飢えた蝶

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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*《手順を踏んで》

 洸が聡太自身の扱く速度を速められたことにより聡太はさらに身体を震わせてしまう。それから聡太の口から信じられないほど甘い声が響いた。
「んぅ、んぅ、やぁっ、あぅ……、あっ――――!!??」
「どう、ですか? オトコ同士でも、気持ちいいでしょ?」
 反応出来ずにいたが首を上下に振ってしまう素直な自分が居た。欲に抗えない自分が居た。だからそれに気が付いて首を左右に振る。すると茶色の蝶は耳元で囁いた。「……――ウソツキ」
「はぅっ、うぅんっ……!???」
 それから蝶番の手に聡太は自身の欲を吐精してしまった。人が通るかもしれない路地裏でなにをやっているのだろうかと思うことに、数分は時間を要した。しかしハッとして蝶番へ文句を告げようとしたが、彼は手元の白濁液を旨そうに舐めていたのだ。
 初めはなにかわからずにいた。しかしそれが自分の吐き出した欲だと感知した瞬間、聡太は顔を真っ赤にさせて蝶番の舐めている手を自分に引き寄せたのだ。青臭い匂いのせいで手を離してしまったが。
「そんな汚いもんを舐めるなっ、バカっ! お前は変態かっ」
「……変態だって言ったら、栄養補給をするのを赦してくれますか?」
「赦すって……、それがその、あの……蝶人の栄養補給なの、か?」
 なんだかインキュバスみたいだな、などと思う聡太に蝶番は残りの液を舐め尽くして満足そうな表情をした。その姿を見せつけるかのような佇まいに聡太は頬を紅潮させる。
 しかしその前にズボンを直してからポケットに入っているハンカチを蝶番に渡した。青い刺繍の入ったハンカチであった。「……さすがに人のは汚いだろうから貸してやる」わざとそっけない表情で伝えたつもりだが、蝶番、いや、洸にとってはそれが初々しくて可愛らしく思えた。蝶番は渡されたハンカチを手に取ってぎゅっと握った。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「ま、まぁその、お前の栄養の補給源ならしかたないな。でもほかの方法とかないのか? その、あの……、そういう、……行為じゃなくて」
 最後の方は真っ赤な顔をする聡太に洸は今すぐにでも手を拭いて聡太を抱き締めてキスして、ベッドで喘がせたいと願った。喘いだ彼の姿はさぞ可愛らしいだろうと洸は考えた。今も勃起しているのに、破裂しそうだ。だが、挿入までいったら聡太は気が動転して死ぬ、なんてこともあり得るかもしれない。人間の、いや、聡太の心理はかなり複雑だから一線を越えるには時間を有すだろうと洸は考えた。
 そういうことなので洸は自分の股間を隠しつつも聡太の質問の答えを示した。「一番手っ取り早いのはキスなんです。ちなみに、聡太さんの栄養補給にもなりますよ」
 聡太が驚きで満ち溢れた顔を見せた。「えっ、そうなのかっ!? 俺がここで食事ができない代わりに、俺もあの、そういう、その、あの――」
「そう。体液交換ですね。でも、――俺とのキスは気持ち悪くなかったでしょう?」
 最後の言葉は自信があった。洸はわざと聡太の耳元で囁いたのだから。洸は鈍感ではない。聡太の耳が弱いことを知っている。耳元で甘く囁くと局部に触れるよりもかなり良い反応を示すのだ。なので思った通り、聡太は身体を甘く震わせた。まるでセックスの前戯である蝶の踊りのように思えた。
 素直になった聡太は薄い唇を微かに開いた。「きもち、よかった……けど」
 蝶番はその反応を見て自分自身が抑えきれない気持ちを抱いた。早くこの手で抱き締めたい。キスしたい、触れたい、挿入して喘がせて溺れさせて最高の蜜を舐めてしまいたい。
 だがぐっと抑える。それは獣がやることだ。自分は獣ではなく蝶だ。しかもこの死にたがり青年に好意を持った蝶人だ。
 蝶のようにしたたかで鮮やかな手腕で好意を告げなければ、この死にたがりの青年を甘い蜜へと歓楽させることができない。だから洸はにこっと笑んでハンカチを自分のポケットに仕舞う。
 この死にたがりだが本当は素直で儚げな青年を救うために、生きる喜びを覚えてもらう為に。「さて、宿に戻りますかっ! お風呂とか下着の洗濯とかしないとですしねっ」
 急に明るくなった後輩に先輩である聡太はその扱いをどうすれば良いのかわからずにいたのだ。
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