鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

文字の大きさ
1 / 65

《鬼の双子の話》

しおりを挟む
 昔。ある日本の地域で、鬼を穿てるほど強い力を宿した男の子ともう一人の男の子が生まれました。鬼を穿つ兄とか弱い弟の誕生です。両親を失った可哀そうな兄弟は名前を付けられませんでした。双子だからという理由で両親は死罪にあったのです。それでも兄弟はめげずに生きることができました。
 兄の子は成長するたび鬼に勝るほどの強さを持ちました。しかし双子の弟は兄から生気を取られるように干からびた脆弱な姿となり、幼くして亡くなってしまいます。
 悲しみに暮れた双子の兄は青年の姿となってからますます荒れました。そして亡くなってしまった小さかった弟を悼むように鬼を倒していきます。しかし、兄は『鬼と化した者』として人々に恐れられ、冤罪の罪で殺されてしまいます。
 殺された兄の恨みからか、町は鬼たちに大層狙われるようになりました。そこで町の長は冤罪の罪で殺された男の祠を建てました。すると鬼たちはその町を狙わなくなりました。
 しかし男の双子の弟は祠を建てられていません。この世をさまよっていたのです。だから鬼は再び現れて町の者たちを食らいました。つまり鬼が現れたのはこの双子のせいだったのです。
 町は損壊の危機に瀕しましたが、残った町の者たちは双子の弟で鬼全体を治める者として生きる鬼治丸きじまると名付けて祠を建てました。その祠は兄の鬼道丸きどうまるの傍に建てられたそうです。それが現代の日本で都心にある鬼を祀る神社の始まりでした。

「へぇ~……。でも、俺になにが言いたいわけなの。じいちゃん?」
 掃除用のほうきを持って双子の兄弟の話を聞かされていた百済くだら 葉治ようじは祖父である桃葉とうはの話に首を傾げていた。ちなみに葉治は百済宗くだらしゅうと呼ばれる独自の神道しんどうを造っている。だが、かなり稀な神道でほとんどの地域には進出していない宗派だ。
 葉治の家は百済宗を信仰している神社の末裔だ。今でもこの逸話を聞いて参拝している町の人々も居る。それは祖父である桃葉もだ。しかし孫息子かつ高校生で青春真っ盛りの葉治はあまり気にしていない様子であった。むしろ面倒くさそうな表情を浮かべていた。
 そんな孫息子に桃葉はほうきを片手に咳払いをした。「お前は肝心なことを忘れているな。その双子の弟である鬼治丸様の祠、最近になって荒らされているとは思わないか?」
「あぁ……、そういえば、そうだな」
「しかも兄である鬼道丸様の祠にも最近になって荒らされた形跡がある。しかも鬼道丸様の方は本体ほど盗まれてしまった。この神社の本尊ほんぞんである鬼道丸様を狙うとは、かなりのバチ当たりだぞ?」
 その話を聞いて葉治は鬼道丸の方が目立っていて、逆に弟である鬼治丸の方が軽く見られている気がして、何とも言えない気持ちになった。少し可哀そうだと考えてしまう。ちなみに本尊とはその神社仏閣の主役みたいなものである。
 確かに鬼道丸は鬼のように強かったが、無罪であるにも関わらず殺されてしまった悲劇の主人公だ。祠としても建てても良いとは思う。
 だが、双子の弟である鬼治丸はあまりにも可哀そうではないか。自分の兄に力を吸われて命を賭してしまったなんて、あまりにも無益で残酷すぎる。
 そんな孫息子とは打って変わり、祖父の桃葉はほうきを握り締めて一生懸命掃いていたのだ。「これはなにかの前兆かもしれんっ。気を緩めるなよ、葉治!」
 すると葉治は持っていたほうきを置いて鬼の兄弟である鬼道丸と鬼治丸の祠にある賽銭を見やった。賽銭箱には今は厳重に盗まれないようしてある。そこに葉治は鬼道丸と鬼治丸に小銭を入れて手を合わせた。
 なにを思ったかと、願ったかと言えば双子が喧嘩をしないようにというものだ。祠騒ぎでどちらが悪いかと喧嘩にならないようにと葉治は争わないようにと願った。
「葉治っ、掃除の再開だ。早く済ませてしまうぞっ!」
「へーい」
 二社の祠へ願ってから去るように祖父の手伝いをしようとしたその時、――風が吹いた。吹いたかと思えば、突風が巻き起こり、……なんと鬼道丸の祠が崩れたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...