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婚約破棄後の学園

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わたくしがついたのはとても広い学園、華麗学園です。貴族が通っている学園…ですがそこは優秀な人しか入れません。
レディオス様の場合は権力のおかげで入れましたけれどもユルリッタ様は恐らくレディオス様のおかげで入れたのでしょう。
わたくしはちゃんと優秀な成績を残しましたけどね。
廊下をしばらく歩いていると、あの二人とすれ違いました。
一応お二人は未来の王と妃となっております。すれ違った際挨拶をしなければなりません。
「レディオス様、ユルリッタ様ごきげんよう。女神ユレリタンシュールの祝福がありますように」
女神ユレリタンシュールとは平和の神と言われております。挨拶によく使われると教えてもらいました。
レディオス様は眉間にしわを寄せ、言葉を放ちます。
「レディオス様とはなんだ。もう婚約破棄したというのにちゃんと呼び方も分からないのか!普通はレディオス王子様だろうが!!」
そう言いながらわたくしの悪口を言います。
レディオス王子様もレディオス様も同じようですが何もわかってらっしゃらないということがわかりました。
「レディオス様、そこまで言わなくても…アンノージュ様が可哀想ですよ!でも…呼び方は変えてください。婚約者はもう…わたくしですので…」
そう言いながら静かに微笑んでいます。
レディオス様はその言葉にご機嫌なようです。
「とりあえずアンノージュ、お前はもう婚約者ではない。それじゃあな。」
「あら?わたくし達婚約してないのですけれどアンノージュと呼び捨てで呼んでもよろしいのですか?」
レディオス様のお顔を気にせず続けます。
「普通、アンノージュ様というのではないのでしょうか?」
レディオス様は顔を真っ赤にして舌打ちをしながらユルリッタ様と去っていきます。
わたくしはその背中をただただ微笑みながら見ているだけでした。
…すっきりしたわ。
恐らく私には幸運の女神、レミシアール様の祝福があるのでしょう。嬉しいです。
嬉しくて心がいっぱいになり周りを見渡すとざわざわと色々な言葉が飛び交います。
「大地の神のデルヴィール様のお怒りかしら…」
「大地の神よ…怒りを抑えてくださいませ…」
そんな声が聞こえてきます。
どうしたのでしょうか。大地の神…そのお怒りということは恐らく、地震や地面に何か悪いことでもあるのでしょうか…。
そう思いながら学園が揺れ出しました。
それは学園だけではなく窓の向こう側にある木もです。
…やはり、地震、大地の神のお怒りでしたか。
さて、どうやって落ち着かせるか。それは大地の魔力の属性を持っている人にしかできません。わたくしは属性は風、火、水となりますが大地はないですね。
そう思いながらわたくしは周りを振り返りました。誰かが何かを宣言しております。
振り向いてその声の主を見てみると…
「おい!皆。静まれ!このレディオスが神のお怒りを抑える!大地の魔力を持っているのは私だ!」
…まさか、大地の魔力を持っていたなんて知りませんでしたわ。
隣にはユルリッタ様が自分のことのように胸を張り「大丈夫ですわ」と言います。
ユルリッタ様の属性は確か、水、緑、光、を持っていたはずです。光はとても貴重な魔法です。
ですがその魔法は見たことはないのです。
「はぁ!」
レディオス王子様は手を上げ魔力を出します。手から出てきた魔力は緑色に染まり、星のようにキラキラしています。
しばらくするとお怒りを抑えることができたようで揺れがおさまりました。
こういうことができるんですね…。
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