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《優しさ》
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地の龍に会いに行くため、まずは地獄の門へ行くことになったライとルゥではあったがその道中は険しいものである。
ずんずんとこちらへ向かってくる類人猿のような種族にライは舌打ちを打つ。ルゥは手のひらに風の息吹を込めた。
「またかよアイツ……。ここらへんは多いな」
「でも僕は平気だよ。君はもうくたびれたの?」
「ほざけ、馬鹿。――行けるっつ~のっ!!!」
最初に駆け出し地面を蹴って高く跳躍したのは、跳躍の黒龍の名を持つライだ。
跳躍したかと思えば鞘から刀を抜き出し、類人猿の首を狙って一文字に切り裂く。――血飛沫が走った。
だが類人猿も負けていない。攻撃してきたライに掴みかかろうとして――突風が吹き荒れた。
「風よ、我が手となり足となり――踊れっ!」
竜巻が類人猿を襲うのでライはその上昇気流で昇っていき、――脳天に狙いを定めた。
脳天は風の空洞ができており台風の目である。そこに狙いを定め、入り込んだのだ。
「死ねっっっーーーー!!」
ザックリと割ったかと思えば類人猿が倒れ込んだ。血が滴る刃を空中で切り裂いたかと思えば、そのまま捌こうとする。
ルゥの羽がバタついた。
「え、さ、捌くの!??」
「はあ? 当たり前だろ。今日はこれがメシだぜ」
ルゥが大木に隠れ「僕が居ないところでやってよね!」耳まで塞いで後ろを向いてしまう。
地獄で狩猟生活に慣れてしまったライにとってはなぜこのようなことで怯えるルゥの気持ちがわからなかった。
――離れで誰かがじっと見つめ、にひっと笑った。
今日の夕飯のメニューは川で獲れた地獄フナを塩で焼いたものと類人猿を捌いて作ったステーキである。
葉っぱを皿にしてがぶりとかぶりついているライと複雑な顔をしているルゥが対面で座り込んだ。
炎が燃え盛っていたなかでルゥが太い息を漏らす。
「なんだ、溜息なんか吐いてよ。結構うまいぞ」
「……なんか嫌だな。魚だけ食べようかな」
「お前が食わねぇなら俺が食うからな。――はふっ、うん。うまいな!」
誰だって見たくもないが興味本位でスプラッターかつグロテスクな解体シーンを目撃してしまえば食力など落ちるだろう。……だが図太すぎる神経を持ったライは違うようだ。
噛み応えのある肉をぺろりと完食し、口端を手の甲で拭っていた。
ルゥがフナを食べながら軽く息を吐く。ライは疑問を抱くのだが……。
「君が野生児みたいで殺伐的だと僕はすごく不安になるよ」
「ヤセイジ……? サツバツ?」
「――君が馬鹿みたいに殺しまくっているから僕は不安になるんだ」
ライが首を傾けた。横に向けた途端に意味がわかり……声が上がっていた。
「なに俺が殺人犯みたいな奴になってんだよ! 怪物は殺すが人は一度も殺してねぇぞ!」
「それでもこの世界の怪物は人間だって聞いたよ。人殺しじゃないか!」
「そんなこと言うならこの地獄には生き残これねぇぞ!」
「別にいいね。もうこんな旅なんてうんざりだよ。――早くオアシスに帰ってみんなに会いたい」
「……てめぇ」
ライがカチンとしてルゥに殴りかかろうと足を踏み込んだ。視線を鋭くさせ胸倉を掴み、拳を構える。
ルゥの羽が恐れるように震えて固まった。するとライが息を吐いて胸倉を離した。
「帰るために俺を連れて行くんだろ。もう、メシも食いたくなきゃ食わなくていい」
「え、あの……」
「おやすみ。もう、俺は寝るから」
ルゥが羽を震わせてなにかを言おうとしたがその前にライが即座に眠ってしまった。
いびきを掻いて眠るライにルゥは申し訳なさそうに彼の頭を撫でたのだ。
「ごめんね……。君だって好きでこんな険しい旅に来たわけじゃないのに……ね」
