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《新たな彼女?》
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――そして、花金となる金曜の夜になった。パソコン作業を終えた朔太郎は立ちあがる。
「施設長、あとは来週に回せますか?」
「あぁ、そうだね。お疲れ様。今日はもう帰っていいよ」
「ありがとうございます」
深くお辞儀してその場を去ろうとする朔太郎に、今度は少し年増なベテラン職員の曽田がニヤつきながら現れる。彼女はグループホームというハンディキャップを抱えた方々の世話請け人をしているのであまり来ないが、たまに来ては利用者たちと仕事したり話したりしているのだ。
その曽田が少しニヤついている。朔太郎は少々寒気がした。
「な~んか、ウキウキしたなぁい? 天使くん。もしかして……新たな彼女?」
とんだ勘違いをされたので朔太郎は苦笑気味に首を左右に振った。
「違いますよ。高校時代の友達と会うんですよ」
「あらぁ~、残念。でも、――彼女でしょその人?」
「は……はい?」
合点がいかない朔太郎に曽田はくるくる回りながら夢見がちなことを告げる。旦那が居るくせにまるで自分が乙女に戻ったかのようであった。……いや、女はいつも乙女かと、朔太郎は内心でツッコみを入れた。
「高校の友達と久しぶりの再会! 懐かしい思い出が花火のように交わされて、実は僕、君のこと……なぁ~んてっ! いやぁ、やるわねぇ~天使くん!」
「あの……。友達は確かに親友ですけど、男ですから」
「あらぁ、残念。なーんだ! まぁいいや。門野さん、私も今日グループホームの勤務だから先に帰るわ!」
「はいはい。角田さんはもう帰っているし……、二人とも帰っていいよ」
施設長の許しを再度受け、朔太郎は準備を整えて扉を開け放った。朔太郎の服装は基本的に作業しやすいパンツスタイルである。しかも、今は夏だ。グレーの半袖にデニムパンツにスニーカー……というオシャレもくそもないスタイルが朔太郎の作業着でもあった。
彼女が居た際には「ダサい」などと告げられて服装を変えたりなどしたが、あまり上手くいかない。自分は本当にそういうのが疎いのだなと朔太郎はふと思う。
バスに揺られ、満員電車に乗り降車駅で停車して……いつもの居酒屋へ向かう。チェー店だが、意外と美味しい居酒屋へ足を運んでみれば、客で満席であった。やはり花金であるからか、酒の匂いが鼻孔を燻ぶる。
そこへ見慣れすぎた人間が手を挙げていた。
「おーい! さくぅっ~、こっちだ!」
「あ、藍斗……!」
どこか似ているようで違う。黒縁眼鏡を掛けた男の藍斗の姿に朔太郎はどういう反応をすれば良いのかわからなかった。
だが、近づいてみると藍斗は一人でビールと枝豆に唐揚げを貪っていた。藍斗の容赦ない身勝手ぶりに今度は朔太郎が破顔した。
やはりこいつはあの人じゃない――そう感じた。
「なに一人でやってんだよ、バカ」
「いいだろ~別にぃ。ほらほら、座った座った。すみませーん、生中一つにカマンベール揚げとささみ揚げそれぞれください~」
能天気で自由人な藍斗の姿に朔太郎は逆に笑っていたという。
「施設長、あとは来週に回せますか?」
「あぁ、そうだね。お疲れ様。今日はもう帰っていいよ」
「ありがとうございます」
深くお辞儀してその場を去ろうとする朔太郎に、今度は少し年増なベテラン職員の曽田がニヤつきながら現れる。彼女はグループホームというハンディキャップを抱えた方々の世話請け人をしているのであまり来ないが、たまに来ては利用者たちと仕事したり話したりしているのだ。
その曽田が少しニヤついている。朔太郎は少々寒気がした。
「な~んか、ウキウキしたなぁい? 天使くん。もしかして……新たな彼女?」
とんだ勘違いをされたので朔太郎は苦笑気味に首を左右に振った。
「違いますよ。高校時代の友達と会うんですよ」
「あらぁ~、残念。でも、――彼女でしょその人?」
「は……はい?」
合点がいかない朔太郎に曽田はくるくる回りながら夢見がちなことを告げる。旦那が居るくせにまるで自分が乙女に戻ったかのようであった。……いや、女はいつも乙女かと、朔太郎は内心でツッコみを入れた。
「高校の友達と久しぶりの再会! 懐かしい思い出が花火のように交わされて、実は僕、君のこと……なぁ~んてっ! いやぁ、やるわねぇ~天使くん!」
「あの……。友達は確かに親友ですけど、男ですから」
「あらぁ、残念。なーんだ! まぁいいや。門野さん、私も今日グループホームの勤務だから先に帰るわ!」
「はいはい。角田さんはもう帰っているし……、二人とも帰っていいよ」
施設長の許しを再度受け、朔太郎は準備を整えて扉を開け放った。朔太郎の服装は基本的に作業しやすいパンツスタイルである。しかも、今は夏だ。グレーの半袖にデニムパンツにスニーカー……というオシャレもくそもないスタイルが朔太郎の作業着でもあった。
彼女が居た際には「ダサい」などと告げられて服装を変えたりなどしたが、あまり上手くいかない。自分は本当にそういうのが疎いのだなと朔太郎はふと思う。
バスに揺られ、満員電車に乗り降車駅で停車して……いつもの居酒屋へ向かう。チェー店だが、意外と美味しい居酒屋へ足を運んでみれば、客で満席であった。やはり花金であるからか、酒の匂いが鼻孔を燻ぶる。
そこへ見慣れすぎた人間が手を挙げていた。
「おーい! さくぅっ~、こっちだ!」
「あ、藍斗……!」
どこか似ているようで違う。黒縁眼鏡を掛けた男の藍斗の姿に朔太郎はどういう反応をすれば良いのかわからなかった。
だが、近づいてみると藍斗は一人でビールと枝豆に唐揚げを貪っていた。藍斗の容赦ない身勝手ぶりに今度は朔太郎が破顔した。
やはりこいつはあの人じゃない――そう感じた。
「なに一人でやってんだよ、バカ」
「いいだろ~別にぃ。ほらほら、座った座った。すみませーん、生中一つにカマンベール揚げとささみ揚げそれぞれください~」
能天気で自由人な藍斗の姿に朔太郎は逆に笑っていたという。
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