鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《百済宗の由来》

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 ところ変わってここはよーじの自宅。よーじは祖父の桃葉と共に料理の支度をしていた。母親の小枝はこの神社の巫女でもあるがさすがに働かないと子供を養えないので働いている。
 小枝は鹿目かのめコンサルティング株式会社という一流企業で受付嬢をしているのだ。昨日はたまたま仕事が休みであったので家事をしたり境内の掃除をしたりをしていたが今日は出勤日なので夕飯などを義父である桃葉に任せているというわけである。
 そんな小枝であるが小枝は率直に上げてそこまで料理が上手くはない。簡単な料理であるカレーライスや生ラーメンを茹でて出すことが多い。でもそれでもよーじや桃葉は文句を言わずに食べている。まぁよーじは文句を告げて怒られることもあるが。
 料理下手な小枝とは打って変わり、桃葉は料理を作るのが上手であった。今は生そばを茹でる準備をしつつかき揚げや天ぷらを作っている。
 かき揚げは小エビと玉ねぎに千切りの人参を使ってうまく揚げていた。揚げるのは桃葉で材料を刻んだり下ごしらえをしたりするのはよーじである。
 そんなよーじは天ぷらの準備を終えて手暇であった。生そばは一度茹でたことがあるが、かなり難しい作業なのだ。茹でるたびに沸騰した湯はドロドロになるわ水で締める際にはうまい力加減でないと千切れてそばではなくなってしまうわで難しいのである。
「じいちゃん、下ごしらえ終わったけど」
 薄くスライスしたカボチャやピーマンに薄力粉をまぶして、エビの下ごしらえもした。そして衣になるものは薄力粉と卵と水に数個の氷を入れて冷やしている。氷を入れると衣が上手く付着しやすいのだ。
 かき揚げを作り終えて天ぷらに手を伸ばそうとする桃葉はよーじの手持無沙汰な様子に器を差し向けた。それは人数分のお椀や箸などであった。
「だったらこれを持っていけ。新しいお客さんも来ているんだ。もてなさないとな」
「ちぇ~。俺だけ働くなんて変だ。きじや睦月だって働かせれば――」
「なにを言っているこのバカ孫がぁぁぁっっっ!!!」
 急に怒鳴りつける祖父の桃葉へよーじは耳を塞ぎそうになった。しかしお椀などがあるので耳を塞げない。
 そんなよーじに桃葉はエビを揚げながらぐちぐちと話し出す。
「まったくお前は、鬼治丸様も、カラス天狗の睦月様になんてことを言うんだ。神職者たるもの、進行している百済宗であることを念頭に置け」
「百済宗って、……いつも思っていたけどさぁ。なにを信仰しているわけ? 神とかそういうのだろう、普通は。大黒天とか菅原道真とかならわかるけどさぁ」
 エビを十数本は揚げている桃葉は揚げ具合や火元を確認しながらこのような回答を示した。「菅原道真が鬼治丸様は近い存在だな。人々が恨みや怨念を恐れて祠を建てた、という点では」
 ただ、と言って桃葉はエビを揚げ終えて今度は野菜を揚げ始める。隣のコンロでは大鍋に水を張って湯を沸かしている。その湯は熱く煮えたぎりそうな勢いであった。
「本尊である鬼道丸様も人々が恐れてこれ以上災いが起こらないようにと祠を建てた。だが、弟の鬼治丸様は人々に忘れ去られそうな存在だった。幼くして亡くなったから、というのもある。だから、鬼治丸様は失った身体を求めるように怨霊と化してさまよった。そして、鬼を引き寄せ人々を恐怖に陥れたのだ」
 桃葉の説明を受けてよーじはきじのことをさらに可哀そうだと思った。鬼を治める者として名付けられただけでなく、人々へ忘れられそうになっていたのだ。
 よーじはふと思う。「……きじは、鬼を呼び寄せて知らせたかったんだろうな。自分はここに居るって。俺はここに居るっていう証明を欲しがっていたのかな……?」
 キッチンで話している二人は気づいていないだろう。きじや睦月が手伝いキッチンへ訪れたことに。二人はそっと身を隠したことに。
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