ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く

稲葉小僧

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第二章 銀河系のトラブルバスター

第九話 銀河のプロムナード(閑話や、本編に関係ない話)

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フロンティアの一行が銀河狭しと飛び回っている頃、太陽系では……

「おい!この地球外生命体の集団は何なんだ?!こんな密集体型で太陽系に迫ってくるなどと……宇宙戦争か?」

ここは太陽系惑星連邦評議会の巨大なる建物の地下深くに設けられた戦略宇宙軍の情報管理部門。
ここには冥王星を果てとする太陽系の、ほぼリアルタイムの情報を全て一覧することが出来る3Dモニターが表示されている。
怒鳴り合っているのは情報室のお偉方と緊急事態を知らされた評議会の重鎮たち。
その目の前に写っている3Dモニターには明らかに異常な数のUFO(未確認飛行物体)
いや、鮮明に映っているそれは明らかに地球外生命体により造られた宇宙船の大群。
大きさ、設計思想、デザイン、その全てが統一されていない宇宙からの訪問者の大集団! 
太陽系内をもれなく探査したという人類は、その狭い範囲内で「知的生命体は宇宙には人類だけ」などという思い上がりを長い間、維持していたが、この瞬間、それが井の中の蛙状態だったことが判明した。

「どうする?こんな事は予想もされていなかったのだぞ。人類がファーストコンタクトする場面はシミュレーションされていたが、よりにもよって、こんなに多数の異星種族や異星文明とのコンタクト状態に放り込まれるとは……ああ、言葉も理解できないだろうし相手の訪問意図すら推測出来ないかも知れないのだぞ!どうしたらいいのだ?!」

これは内惑星と外惑星の折衝作業を行っている外務大臣の職にある者の言い分。
工業省や農業省、開拓省などに所属する大臣たちの意見は、また違うだろうが……

「今のところ分かっているのは、この宇宙船群が我々とはケタ違いの技術力を持っていることですね。我々の文明は未だに太陽系を離れて付近の恒星系へ行くことも出来ないのです。それに比べて彼らの宇宙船は遥かに遠い恒星系からやって来ているのは明白。その動力源すら我々の文明は開発できておりません」

説明しているのは太陽系宇宙軍の情報省長官。
彼にとって、この事態は最悪のシミュレーションに近かった。
文明程度が数百万年ほど違うと言ってもいい(原猿と現代人のようなもの)この宇宙艦隊の太陽系訪問は完全に砲艦外交そのもの。
あまりの文明程度の差に、もう地球も火星も、その他の惑星も含めて相手の言うことを大人しく聞くことしか出来ないのが現状。

「戦略宇宙軍などという、ご立派な部署にいるんだろうが?!こういう事態の時に秘密兵器の一つでもないのかね?!」

かなりのお年を召された評議員が、たまりかねたように発言する。
戦略宇宙軍長官は哀しそうな目で、その人物を見る……

「残念ですが昔のビブリオファイルにあるアニメ映画ではなく、これは現実です。こちらが、どうやっても越えられない恒星間の膨大なる距離を彼らはいとも軽々と越えてきた……これほどの技術力の違い、どうやって埋めると言うのですか?教えて下さい。貴方の言う台詞とは、ご都合主義のアニメや映画では当然のことかも知れませんが、これは妄想ではなく現実です。ちなみに彼らには核ミサイルの攻撃すら効果がないでしょうね。恒星間を渡る技術力を持つというのは、それほどの差ですよ」

戦略宇宙軍長官の言葉は3D映像が真実とは思えていなかった政治家達の頭をぶん殴り正気に戻させた……
皆、言葉もなく蒼白い顔色になっていく……

「今、この船団との交信を成立させようとしています。ともかくコミュニケーションが成立しなければ彼らが何を求めて太陽系になど来たのか、それすら分かりませんので」

戦略宇宙軍長官は、ぶつぶつ言っている政治家達を部屋の外へ追い出すと、ため息をついた。

「あと数時間で、あの宇宙船の大群がやってくる。推定進路から見ると、おそらく目的地は地球。さて、どんな風に相手をしたらいいのやら……こうなってみると、あのトラブルバスターがメンバーから離れたことが痛い。外惑星方面へ向かったと聞くが今頃は、どこを翔んでいるのやら……うらやましいよ、まったく」

