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《親切だけど……》
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「あい……と? あれ、帰ったんじゃ……ないの?」
「藍斗? あぁ、あいつか。お前、藍斗のトモダチ?」
電柱に座り込んでいる朔太郎に男は不敵に笑んで屈みこんでいた。男は藍斗と似ているが髪型を見てふと違うと感じた。この男、少々髪が長めなのだ。ミディアムくらいのくせ毛な髪を少し結わいている。だが、どこか色気を感じさせるような、そんな雰囲気を醸し出していた。
(あれ……、やっぱり、なんか……ちがう?)
くらりと歪む世界で朔太郎は目元を擦り藍斗に似ているような雰囲気の男へ問いかけようとする。しかし吐き気が止まらない。
「うぷっ、まずっ……い……!」
路上でゲロを吐く情けない大人こと、天使 朔太郎(27)に男は侮蔑するような視線を向けていたかと思えばそそくさと帰ってしまった。吐しゃ物を吐き終えた朔太郎はふらふらと立ち上がり、眼前に広がる汚物を見てまずはどうにかせねばと微かに残る冷静な頭で考えた。とりあえず近くの薬局で吐しゃ物を流す水を買わねばと。あとは深酔いしたようの飲み物もだ。
だが深酔いしたせいで動こうにも動けない。しかもワイシャツはゲロまみれで最悪である。
「うぅ……、どうし、よう……」
「――ほらよっ。水、飲めるか? あと、ほら、胸元がゲロまみれだから拭け。ゲロの残骸は俺が処理しておくからよ」
「えっ……?」
まさか帰って来るとは思わず、呆然と見やる朔太郎に男は水とティッシュを手渡す。それから2リットルの水を吐しゃ物へ流して路上を奇麗にしていた。水は2本あったようで吐しゃ物は排水溝へと流れていく。
朔太郎はぼんやりと眺めながら、自身の胸元をティッシュで拭いた。拭き終わったティッシュをどうしようかと思っていると、男はビニール袋を差し出す。
「ほろ、ここに入れろ。ちなみにこれで貸し二つな」
「あ。はい……。色々と、あの……、お手数を、おかけ、しました……」
軽くお辞儀して立ち上がろうとする朔太郎ではあるが、よたよたとしてしまう。男は朔太郎を支えた。藍斗に似ているこの男はガタイが良いらしく、筋肉の張りが感じられた。抱き寄せられ、引き寄せられて――男と目が合う。
男は眼鏡を掛けていなかった。
「ふぅ~ん。あんた、可愛い顔立ちしてんねぇ? しかも、少し鍛えてる?」
いきなり腕やら腹部に触れられてくすぐったさを感じる。だが、嫌ではなかった。
「くすぐったい……、ですっ、っふふ!」
酔いが醒めていく感覚を得ながら、笑ってしまう朔太郎に男は触れた手を止めた。視線と視線が交差する。朔太郎の吸い込まれそうな大きな瞳は男を捉えた。男は右目になきぼくろがあった。藍斗と違う点が多々ありすぎる。
朔太郎は首を傾げて放つ。
「あなたは……いったい、何者?」
「俺? うーん、名乗ろうかなぁ? でも、なぁ~?」
男は悪戯に笑んだかと思えば、朔太郎の額に……キスをした。
「ふぇっっ!???」
驚いて男から逃げ出す朔太郎ではあるが、彼は満足そうな顔をする。だがそれからこんなことを言い出した。
「俺のモノになってよ、お前、面白そうだからさ」
笑みを見せている親切だが男にデコチューを送る彼に、朔太郎は血相を変えて走りだしていた。しかし、胸元に差し込んでいた自身の名刺が抜き取られていることを、このときの彼は知らずにいた。
「藍斗? あぁ、あいつか。お前、藍斗のトモダチ?」
電柱に座り込んでいる朔太郎に男は不敵に笑んで屈みこんでいた。男は藍斗と似ているが髪型を見てふと違うと感じた。この男、少々髪が長めなのだ。ミディアムくらいのくせ毛な髪を少し結わいている。だが、どこか色気を感じさせるような、そんな雰囲気を醸し出していた。
(あれ……、やっぱり、なんか……ちがう?)
くらりと歪む世界で朔太郎は目元を擦り藍斗に似ているような雰囲気の男へ問いかけようとする。しかし吐き気が止まらない。
「うぷっ、まずっ……い……!」
路上でゲロを吐く情けない大人こと、天使 朔太郎(27)に男は侮蔑するような視線を向けていたかと思えばそそくさと帰ってしまった。吐しゃ物を吐き終えた朔太郎はふらふらと立ち上がり、眼前に広がる汚物を見てまずはどうにかせねばと微かに残る冷静な頭で考えた。とりあえず近くの薬局で吐しゃ物を流す水を買わねばと。あとは深酔いしたようの飲み物もだ。
だが深酔いしたせいで動こうにも動けない。しかもワイシャツはゲロまみれで最悪である。
「うぅ……、どうし、よう……」
「――ほらよっ。水、飲めるか? あと、ほら、胸元がゲロまみれだから拭け。ゲロの残骸は俺が処理しておくからよ」
「えっ……?」
まさか帰って来るとは思わず、呆然と見やる朔太郎に男は水とティッシュを手渡す。それから2リットルの水を吐しゃ物へ流して路上を奇麗にしていた。水は2本あったようで吐しゃ物は排水溝へと流れていく。
朔太郎はぼんやりと眺めながら、自身の胸元をティッシュで拭いた。拭き終わったティッシュをどうしようかと思っていると、男はビニール袋を差し出す。
「ほろ、ここに入れろ。ちなみにこれで貸し二つな」
「あ。はい……。色々と、あの……、お手数を、おかけ、しました……」
軽くお辞儀して立ち上がろうとする朔太郎ではあるが、よたよたとしてしまう。男は朔太郎を支えた。藍斗に似ているこの男はガタイが良いらしく、筋肉の張りが感じられた。抱き寄せられ、引き寄せられて――男と目が合う。
男は眼鏡を掛けていなかった。
「ふぅ~ん。あんた、可愛い顔立ちしてんねぇ? しかも、少し鍛えてる?」
いきなり腕やら腹部に触れられてくすぐったさを感じる。だが、嫌ではなかった。
「くすぐったい……、ですっ、っふふ!」
酔いが醒めていく感覚を得ながら、笑ってしまう朔太郎に男は触れた手を止めた。視線と視線が交差する。朔太郎の吸い込まれそうな大きな瞳は男を捉えた。男は右目になきぼくろがあった。藍斗と違う点が多々ありすぎる。
朔太郎は首を傾げて放つ。
「あなたは……いったい、何者?」
「俺? うーん、名乗ろうかなぁ? でも、なぁ~?」
男は悪戯に笑んだかと思えば、朔太郎の額に……キスをした。
「ふぇっっ!???」
驚いて男から逃げ出す朔太郎ではあるが、彼は満足そうな顔をする。だがそれからこんなことを言い出した。
「俺のモノになってよ、お前、面白そうだからさ」
笑みを見せている親切だが男にデコチューを送る彼に、朔太郎は血相を変えて走りだしていた。しかし、胸元に差し込んでいた自身の名刺が抜き取られていることを、このときの彼は知らずにいた。
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