付近が赤い糸のように細い髪をさらりとかき分けたかと思えば、呆然と辺りを見た。
(シギュンは、まだ来ないか。俺は人間と触れただけで発火させるものだから、なるべく人間には近づかないよう、気を付けないとな……)
 ……まぁ、これだけ不審者みたいな奴に近づこうとしている奴も珍しいけれど。
 とか思いつつ、暇なのでスマホでニュースでも見ようと取り出そうとした。……しかしその行為は不必要らしい。
「ヨル! オツカレ様!」
 声に反応して見上げれば、深く澄んだ青い瞳に褐色肌の青年が小走りで駆け寄ってきた。今日はダメージジーンズにグレーの肩だしトップスを着ている。
 相変わらず肌を見せつけるのを躊躇わないシギュンに、ヨルは呆れて忠告してしまう。
「お前な……、肌を見せつけすぎ。変な女が寄って来るぞ?」
「え~、嫌です~。母国では肌を情事以外見せるなって言われていたから、見せたいんです~」
「まったく、けしからん奴だ」
 シギュンの母国の言葉に対応しつつ、ヨルため息を吐く。シギュンはしぐさは女らしいが見た目はずば抜けて恰好がよい。特に小さい顔に厚い唇は色気を漂わせるものがある。しかも筋肉モリモリで長身。――こんな色男を放っておける人間など、果たしているのだろうか?
 そんなヨルの観察眼はさておき。なにもわかっていない色男は、ヨルの深く被ったフードを露見させる。……鮮やかな真紅の髪色とエメラルドに輝く宝石のような大きな瞳に、シギュンも息を吐いた。
「……なに?」
 どうしてかシギュンから熱の籠る視線を送られて首を傾げた猫のような美青年の姿に、色男は急に赤面してしまう。
(うわわ!!! やっぱり、ヨルは美しくて可愛いです! こんな殿方にご飯を作ってもらえて、筆記類を買ってもらって……しかも買い物というデート! 美味しすぎる展開ではありませんか?)
 ……今日の夜のダンスパーティはいかがなものでしょうか?
 シギュンは赤面をしながらよだれを垂らしそうになってしまう。恐らくはヨルが自身の名器に挿入しているのにも関わらず、真っ赤な顔をして可愛らしく喘いでしまうのだろうと妄想してしまった。
 さすがのヨルも突然、顔を覆い隠しニヤついているシギュンへ疑念を抱いて探りを入れたが「なんでもないです!」そう答えたシギュンの笑みに払拭されてしまった。
「そんじゃ、買い物に行くか~。今日は肉じゃがをメインにして、タラのムニエルも作るからな」
「はい!」
 二人で歩き出し、ヨルがシギュンの右手に触れてきた。……理由は分かっている。だからシギュンは強く握って離さない。
(まるで夫婦というより、恋人みたいです……)
 真っ赤な顔を背けて一緒に連れそうヨルを見て、シギュンの心も離さずにいたのだ。
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