ひとしきり愚痴ると戦略宇宙軍長官は地球側の対応状況を確認するために長官室へ歩き出すのだった。
彼が口にした人物が全ての元凶である事は神ならぬ身の哀しさ……
分かるはずも無かった。

冥王星軌道を越えるかというタイミングで異星人達の宇宙船が行動を起こした。
まあ彼らの文明圏では常識の「まず最初のコミュニケーションはテレパシーから」を実践しただけなのではあるが。
 そういう「常識」の通用しない太陽系では大混乱に陥っていた。

「うわぁ……こ、声が響き渡る!これは神か?!」

「や、やめてくれ!俺の頭の中を引っ掻き回すな!」

「うひ?うひひひ?宇宙意思の導きだぞ?!ついに私は宇宙意思とコンタクトしたのだぁ?!」

以上、こいつらはテレパシー初級というか発信ができない初心者のクラス、または自分でも気づかないテレパシー能力者達の感想。
一人だけイッちゃってる奴もいるが……

「こ、これは何かの呼びかけか?」

「こちらへの呼びかけとは分かるが……理解不能だ」

「もしかして数年前の木星事件の続きか?あれは解決したはずなんだが」

以上は中級クラスのテレパス、あるいは木星勤務でESPに目覚めた人たちの感想。
木星事件という形で例のトラブルバスター関係の大事件未遂は落ち着いたようだが。
でもって、こちらが本職のESP保持者達……

「ん?いつにないほどの強力なテレパシーだな……な、なんと!冥王星軌道からの発信とは!ちょっと待ってくれない!エスパー職員達を招集して、あなた達の希望を伝えよう」

戦略宇宙軍にもESP部隊がある。
そこには今の時点で集められる最強にして最高のエスパー職員がいる(例のトラブルバスターの数十分の一の力に過ぎないということは彼らは知らない。知らないほうが幸せな事実というものは確かにある)その部隊員が全て招集されるなどという、まさに非常事態が起こっていた。

「それぞれが任務を抱えていて常に全部隊員が揃わないのが、この最強ESP部隊だったのだが 今この時に幸か不幸か部隊が揃ってしまった!諸君、今この時点で人類が出会ったこともない生命体と、その文明が大群で恒星間を渡って太陽系にやって来た!諸君の任務は彼らとのファーストコンタクトを行うことである!非常に困難な、言葉や感性、生態系すら違う生命体との交渉になるが君たちに全人類の未来がかかっている!頑張ってくれたまえ!」

戦略宇宙軍長官の訓示である。
スパイ任務や救助任務も良いが、たまにはこういう宇宙規模の任務も!
などと思っている部隊員も多い。
ちなみに地球外生命体とは未だに電波や光信号によるコミュニケーションの試みは成功していない。
まずは全部隊員の精神集中から、その統一された意思を部隊の中でも一番強力なテレパシー能力を持つ隊員に託す。
その隊員は脂汗をかきながらも全力を込めて異星人の大群へ向けて歓迎と交信を望む意思を含んだテレパシーを放つ。
しばらくして……

〈やあ!ようやくテレパシーが通じたな。ここが伝説にもなりそうな男の誕生した太陽系、そして地球という星のある場所で良かったのかな?〉

ESP部隊員は拍子抜けである……
あまりに緊張感がないテレパシーに、あっけにとられてしまった。
地球人にとってはファーストコンタクトだというのに……

待て!
相手は太陽系や地球の名前を知っているではないか!
伝説の男だと?!
そんな人間、いるわけがない!
ちなみに精鋭ESP部隊の名誉のために言っておくと彼らはトラブルバスター楠見糺の名前なんぞ知っているはずがない。
彼らには一介の三流企業に過ぎない会社、なおかつ正社員でもない契約社員の話など噂にも登らないのが当然。
ただし、これを後に報告書として渡された戦略宇宙軍長官だけは、こう呟いた……

「ああ、やっぱり、あの男が絡んでいたのか。太陽系から銀河系へと活躍の幅が広がっても、やっぱり同じような仕事をしてるんだな、彼は……」

さーて、それからが大騒ぎ!
いくら友好的な地球外生命体だからといえ大群を組んでやって来たのだから。
それも事情が分かっていく度に驚きと騒ぎが大きくなっていく。
彼らの目的は……

