ようこそ大宇宙へ! 超古代の巨大宇宙船で宇宙を征く

稲葉小僧

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第五章 超銀河団を渡るトラブルバスター

第59話 消えた銀河の謎

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ガルガンチュアは銀河間空間を跳躍していた。
今までいた銀河は目標である隣の銀河とはえらく離れていて、通常の銀河間の距離とは違っていた。

「今回、えらく長いこと跳んでるな。そんなに離れてるのか?隣の銀河なのに」

「あ、マスター。奇妙なんですよね、この距離。まるで、もう一つ銀河があったのに、それが消えてしまったかのような銀河間距離なんですよ」

「銀河がまるまる一つ消えたようだって?うーん……銀河そのものを食い荒らす生命体も過去にはいたんだが、丸々一つの銀河を消すほどの力を持つ生命体あるいは存在ってのは、どんなものなんだろうな?」

「さあ?私のデータでも精神生命体が関わらない限り、こんな事態は起きないのではないかと思うのですが……」

ガルガンチュアが跳ぶ航路上には銀河の残骸すら残っていない。
まるで何かの存在あるいは、何かとてつもない兵器で銀河そのものが消え去ってしまったような気がする。

「まあ、今は気にしても仕方がない。センサーの感度を最大にしつつ慎重に跳ぶしかないのが現状だ、頼むぞフロンティア」

「了解です、マスター。とは言うものの、そこまで危険な存在や兵器があるとは思えないんですが……巡航速度から半分に落として慎重に跳ぶとしましょう」

跳躍距離と間隔を緩やかにしながらも、そこは超巨大宇宙船のガルガンチュア、目標銀河は確実に近づいてくる。

「よし、銀河の縁から充分に離れている、このへんでガルガンチュアを停泊させよう。でもって、毎度のことながら情報収集だ。超小型と小型の搭載艇を放出!この銀河の情報を、もれなく収集しろ!」

ガルガンチュアの巨大な全体像が隠れるくらい、ぶわっと黒い雲が湧いた。
数秒の後、その巨体の周辺に動くものはいなくなる。

「さて、これから数ヶ月、情報収集と分析だ。皆、特にロボット諸君、期待するぞ」

「「「「「はい、了解」」」」」

5体揃って、声を揃えて返事。

半年後、通常より長期間の情報収集も終わり、その結果報告会。

「マスター、情報の精査と検証が終了しました。その結果、やはり、この銀河の隣には数万年前まで小銀河が存在していたようです。それがある時、突然に消えてしまったようで。ちなみに、この銀河で作られているギャラクシーマップには隣接銀河として、その小銀河が描かれていますね。まだまだ、光の情報としては隣接銀河が見えているのでしょう」

「総括報告ありがとう、フロンティア。やはりか……しかし、その小銀河、どんな理由で消えてしまったのやら……そんなことのできる存在、または兵器があるとすると、どんな恐ろしいものになるのか、少し想像しただけでも恐怖だな。このガルガンチュアすら、その存在または兵器と対峙したら危ないかも知れないぞ」

「主、提案がある。小銀河のあるはずだったポイントを通過している時、フロンティアやフィーアの空間センサーがデータを収集していたはずだな。少し時間はかかるだろうが、それを調査・精査させて欲しい。小さいとは言え一個の銀河が丸ごと消えるなど大事件だ。その空間や空間構造に何かの跡……消滅痕のようなものが残っている可能性は高いだろう」

ガレリアの提案により、ガルガンチュアの停泊と実地調査も決定する。
センサーの収集した膨大なデータ、そして、ガルガンチュアの放つ現在の銀河間空間調査に跳ぶ搭載挺集団(超小型と小型合わせて1万隻近く。これでも全搭載艇の一割も使っていない)からの現場データの収拾が始まった。

「目標の銀河への到着は遅れるが、まあ大した遅れにはならないだろう。それよりも小銀河が消えた謎を解明しなければ」

楠見は、いつになく真剣な表情で呟く。
事と次第によったらガルガンチュアも危険になるかも知れない……
そんな思いが渦巻く。

調査とデータ解析に一年以上かかった。
ガルガンチュアほどの超高性能人工頭脳集団にとっても、この銀河消失事件は難問だったようだ。

「マスター、ようやく全データの精査と5人の推測が出尽くして議論の末に結論が出ました……これは技術的に銀河を消した、と言うか数秒先の未来空間へ銀河ごと飛ばしたという方が正しいのかと」

はぁ?
銀河ごと未来へ飛ばした?

