32 / 38
《参上》
大量の人間が押し寄せ、ヨルは聖の背中に乗り込んで人々を避けながらフレイヤに近づこうとする。――しかし、その瞬間に人間たちが襲い掛かってわざとヨルに近づこうとした。
ヨルは軽く舌打ちを打ち、「後方に回れ!」聖へ叫んで艶やかな毛皮にしっかりと掴まって退避をする。その姿を見てフレイヤは退屈そうに眺めた。
「その人間たちは私のしもべよ。私に魅了された人間を私は操れるの。――だからこの人間は私のもの、私の道具。人間じゃなくってよ、炎を操る毒蛇さん?」
そうは言っても人間は人間だ。これ以上、無実な人間を殺したくないのがヨルなのだ。でもそれは巨狼である聖も同じ。……彼もまた、終焉の戦いで失ってしまった人間を殺したくはないのだ。
襲い掛かる人間たちを蹴り上げるか、室内にあるテーブルやら椅子で殴り飛ばし動けなくさせるぐらいしか攻撃ができないでいる二人へフレイヤは嘲笑った。
「災厄なら災厄らしく人間に危害を加えればどうなの? 後世の毒蛇と巨狼はみっともないわね。――人一人も殺すのも躊躇わないなんて」
言葉が出そうにも今は大勢来る人間たちの処理に手一杯で反論ができない。だから悪女は高らかに笑うのだ。
「あぁ無様ね! 人間の重しにされて窒息されるか、その前に殺して自分の業に後ろめたさを感じて自害するか……あはっは!!! 素敵な舞踏会になって、私は楽しいばかりだわ!」
もういっそのこと、罪のない人間たちを焼き殺してしまおうかと思った。自分の災厄の能力であれば、この舞踏会ほど焼き殺せるはずだ。――人間を掴み上げようと手を伸ばした。
――ヨル!
頭の片隅にちらついた男が居た。褐色肌で、大男で青い澄んだ瞳をした……変態だが明朗で温和なシスターだ。彼を思うたび、自分が苦しくなった。
人なんて小さな生き物を殺せば、自分を選んでくれた――信じてくれた彼はどんな顔をするだろうかと思うと、胸が痛くなった。
「……シギュン」
ヨルは業火の災いを引っ込めた――瞬間、爆発音が聞こえたのである。ドォォン!!! とかなりの地響きが鳴って振り向けば……着物を着た少女がでかいバズーカ砲を持ち上げていたのだ。
「助けに参りましたわ、お兄さま方! 早く、シギュンさんをお探しになって!!」
バズーカ砲はフレイヤの方に向けられていた。……燐が大勢の黒服を連れて現れたのである。
二人は呆然とした。そして片一方の責任者は「俺の……ホテルが」と悲嘆に暮れていたので、ヨルはうなだれている狼の首や頭を撫でて「なんかごめん……」なんて謝罪した。
ヨルは軽く舌打ちを打ち、「後方に回れ!」聖へ叫んで艶やかな毛皮にしっかりと掴まって退避をする。その姿を見てフレイヤは退屈そうに眺めた。
「その人間たちは私のしもべよ。私に魅了された人間を私は操れるの。――だからこの人間は私のもの、私の道具。人間じゃなくってよ、炎を操る毒蛇さん?」
そうは言っても人間は人間だ。これ以上、無実な人間を殺したくないのがヨルなのだ。でもそれは巨狼である聖も同じ。……彼もまた、終焉の戦いで失ってしまった人間を殺したくはないのだ。
襲い掛かる人間たちを蹴り上げるか、室内にあるテーブルやら椅子で殴り飛ばし動けなくさせるぐらいしか攻撃ができないでいる二人へフレイヤは嘲笑った。
「災厄なら災厄らしく人間に危害を加えればどうなの? 後世の毒蛇と巨狼はみっともないわね。――人一人も殺すのも躊躇わないなんて」
言葉が出そうにも今は大勢来る人間たちの処理に手一杯で反論ができない。だから悪女は高らかに笑うのだ。
「あぁ無様ね! 人間の重しにされて窒息されるか、その前に殺して自分の業に後ろめたさを感じて自害するか……あはっは!!! 素敵な舞踏会になって、私は楽しいばかりだわ!」
もういっそのこと、罪のない人間たちを焼き殺してしまおうかと思った。自分の災厄の能力であれば、この舞踏会ほど焼き殺せるはずだ。――人間を掴み上げようと手を伸ばした。
――ヨル!
頭の片隅にちらついた男が居た。褐色肌で、大男で青い澄んだ瞳をした……変態だが明朗で温和なシスターだ。彼を思うたび、自分が苦しくなった。
人なんて小さな生き物を殺せば、自分を選んでくれた――信じてくれた彼はどんな顔をするだろうかと思うと、胸が痛くなった。
「……シギュン」
ヨルは業火の災いを引っ込めた――瞬間、爆発音が聞こえたのである。ドォォン!!! とかなりの地響きが鳴って振り向けば……着物を着た少女がでかいバズーカ砲を持ち上げていたのだ。
「助けに参りましたわ、お兄さま方! 早く、シギュンさんをお探しになって!!」
バズーカ砲はフレイヤの方に向けられていた。……燐が大勢の黒服を連れて現れたのである。
二人は呆然とした。そして片一方の責任者は「俺の……ホテルが」と悲嘆に暮れていたので、ヨルはうなだれている狼の首や頭を撫でて「なんかごめん……」なんて謝罪した。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。