そのいち。

「当然、我が星の恩人の故郷だからだよ!我々と機械生命体とのトラブル、いや、下手すると自殺テロに近い攻撃で自分の星もろとも機械生命体を殲滅するつもりだったんだから、そのトラブルを平和的に、かつ双方ともに利益のあるように解決してくれた彼は我々だけではなく機械生命体にとっても恩人。その人物の故郷の星系や生まれた星を見たいと思うのは当然だろ?」

そのに。

「我々、機械生命体にとり先史文明の子孫は全て保護対象になった。おまけに、このトラブル解決に動いてくれた恩人の地球人は、どう考えても先史文明の血を濃厚に引き継いだ先祖帰りに近い人間だと思われるため、我々は太陽系と地球を「特別保護星系」に指定するための提案を持ってきた。貴重な先史文明人の遺伝子を残す太陽系人類を我々は全て保護し、安全を与え、そして銀河系へと広がるための指導もしよう」

そのさん。

「我々、不定形生命体の種族そのものを救ってくれた大恩人だ。おまけに過去に地球にたどりついた同胞を探すヒントまでくれたのだから、ここに来ないわけがないだろう。我々の同胞を探す許可が欲しいのだ」

そのよん。

「我が球状生命体種族の汚点を解決して、さらに我々の食糧事情の解決方法まで指摘・指導してくれた太陽系人類に対し、どんなに言葉を尽くしても感謝に足りない。何か種族の不都合があれば相談に乗ろうではないか」

ぽかーん……
空いた口が塞がらないのが、これを聞かされた太陽系人類。
楠見糺という個人名は、あっちこっち調べて何も分からん!
と調査部がキレかけた時に当の戦略宇宙軍長官が、ぼそっと助け舟を出したのでようやくわかったのだが、その当人、数年前から全ての仕事を辞めて宇宙ヨットに乗って太陽系の末端に向かって飛んでいることになっている(書類上)
当然、調査部の全員が長官に向かって行き……

「長官?!個人名まで分かってるんなら、その男は何かの秘密任務にでも与えられたのですか?今の太陽系に冒険したいからって理由で何も仕事をしないなどという、ふざけた人間がいるわけないのは長官もご存知でしょうが?!なんで太陽系内にいるはずの男が銀河系を右往左往しながら、あっちこっちで星間紛争なんてとんでもないトラブルを解決しまくってるんですか?!地球外生命体達の言ってることが真実だとすると、この男、今までに存在したことのない超天才にして超強力なエスパーだって事になりますよ……どうして我々調査部にも名前すら上がってこなかったんですか?」

この質問に当の長官、少しも慌てること無く、こう言い放ったという……

「それは君たちの能力よりも彼個人の能力が遥かに高かったからに違いあるまい。数年前、出処の分からない、だけど国家機密クラスの人工頭脳のバグが報告されただろ?私は、それも彼、楠見糺の提案だと思っている。証拠は無いよ、あの男が証拠など残すはずがないなから」

「し、しかし!あのバグ情報は、とんでもない騒動を巻き起こしたんですぞ!特に軍用人工頭脳の開発陣はパニックでしたな。完全に安定したと思ってたファームウェアに重大なバグがあったという報告が、それも証拠付きで解決方法までご丁寧に付属ファイルで送られてきて……それが送信者不明で、どこの情報組織でも人物が特定できないってお蔵入りになった事案でしたから」

「だからだ、だから楠見だと私は思ったのさ。彼は職場が三流企業だったせいで正式な報告が上がってくることはなかったが、それでも私のもとには彼のおかげで救われたというプロジェクトの報告が10や20どころではない数で上がってきた。しかし私も、その頃は目が曇っていたのかね。楠見の個人的な成果だとは思わずチームの成果だと思ってしまった…… 気がついた時には私の手を離れて彼は銀河の彼方へ旅立ってしまい、太陽系はトラブルの山を抱えることとなってしまったという事だ……笑えるよね、太陽系は、たった一人の男に数年間もトラブル解決を依存してたという事実に」

情報部の切れ者で通っている面々は、その長官の言葉に何も言えなかった……
長官の言葉を事実と認めるほかない現状が、それを如実に示している。
楠見糺が太陽系から消えてから、あらゆる開拓星、開発プロジェクト、ちょっとした都市計画までが何らかの問題を抱えてしまっている……
楠見のいた時点までは正常に進んできたプロジェクトまでが幸運の女神に見放されたように頓挫しかかっているのが現状である。
長官は、ため息とと共に言った。