「どういう意味だ?小さいとは言え銀河だぞ。巨大と言うか何と言うか、そんなもの未来へ飛ばすって……まあ、ガルガンチュアの性能を使えば可能かも知れないな。フロンティアの主砲なら小さな銀河なら丸々、主砲の有効範囲に入るかも知れないが」

「いいえ、マスター。私の主砲でも、さすがに銀河を丸々一つ、主砲で時空間凍結することは不可能です。まあ、今の船の規模を100倍くらいにすれば何とか可能になるかも知れませんが……エネルギー的には充分なんですけどね。主砲を撃つ土台となる船が小さすぎます」

おいおい、理論的には可能なのかよ。
しかし、時空間凍結までなんだよなぁ……
あ、そうか。
兵器だから凍結まですれば良いわけか。
未来へ送るなんて事は不要なんだ。

「エネルギー的には可能、ね。そうすると未来の時間へ送られた銀河には、そのまま生命体が住んでるわけだ」

「はい、マスター。数万年前には目の前の銀河より消えた銀河へ侵略軍が送られていたそうです。今では攻撃衝動も鎮まり、温和な種族となっているようですが。その侵略は相当に激しかったようで幾多の星系が消滅させられたり星系全ての原住生物が絶滅させられたりしたようで。抵抗するよりも逃走を選んだのが消えた銀河の生物たちの手段だったのでしょう」

「そうか……あれ?そうすると、おかしな点があるぞ。数万年にも渡って一つの銀河を未来へ送る技術手段があったとしても、それを支えるエネルギーは、どこから採取してる?それから、もう一つ。完全に今の時空と接触を断ってしまったら元に戻れないだろう。何処かに時空的につなぎ留めているポイントがあるんじゃないか?どうだ、フロンティア」

「マスター、素晴らしい推論です。巧妙に隠されているとは思いますが、この時空からのエネルギー供給ポイントと、時空的につなぎ留めているポイントは今でも残っていると思います……数ヶ月ほどかかるかとは思いますが元の銀河があったと思われる地点を虱潰しに捜索すれば発見は可能かと」

「よし、それじゃ、方針変更。巧妙にステルスされているとは思うが搭載艇全機でローラー作戦。絶対に発見しろよ。ただし発見しても何もするな。ポイントが見つかったら、そこから交渉団を送り込んで話し合う必要があるからな。こちらから向こうを刺激する必要はない」

そこからは、またもや報告待ち。
しかし、搭載艇の全機出動って、あんな凄い光景となるとは知らなかった。
フロンティアだけでも搭載艇母艦に積まれた大型、中型、小型、超小型の搭載艇は母艦一つで三千機を超える。
フロンティアには郷の超大型搭載艇母艦を始めとして搭載艇母艦が十隻以上ある。
他にも中型、小型は大型搭載艇に数百機単位で積まれているのだ。
それが単純計算で四倍近いものとなると……
俺は意識的に考えるのを止めた。

「どう考えてもガルガンチュア一つで銀河単位の軍相手に戦って主砲使わずに瞬殺できるよなぁ……どれだけの攻撃力を持っているのやら……」

楠見は今更ながら馬鹿げた攻撃力を持つ超大型宇宙船のマスターとなったことに考えが及び、背筋が寒くなるのだった。


さて、いったん通常の時間と宇宙を離れて、こちらは未来へ跳んでいる小銀河の中心部付近。
小惑星に設置された巨大なコントロール装置の前で何やら会議が行われている。

「議長、私は、そろそろ通常宇宙へ復帰すべきときではないかと思います。ですので、この未来逃避計画の中止と、そのエネルギーの他分野供与を提案します」

「議員の議案提出を許可します。この議案について何か意見のある方は?」

「議長!私は今現在、元の宇宙へ戻っても退避する前の侵略に怯えることがない明確な資料とデータの提出を要求するものです!議員は、その証拠を何も提出しておりません!」

「今の意見に対し証拠となる資料やデータの提出を求めます。議員、資料とデータを、こちらへ……ふむ、よろしいでしょう。では、これを会議場にいる全員分コピーして、それから議案の討論に移りましょうか……」

このところ、ほぼ毎日のように繰り返される議案と、その討論であることは皆も理解している。
元の宇宙へ帰りたいのは誰も一緒の思いだが、数万年前に受けた大侵略と、その悲惨さを未だに忘れることが出来ない者が大多数のため、こんな事になっている。