すやすやと眠るライのがさついた頭を撫でながらルゥは空を見上げる。空は曇天であった。
ずんずんとこちらへ向かってくる類人猿のような種族にライは舌打ちを打つ。ルゥは手のひらに風の息吹を込めた。
「またかよアイツ……。ここらへんは多いな」
「でも僕は平気だよ。君はもうくたびれたの?」
「ほざけ、馬鹿。――行けるっつ~のっ!!!」
最初に駆け出し地面を蹴って高く跳躍したのは、跳躍の黒龍の名を持つライだ。
跳躍したかと思えば鞘から刀を抜き出し、類人猿の首を狙って一文字に切り裂く。――血飛沫が走った。
だが類人猿も負けていない。攻撃してきたライに掴みかかろうとして――突風が吹き荒れた。
「風よ、我が手となり足となり――踊れっ!」
竜巻が類人猿を襲うのでライはその上昇気流で昇っていき、――脳天に狙いを定めた。
脳天は風の空洞ができており台風の目である。そこに狙いを定め、入り込んだのだ。
「死ねっっっーーーー!!」
ザックリと割ったかと思えば類人猿が倒れ込んだ。血が滴る刃を空中で切り裂いたかと思えば、そのまま捌こうとする。
ルゥの羽がバタついた。
「え、さ、捌くの!??」
「はあ? 当たり前だろ。今日はこれがメシだぜ」
ルゥが大木に隠れ「僕が居ないところでやってよね!」耳まで塞いで後ろを向いてしまう。
地獄で狩猟生活に慣れてしまったライにとってはなぜこのようなことで怯えるルゥの気持ちがわからなかった。
――離れで誰かがじっと見つめ、にひっと笑った。
今日の夕飯のメニューは川で獲れた地獄フナを塩で焼いたものと類人猿を捌いて作ったステーキである。
葉っぱを皿にしてがぶりとかぶりついているライと複雑な顔をしているルゥが対面で座り込んだ。
炎が燃え盛っていたなかでルゥが太い息を漏らす。
「なんだ、溜息なんか吐いてよ。結構うまいぞ」
「……なんか嫌だな。魚だけ食べようかな」
「お前が食わねぇなら俺が食うからな。――はふっ、うん。うまいな!」
誰だって見たくもないが興味本位でスプラッターかつグロテスクな解体シーンを目撃してしまえば食力など落ちるだろう。……だが図太すぎる神経を持ったライは違うようだ。
噛み応えのある肉をぺろりと完食し、口端を手の甲で拭っていた。
ルゥがフナを食べながら軽く息を吐く。ライは疑問を抱くのだが……。
「君が野生児みたいで殺伐的だと僕はすごく不安になるよ」
「ヤセイジ……? サツバツ?」
「――君が馬鹿みたいに殺しまくっているから僕は不安になるんだ」
ライが首を傾けた。横に向けた途端に意味がわかり……声が上がっていた。
「なに俺が殺人犯みたいな奴になってんだよ! 怪物は殺すが人は一度も殺してねぇぞ!」
「それでもこの世界の怪物は人間だって聞いたよ。人殺しじゃないか!」
「そんなこと言うならこの地獄には生き残これねぇぞ!」
「別にいいね。もうこんな旅なんてうんざりだよ。――早くオアシスに帰ってみんなに会いたい」
「……てめぇ」
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ルゥの羽が恐れるように震えて固まった。するとライが息を吐いて胸倉を離した。
「帰るために俺を連れて行くんだろ。もう、メシも食いたくなきゃ食わなくていい」
「え、あの……」
「おやすみ。もう、俺は寝るから」
ルゥが羽を震わせてなにかを言おうとしたがその前にライが即座に眠ってしまった。
いびきを掻いて眠るライにルゥは申し訳なさそうに彼の頭を撫でたのだ。
「ごめんね……。君だって好きでこんな険しい旅に来たわけじゃないのに……ね」
すやすやと眠るライのがさついた頭を撫でながらルゥは空を見上げる。空は曇天であった。
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