「はあ……やはり銀河系レベルのトラブルバスターは運命そのものが放っておかないということかね。こんな小さな太陽系くらいじゃ、あの男の活躍の場は狭すぎたってことだ……」

ドタバタ、七転八倒、アタフタ。
どんな言葉も当てはまらないほど濃密な情報と会議と声明と同盟の日々が続くかと思われた太陽系、その中心は、やはり地球。

不定形生命体の遭難者(地球への移住者になるのか?)の捜索に関しては、あっという間に見つかった。
ペンネームで書いているSF作家にして未来文明や未来兵器、未知の生命体に関する著書もあったりする高名な文化人その人が、その遭難してた不定形生命体。
不定形生命体の捜索ということで、その問題に関して専門家たちを揃えてみたら、その中に当の本人がいたという、これまた「なんじゃこのコメディは?」な結果が待っていた。

遭難してからの経過を当人に聞いてみたら実は遭難したのはアメリカ大陸で一九世紀の終わり頃らしい。
それから変身能力を使いアメリカの市民として暮らしていたのだそうだが、あまりの境遇の違いに次第に落ち込んで同じような境遇にある一人の作家と知り合いになり、そして友人になったのだそうだ。
その友人に自分たちの種族の歴史(宇宙が晴れた直後に近い時期からの、とんでもない歴史を持つ生命体で本来は不定形、 どんなものにでもなれる等など)を少し話してやると、その作家はインスピレーションを得たのか宇宙には正義も悪もなく、ただ絶対者に近い生命体だけが世界の裏側から全ての生命体の運命を操っているというストーリーをぶちあげてしまった。
その神の如き生命体の走狗として不定形の生命体を登場させ、宇宙からの恐怖シリーズとして変な、 偏った、偏見に満ちた神話を作り上げてしまい、その作家に幻滅した不定形生命体の本人はアメリカ大陸を離れてアジアへ来たのだそうだ。
中国本土や上海、台湾を経由して終戦後の日本へ来たのだそうだが、そこでもSF好きな漫画家や作家たちとの交流が始まったという。

彼は日本が大好きになり、そこで終生、寿命の終わりまで暮らそうと決め、完全に帰化して日本人となったそうだ。
彼の知識は、その当時、食べるものすら事欠く日本においてSF好きな人間たちに格好のネタ元として迎えられた。
あるものは彼の話から不定形生命体を正義の陣営と仮定し、主人公と共に大活躍するSF漫画を描くこととなる。
あるものは不定形生命体に伝わる昔話(神話?)にネタを取り、この宇宙すら超える精神生命体(無限の命を持つ、この宇宙より長く生きる生命体)を主人公とする大長編漫画を描くこととなる。
SF作家の卵達は彼に刺激を受け様々なSF小説や幻想作品、アニメーションや映画にも才能を発揮させて行く事となる。
彼そのものは数千年の寿命を持つものだから定期的に死亡届を出して、自分自身を、その息子という形で永らえさせてきたらしい。
さすがに太陽系統一政府が出来上がった時には、やり方を変えて、それでも地球の日本に住み続けている現状は、さすがというしかないが。

彼は、そのような環境にあったため故郷が危ないという通信は受け取っていたが帰還はかなわなかったのだそうだ。
同胞と久々に会えたことには喜んでいたが彼は精神も地球人(日本人?)に馴染んでおり 本来は不定形の身体も現在では日本人として固定されてしまっているようだ。
同胞らとの話だと身体の固定化はすぐに解除可能だそうだが本人が望んでいないとのこと。
不定形生命体種族としての外交官に任命されて商館が地球にできることが決定したため、そのまま地球に残ることにしたという……

「面白い状況になったもんだ」

とは地球人にして不定形生命体の彼が今の境遇について語った一言。
 機械生命体と、太陽系人類と同じ先史文明人を祖先に持つ惑星人(発音不可能)そして同じく先史文明人を祖とする球状生命体は連帯して外交官を出し、商館も同じく合同で作るそうである(機械生命体は火星と月へ。惑星人に関しては地球上に。球状生命体はスペースコロニーを独自に作り、そこを商館とするとのこと)
それから数十年と言う時間が流れ……
今や銀河のド田舎であった太陽系は銀河中心部の文明と銀河辺境部の文明とを結ぶ巨大なハブ宙域と化していた。
巨大な観光船や資源運搬船、使節や外交官、探査隊やら宇宙救助隊(組織が立ち上がった初期とは違い、とてつもない巨大な救助組織となっている。もうすぐ汎銀河救助隊と名を変えるそうである)の船舶が、とんでもない数を揃えて銀河辺境部へのジャンプサークルの前に並んでいる。