ちなみに彼らは純粋なタンパク質生命体ではない。
かと言ってロボット種族や機械生命体のような無機物で出来ているわけでもない。
彼らはサイボーグ種族である。
若い頃は生身の肉体で過ごし、老境に入る頃には少しづつ、あっちの臓器、こっちの手足、などと機械部品で補っていく。
ちなみにクローン臓器移植の技術もあるが、これだと若い臓器を老いた肉体に移植する場合、元の肉体が若すぎる臓器に引っ張られてしまい、元の肉体に無理な負荷をかけることにもなるので、中年少し後までの年齢までしかクローン臓器移植は推奨されない。

最初期には機械臓器の巨大さが邪魔をしてベッドから動けない状態となる患者が急増したが技術の進歩は早かった。
数年後にはガラガラと引きずって歩ける代替肝臓や持ち歩ける代替腎臓などと見る間に性能アップと小型化が進み、今では移植にも手間のかからない、移植前臓器と同じサイズまで小型化されて普通に一般人と同様にサイボーグたちも社会に出ている。
特殊な用途(犯罪者対応や肉体労働特化)のサイボーグたちも存在するが人間離れした力や速力を持つもの、飛行可能なボディを持つものは、ごく少数。
それとも言うのも、そんな大量生産に向かないものは超高価になるため(当然の話)
特殊用途なら産業用に大量生産されているロボットを使えば良いだけの話で生身のパーツを持つものは過酷な現場には出向かないほうが良い。
それでなくとも老化した生体。
そういった現場には若い者たちが勤めて、老成した者たちは頭脳労働方面で社会に貢献している。

この会議室というか研究室を兼ねているが、ここは小銀河を時間的にリアル宇宙と隔てている超技術を可能としたエネルギー源、銀河の中心部にあるブラックホールをエネルギー源とする、言わば銀河のメインエンジンのコントロールルーム。
さすがに誰でも入室可能なわけじゃないところで、秘密会議のように開催されているのには理由がある。

未来宇宙へ引きこもって数万年、さすがに、この銀河に住む者たちに飽きが来ている……
というか隣接する銀河から来る侵略者さえいなきゃ、すぐにでもリアル宇宙に帰りたいという不満が大規模なデモとして起きるくらいには民衆に不満が溜まっていた。

【いいかげん、我々にリアル宇宙の現状を報告しろ!】

とか、

【政府は今すぐに住民投票を開始し、リアル宇宙への復帰を望む民衆の声に応えろ!】

などというプラカードを掲げているのが見えるほど引きこもりには、もういい加減うんざりだと思っているようだ。

「もうすぐリアル宇宙の定期偵察隊が戻ってきます。それの報告を待ってからでも良いのではありますまいか」

という、これもお定まりの結論に落ち着いた会議は、あいも変わらずグダグダと長引いて終了した。
数日後、定期偵察が終了した部隊がリアル宇宙から帰ってくる時間。

「え?何だ、あの球形船は。議長!知らない種類の宇宙船が偵察部隊と一緒に帰ってきました!」

小銀河に、ざわめきが走る……

…………
………………
その部屋を沈黙が支配している。
沈黙に耐えきれないのか、ため息と共に一人の人物が話し始める。

「リアル宇宙の現状を詳細に説明していただき、心より感謝する。しかし、我々が未来へ逃避した理由をご理解いただきたい。虐殺と略奪、そして、生まれた星すら容赦なく破壊する侵略者たちの侵攻を阻止することも出来ず、銀河の周辺部を犠牲にしながらも未来へ逃げることしか出来なかった当時の我々は、悲惨な光景を遺伝子にまで深く刻みすぎたのだ。確かに今現在、リアル宇宙に戻るべきだと考える者たちもいる。いるが、それは、まだまだごく一部の者たちなのだ。我々は恐ろしいのだ……数万年前に受けた先祖の衝撃的光景を忘れられない我々は引きこもった部屋から出られないのだと白状する……」

楠見は万年単位というあまりに長い逃避、引きこもりの原因が分かり一安心と共に根の深さも理解する。

「理解は出来ましたが、この銀河の特殊性故のことだったとは……あなた方は種族全てがテレパスだったんですね。それも、ずいぶんと強力な」

「そうだ、その通り。だから、あなたのような超強力なテレパスだと我々にとっては蛾の集団が巨大な炎に惹かれるように吸い付けられるのだ。まあ、あなたの精神が邪悪なものではないので我々が精神的に染まることもないのが幸いなことではある」

はぁ……
楠見は頭を抱える。
こんな大規模な逃避、種族どころか銀河単位で引きこもりという、そもそもの原因が、その当時の先祖たちが受けたトラウマが残留思念(一種、幽霊のような形だと考えると分かりやすい)として種族全体に染み付いた、というか残留思念に取り憑かれてしまった犠牲者と言うか……
まあ、そんな思念に取り憑かれたまま数万年という長い時間、未来という逃避ポイントで暮らしてたわけだ。

