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《どういうこと?》
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午後の作業が終わり、会議も無事に済んだ頃。施設長である門野が自身のパソコンを見て不審げな顔をした。
「天使くん、ちょっといいかな?」
「あ、はい。なんでしょうか?」
「ちょっと自分のパソコンのメール開いてみて」
施設長に言われるがまま朔太郎は自身のパソコンを開き、メールを見た。するとそこには『天使 朔太郎様』という件名でこのようなことが書かれている。
『昨日の件で話を通しておきたいことがある。今日の20時頃、この場所で話そう』そこにはリンクの貼られている店屋があった。なかなか雰囲気の良さそうな海鮮の料理屋である。朔太郎は海鮮も好物であった。
だが門野は不審げな視線で朔太郎を見やる。
「なにかしたかな? こっちとしてもそれは困るんだけど」
「あ、多分その……。あまり深くは話せませんが昨日のことで、その、ちょっと……」
かなり歯切れの悪い朔太郎に門野は息を吐いた。朔太郎が職場では利用者受けも良く、仕事でも目立ったミスを起こさないことは重々周知しているが、それでもプライベートはかなりだらしないことは知っている。
女癖が悪いと言うよりかはフラれやすい立場であるというのは知らないが、よく目元を充血させて泣き出しそうな顔をしているのを見ているのでなんとなく分かるのだ。今回もそのような件だろうと踏んだ。
門野は利用者の勤務表を見ながらパソコンにエクセルで賃金を打ち込んでいく。それから盛大なため息を吐いた。
「ま、その方が天使くんにだけならそれでいいけどね。こちらに火の粉が飛んでこないことを願っておくよ」
「あ、はい……」
その場に居るのが辛くて朔太郎は逃げ出すように自分の机に座り、事務作業を早めに終えて切り上げた。それから、先に帰っている曽田と角田と同じく施設長の門野へ挨拶をしてリンク先の場所へ向かうのであった。
バスに揺られて電車に乗り、目的地へと向かう。その場所は朔太郎の職場には遠いので良かったなと朔太郎は安堵した。
深い濃紺の暖簾を潜り、日本家屋のような立ち構えの店に入る。パソコンからのメールには名前が記載されていた。確か――
「瀬川 來斗……、瀬川って、藍斗と同じ苗字じゃん!! あいつ、お兄ちゃんでも居るって言っておけよ……!」
謎が全て解けた。藍斗と似ているのは曲がりなりにも兄弟だからだろう。でも、どうしてあのとき名前を告げなかったのかが不明だ。
まるで自分をからかっているような、そんな悪戯な瞳であった。でも、それでも自分が撒き散らした吐しゃ物を片してくれて、――デコチューをされた謎の男。
朔太郎の頬が真っ赤になる。どうやら初めてのことだったらしい。
「よ、よくわかんないけどっ、どんな用件か聞かないと……!」
朔太郎は深呼吸をして濃紺の暖簾を潜り、引き戸を開けたのだ。
「天使くん、ちょっといいかな?」
「あ、はい。なんでしょうか?」
「ちょっと自分のパソコンのメール開いてみて」
施設長に言われるがまま朔太郎は自身のパソコンを開き、メールを見た。するとそこには『天使 朔太郎様』という件名でこのようなことが書かれている。
『昨日の件で話を通しておきたいことがある。今日の20時頃、この場所で話そう』そこにはリンクの貼られている店屋があった。なかなか雰囲気の良さそうな海鮮の料理屋である。朔太郎は海鮮も好物であった。
だが門野は不審げな視線で朔太郎を見やる。
「なにかしたかな? こっちとしてもそれは困るんだけど」
「あ、多分その……。あまり深くは話せませんが昨日のことで、その、ちょっと……」
かなり歯切れの悪い朔太郎に門野は息を吐いた。朔太郎が職場では利用者受けも良く、仕事でも目立ったミスを起こさないことは重々周知しているが、それでもプライベートはかなりだらしないことは知っている。
女癖が悪いと言うよりかはフラれやすい立場であるというのは知らないが、よく目元を充血させて泣き出しそうな顔をしているのを見ているのでなんとなく分かるのだ。今回もそのような件だろうと踏んだ。
門野は利用者の勤務表を見ながらパソコンにエクセルで賃金を打ち込んでいく。それから盛大なため息を吐いた。
「ま、その方が天使くんにだけならそれでいいけどね。こちらに火の粉が飛んでこないことを願っておくよ」
「あ、はい……」
その場に居るのが辛くて朔太郎は逃げ出すように自分の机に座り、事務作業を早めに終えて切り上げた。それから、先に帰っている曽田と角田と同じく施設長の門野へ挨拶をしてリンク先の場所へ向かうのであった。
バスに揺られて電車に乗り、目的地へと向かう。その場所は朔太郎の職場には遠いので良かったなと朔太郎は安堵した。
深い濃紺の暖簾を潜り、日本家屋のような立ち構えの店に入る。パソコンからのメールには名前が記載されていた。確か――
「瀬川 來斗……、瀬川って、藍斗と同じ苗字じゃん!! あいつ、お兄ちゃんでも居るって言っておけよ……!」
謎が全て解けた。藍斗と似ているのは曲がりなりにも兄弟だからだろう。でも、どうしてあのとき名前を告げなかったのかが不明だ。
まるで自分をからかっているような、そんな悪戯な瞳であった。でも、それでも自分が撒き散らした吐しゃ物を片してくれて、――デコチューをされた謎の男。
朔太郎の頬が真っ赤になる。どうやら初めてのことだったらしい。
「よ、よくわかんないけどっ、どんな用件か聞かないと……!」
朔太郎は深呼吸をして濃紺の暖簾を潜り、引き戸を開けたのだ。
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