昔、太陽系の中だけで繁栄してたと思ってた人類は、とある個人が銀河系で大活躍したために宇宙中の関心を惹き、一挙に恒星系文明へと発展していった。
恒星系へと活躍の場を広げた人類は、そこで独自の才能を発揮する。
それまでは超光速を可能とするためには個々の艦船で跳躍(超空間を石切りしていくように飛ぶ)するしかないということで効率もクソもあったもんじゃなかったのだが太陽系人類は、とんでもないアイデアを実現してしまった。
それが今、大艦隊というべき艦船の目の前にある「ジャンプサークル」装置である。
要はアステロイドベルトに設置されていた「圧縮空間ゲート」の応用。

このポイント間の航路なら絶対安全!
というポイントを圧縮空間で結び、跳躍の効率と安全性を今までより遥かに高めた技術であり、この技術と理論を開発した太陽系人類には、とてつもない栄誉と利益、そして尽きることのない仕事が待っていた。
(銀河系に、いくつ生命体の住む星があると思う?その全てにジャンプサークルを設置するとなると、もう気が遠くなるほどの数と時間がかかるよね。でもって、この技術を一番長く使って、実用化して保守手順まで確立してる太陽系人類が引く手あまたとなるわけだ)

太陽系にあるジャンプサークルは、いまのところ銀河系で最大のものだと言われる。
これ以上は何かのブレークスルー条件がないと建造できない。
この装置により太陽系からは数千隻の大小艦船が一挙に各自の目的地に向かうことが出来るのである(通常は百隻までが限度。目的地数も限定される)
昔日を思い、苦笑する元戦略宇宙軍長官。

「わずか数十年で、この違いか。太陽系を開拓するのは数百年かかるとか言われていたのは何だったのかな?それもこれも全てが、たった一人の男から始まったことだとはなぁ……楠見糺、今は何処で何してるのやら…… 噂によると宇宙船とはとても言えない直径5千mを超えるような超巨大宇宙船を、どういう技術か知らないが手足のごとく軽々と飛ばしているとのこと。我が太陽系文明どころか銀河系にある概知の文明を遥かに凌駕している宇宙船を何処で手に入れて、どうやって動かしているのやら。ものすごい数の小型宇宙艇を駆使してトラブルと聞けば何でも何処でも何時でも介入し、そのほとんどを、あっと言う間に解決し続けている奴。彼のおかげで太陽系はビッグネームと化し、地球人とか太陽系人類とか言うだけで見も知らぬ星でVIP扱いされすぎて困ると民間から見当違いの苦情まで来ている……くっくっく、あはははは!あの男には銀河系ですら狭いのかもな……ははははは!」

今日も太陽系は熱気と艦船、生命体で溢れかえっている。
ただ、そこにいる皆が一目でも会いたいと望む人物は今も宇宙の一画でトラブル解決に走り回っていたりするのだが……

その頃……
こちら&&%%78星。
フロンティアチームの介入を受けて後は機械生命体とタンパク質生命体の融和推進を色々と推し進める政策がとられている星になっていた。
もちろん、星系そのものも機械生命体との合同開発事業により、ものすごい速さで開発や開拓が推し進められている。
あのフロンティアに救助された青年兵士も今では星系内でのテラフォーミング(?&&%%フォーミング化というか)を進める計画のリーダーとなっている。

「さて、第4惑星の衛星については、これで居住区設置と大気生成の目処がついたな。次は、より主星に近い第3惑星と、その衛星2つだ。これについては、かなり高い大気温度が問題となる。そこで、ここは我々と機械生命体との合同作業でやりたいと思うが、どうだ?」

発言は、あの元青年兵士。
もう機械生命体への恨みもきれいさっぱり忘れて今では開発や開拓事業に欠かせないパートナーとして機械生命体を見ている。
まあ、そうしなければ、いつまで経っても自分の星の文明程度が上がっていかないという事実もあったりするが……

