鬼を治めるよーじ

蒼空 結舞(あおぞら むすぶ)

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《さよならの二体》

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 無数のあやかしに囲まれて睦月に身体を貸している夜空は悲鳴を上げていた。
『こ、こわいよぉ~!!!! 気持ち悪いよぉ~~~~!!!!』
『夜空様。ここは耐えるときです。八岐大蛇を倒して私を救い出さったあの時を思い出してください!』
『う……うん……!』
 クシナの励ましに夜空は目を瞑るように頷いた。すると睦月は息を吐いた。「ヨル。お前には俺とクシナが付いている。それまで踏ん張れ。――男だろ?」
 睦月のそっけないが優しい励ましに夜空は深く頷いた。睦月も余雫剣で自分に向かって来るあやかしたちを跳ねのける。
 余雫剣は魔を祓う刀だ。触れた瞬間に霧散する聖なる力を持っていた。睦月が余雫剣を変化させる。そして無数の弓矢に変えた。睦月がニヒルな笑みを浮かべた。
「一掃させてもらう。……舐めるなよっ!」
 放った弓矢が飛び交い無数のあやかしたちが消滅した。そんな中で大太刀を振るっている狼煙と背中合わせになっているきじは目の前に居るあやかしたちを滅する。
 きじは短刀である弥生に願いを込めた。すると弥生が白銀に輝いたかと思えば二つに分かれたのである。一本は弥生である短刀ともう一本は強靭に彩られた鋼の色の鋼であった。その二本に驚きつつどうして分かれたのだろうかときじは考えた。すると背後からなにかが消えたかのように、消失した感覚を得た。
 それは鋼色の短刀に鼓動が刻まれる。きじは目を見開いた。「なんだ、この感覚にこの、……鼓動は?」
 その鼓動はどこか茶目っ気がありそれでも優しい狼煙の鼓動に聞こえた。まさかと思い後ろを見ると狼煙は消えかかっているのだ。
 多くのあやかしは睦月や狼煙のおかげで消失している。滅せられているのだ。そんな中で狼煙は悔いがないというような様子できじを見やる。
「坊ちゃん、もう時間です。俺の責任は果たした。だから今度は、坊ちゃんの番です……よ?」
 狼煙は消えたと思えばきじに憑依されているよーじの左胸に刻まれた。きじは涙を流しそうになりながらも、なんとか堪えて突進してくるあやかしへ回し蹴りをお見舞いする。
 あやかしが倒れかと思えば新しく増えた鋼色の短刀で切り裂いた。霧散するあやかしを次から次へと斬りかかっていき、ついには台風の目である福禄の前に立ちはだかる。 
 福禄が驚きで満ちた顔をした。しかしきじはそんな中でダイレクトキックをお見舞いする。「いてて……。餓鬼、なんか怒ってんじゃん……?」
「おらは幼いからっ、まだ心が幼いからっ! 大切な家族や仲間を失った悲しみは消えないっ。でもわかったことがある。――幸せはやっぱり掴むものだっ!」
 地面に倒れている福禄へきじは持論を語る。
「奪われたら奪われた分だけそいつを呪うんだ。でも掴むのは違う。掴んで手に入れた幸せは努力に等しいからだっ。だからおらは兄者を倒す。……自分の幸せの為にっ!」
 きじはその一瞬だけ目を瞑って銀色の短刀を横へ素早く滑らせた。血が舞うかと思えば福禄は少し納得したような顔をして身体が霧散したのだ。その霧散した身体はよーじの身体に刻まれて朱印となって依代である金色の石を一粒落とした。
 空に晴れ間が見えてあやかしたちの大群は過ぎ去った。
「やっと、終わりましたね……。この騒動も」
 睦月はもう夜空から憑依を解いていた。睦月の数メートル後ろには夜空が気絶してぶっ倒れている。その様子を見てきじも慌ててよーじとの憑依を解いた。するとよーじは案外起きていたらしく「身体が、痛ぇ……」などと告げていた。
 きじは決心が付いたように二人に話す。「狼煙も福禄も朱印となった」
 きじの発言に夜空以外のよーじと睦月は絶句している。まさか狼煙も朱印となったとは思いもしなかったからだ。「でも、おらたちには兄者を倒す前にやらなきゃいけないことがあるんだ」
 狼煙だった依代は短刀の姿から鋼色の勾玉まがたまに変化している。そして地面に一粒の金の雫が落ちていた。福禄の依代だ。
「これをあの男に返そうと思う。どこにいるかはわからないけれど、いつか、――必ず」
 きじは青い空を見上げた。

 その頃、涼は夢を見ていた。それは福禄がニンニクとにらの次郎系ラーメンを食べて「うまいっ、うまいっ!」などと言っている姿であった。涼は夢の中でふと思う。
「帰ってきてくれよ……。福禄……」
 いつもは嫌で仕方ないニンニクとにらの香りが恋しく感じたのだ。
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