「反対意見がなければ、さっそくチームを組んで計画に取り掛かりたいと思う。今回は機械生命体の中でもエリートと言われるドーザーチームが応援にきてくれているぞ。この計画、なんとしてでも10年以内に達成するぞーっ!」

おーっ!
と気勢を上げている。
機械生命体の中でも、このドーザーチームは開発初期段階では引っ張りだこの人気チーム。
何と言っても暑さ寒さはもちろん、アンモニアが降り積もった惑星や、鉛や錫が溶けて湖になった惑星でも、ほぼ自由に動ける行動力が人気の的!
このチームが入った開発計画は99%以上が成功しているというから、まさに土木計画の救世主。
しかし、このチームの一部は新しい発想で作られた宇宙救助隊へ引きぬかれてしまっている。

この、救助要請があれば、どんな環境の星や地域でも、それこそブラックホールの中でもない限り迅速に救助に駆けつけるという、まさに宇宙法の精神を体現した組織である。
どうやら、この組織の原案・構成・初期の組織づくりまで、あの伝説の地球人が関わっているという話なのだが、もう太陽系とは切っても切れない間柄にある機械生命体なので、この宇宙救助隊にも初期段階から関わっているのだそうだ。
今も太陽系から技術者がやって来て数ヶ月で組み立ててしまったジャンプサークルが巨大な円を描いて星系内に存在している。
&&%%78星では、ちょうどジャンプサークルが太陽と重なるときに、このサークルが太陽を包み込むようにスッポリと嵌るように見えるため太陽のリングという観光時期が数年ごとにやってくる。
このように見えるのは概知の文明でもまれな位置関係にあるため、けっこう人気の観光スポットになるとのこと。
数年に一度というのもレア感を増す要因なのだそうで。

そうそう、その機械生命体文明であるが、その頑健さと個体寿命の長さにより、 銀河文明共同体(ゆくゆくは、銀河連盟となる予定)の中でも確固たる地位を占めている。
ただし、種族の生い立ちからか、あちらこちらと発見されるようになったタンパク質生命体の星に、やたらと興味を抱き、真っ先に訪問する癖があるようだ。
そうして、必ずと言っていいほど落胆して帰ってくるのだそうで。

銀河文明共同体の他の種族が、どうしてそんな事をしてまで真っ先にタンパク質生命体を探しているのか? 
と疑問を呈すると機械生命体の評議員は、さも当然の事とばかりに言った。

「我々が先史文明人の痕跡を探しているからです。ああ、あの地球人の方さえ我が星に来てくれれば、こんな苦労はしなくても良いのですが。先祖帰りは2度は起きないのでしょうかねぇ……」

彼らが恋焦がれているとも言える当の地球人本人は、とてもじゃないが御免こうむる!
とばかりに機械生命体の支配宙域を巧妙に避けて行動している……

また、その頃。

「ついに!ついに出来たか!血漿の粉末化!」

雄叫びというか、叫びを上げているのは球状生命体、昔は吸血生命体と言われて様々な異星種族から蔑まれていた者達の代表。
通常のタンパク質生命体(いわゆる人類ね)から、かけ離れてしまった進化をしてしまい、その進化の途中で固形物を食する事が不可能となり、肉体の維持のためには他のタンパク質生命体の血液を吸わねばならないという、一種の呪いのような事態に陥っていた。

種族の代表者(数十年で交代する選挙制)達は様々な実験や試みでなんとか通常の栄養補給が出来ないものかと世代を越えて試行錯誤していた。
が、うまくいかない。
大衆は強固な星間帝国体制を作り上げて、球状生命体が頂上に君臨すれば表面上は食生活に文句を言う奴もいなくなるだろうと考え、それを代表者に要求する。
ある程度は拒否してきた代表者たちだが、ある時期の代表者が大衆に迎合してしまい星間帝国のようなものを作ってしまう。
その星間帝国の中で犠牲者となる種族を探そうと思ったのだが、どうも適当な血液(つまり美味い血)を持つ種族がいないことに怒り心頭の球状生命体は、その頃に見つかった星間帝国から離れてはいるが高度な技術と穏やかな精神性を持つ不定形生命体に高圧的な態度に出る。

「おのれらが把握しとる星間文明の中でタンパク質生命体がいる星のリストを寄越せ!んでもって、わしらの星間帝国の一員となってタンパク質生命体探しに(つまりはエサ探し)に協力せぇや!断ったら耳の穴から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタ言わすぞォ!」

このように(文言は違うが)脅したわけである。
もちろん吸血するから被害者リスト寄越せ!なんて言われて不定形生命体が「はい、わかりました」などと了承するわきゃない。
とはいえ球状生命体も不定形生命体を全滅させたいわけじゃない。

全滅スレスレの事態に追い込んで数千年も経てば、さすがに白旗上げるだろう。
とのことで太陽制御装置を不定形生命体の主星に打ち込んで、主星の直径を数千倍にする。
しかし球状生命体種族の誤算が、この後、判明。
不定形生命体は千年経っても二千年経っても音を上げなかった……
そのうち球状生命体も代表者が交代し、穏健派が主流となると帝国制は廃止され、現在のような連盟を組む星系政治の体制となる。
この時から過去の攻撃的な政治体制が批判の対象となるが、もうその頃には太陽制御装置は不定形生命体の主星の中深く入っていて、球状生命体の科学技術でも取り出しと無効化は無理だった。
批判の嵐にさらされる球状生命体達だったが、自分たちの非道な行いの結果を見せつけられているので何も言えない。
どうにかしないといけない過去の過ちだったが今となってはどうしようもないと、ついに諦めかけたその時!

朗報が入った。
何と、名前すら聞いたことのない地球人(太陽系という星系らしい)というタンパク質生命体が操る超巨大宇宙船が介入し不定形生命体の主星に打ち込まれた太陽制御装置を取り出し無効化したという。
その後、球状生命体の支配星系に向かっていると聞く。
自分たちが何も出来ずに見放す寸前だった状況を、いとも簡単にひっくり返してしまった地球人という謎の種族と、見たこともない超巨大宇宙船が向かってくる。
球状生命体は全滅もあるな。
あのような理不尽な種族全滅を目論んだ邪悪な生命体種族と断じられても文句は言えないからであり、自分たちの手も足も出ない技術力を見せつけられてしまってもいるから。
地球人が本気になって怒れば、我々は全滅のカウントダウンを見ることになるかも。
そのように球状生命体の代表者は諦めの気持ちで思っていた。

ところが!
実際に来た超巨大宇宙船に乗っていた地球人(その船の船長らしい)の提案と推論、そして我が種族との簡単な問答により驚愕の事実が判明する。
我々、球状生命体と地球人との相関関係(先祖が同じで球状生命体のほうが変異して今の種族形状になってしまった。
血液としては地球人のほうが先祖のオリジナルに近く、我が種族にとって「ひじょうに美味い」血液であること)から吸血という「後ろ指を指される」行為を少なくとも非常に短期で通常の食料摂取と同じような行為に出来ること、そして近い将来、吸血行為そのものを中止することが可能だということが予想されるとのこと。
これが、いかに球状生命体にとり救いの一言となったかは今更、述べるまでもない。

で、最初に戻るが、ついに今まで液体状であった血液パックを血漿粉末にする事が成功する。
これで栄養補給時のみ粉末血漿を水分パックに溶かすだけで良い、夢のような食事環境が実現する。

まあ、これを発展させてカプセル一個飲めば良いだけにすることも将来は可能となるだろう。
こんなわけで我が種族はもうタンパク質生命体を探して星系から星系へと犠牲者探しをすることもなく、現在では他種族の探索はしているが、それも文明発展の手助けをするためと目標が変化した。
目標が変化すると、こちらも攻撃的な探査や強引な交渉など行うはずもなく、他種族との非常に良い関係を作り出せるようになる。

おまけに我が種族の恩人である太陽系文明、特に地球人や火星人は特異な種族だったらしく恒星系文明になって数年で今までの跳躍航法の効率と安全性を飛躍的に高める技術装置を考案する(これは今でも他種族の語りぐさとなる。惑星内の文明から、こんなに一挙に恒星間文明に発展し、なおかつ、とてつもない技術的貢献を成し遂げてしまった生命体や文明は、未だかつて存在しない。もしかして先史文明の遺伝子を色濃く引き継いでいるのは実は太陽系文明なのかも知れない)

我々、球状生命体は今日も宇宙を飛び回り、発展段階が遅れている文明があれば手助けし、窮状にある生命体集団があれば助けていく。
こんなもの、あの地球人に貰った恩恵に比べれば微々たるもの……

今日も宇宙空間は人情と優しさに満ちている……
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戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

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