「どうします?今現在、宇宙は平和になってますよ。ちょっとした勇気を出せば、ここから出て、お隣の銀河に住む方たちとも友人になれるはずです。確かに数万年前には侵略者でしたが今では友好的になり、帝国制から共和制を経て今は緩い連邦制を敷いていますので、あなた達が申し出るなら相手からの謝罪も可能です。しかし……まだ、ここから出る踏ん切りがつきませんか?」

うーむむむ……
し、しかしなぁ……

本音を言えば、そろそろ引きこもり状態から脱却したい。
しかし、それを実行するには、あまりに心に植え付けられてしまったイメージが強すぎ、この「ぼっち」状態が心地よくもあり、今一、踏ん切りがつかない。

「うーん……困った状況になりましたよね。そうだ、提案があるんですが、いかがでしょう?」

「提案?強制的にリアル宇宙に戻されるのなら、それは我々の意思を無視するということだが?」

「いえいえ、そこまでの強硬策ではありません。あくまで今のところアイデアだけなんで、私のベースとなっているガルガンチュアへ戻って、他の者たちと相談することになります。上手く行くかどうか実現可能かどうかも分からない次元ですが、どうです?自分たちが知らないうちにリアル宇宙へ戻っていたとしたら?」

「まあ、ショックを受ける者たちもいるだろうが、その時には時間転送装置の故障と説明すれば良いだろう。その故障が長く続くと説明すればリアル宇宙に留まり続けても不思議ではないだろうが……そんなことが可能かね?」

「あくまで今の段階ではアイデアなんですけど。まあ星系一個と、いくら小さいとは言え銀河一個丸々とは比べ物になりませんが、星系までなら銀河間どころか超銀河団を移動させた実績もあるんでね」

「何だと?一つの星系ごと超銀河団を渡ったというのか?とても信じられんが……まあ信じるとしよう。それで解決策とやら、いつ頃になれば実施できるのかね?」

「うーん……こればかりは……未だ、やったことのないレベルですので。ただ、実行不可能ではないと言っておきましょう。今回は、ここでリアル宇宙へ帰りますが、そう遠い未来のことじゃないと思いますよ」

「すまんな、我々の意思と言うか、祖先の引きこもりの意思が強すぎる。我々だけでは自由意志でここを引き払うことも決定できんのだ」

期待を込めた眼差しで俺達を見てくる。
まあ、なんとかしてやらなきゃ。

という事でリアル宇宙へ戻ってきた俺達は、全てのクルーを集めて技術上の問題点を考えている。
様々な問題点と解決策が示されていく……
俺達はガルガンチュア内で一つの銀河を未来から現在へ戻す計画を検討していた。

「マスター、理論的には可能だと思われます……とは言うものの、以前にも言いました通り、そのためには私の主砲、時空間凍結砲を、現在の状態よりも、しっかりと固定しなければなりません。目標を銀河サイズとするのなら、一つの星系サイズとまでは行かなくても良いでしょうが……船と計算してみましたが、今の約100倍ほど、つまり、標準的な恒星一個ほどの大きさが必要となりますね」

「主、今からフロンティアや他の船たちを大きくするのは、とてつもない時間がかかるぞ」

ふーむ……
大きさと言うか……

「フロンティア、ちょいと計算してみてくれ。比較的大きな中性子星だったら、その仮アンカーとならないか?」

頭脳体は、少し時間がかかったが答えを出す。

「マスター、大丈夫だと船は判断します。でも中性子星など何処に?」

ふっふっふ、その質問はなぁ。

「フロンティア、俺達のすぐ傍に銀河があるよな。その銀河にある中性子星を利用させてもらおうじゃないか。数万年前の先祖の業を解消するんだと言えば向こうも嫌とは言えなくなる」

「マ、マスター……また黒い笑顔を……」

「うわぁ、師匠がトリックスターの顔を出したぁ」

フロンティア、郷、お前らなぁ……

「ふん、放っとけ。今は善人の顔を見せても話が進まない。それなら、罪を償えって迫っても良いのじゃないか?」

「師匠、真面目な顔で怖い話を……まあ言ってることは間違っちゃいないですが……」

「決まったな。お隣の銀河代表と腹を割って話すぞ」

数日後、ガルガンチュアの銀河内航行許可と一定期間の某中性子星(近傍空間含む)の貸与が決まった。
銀河代表は最初、どんな代償を要求するかと内心ワクワクしていたが終盤は意気消沈。
まあ、それほどに楠見の脅迫まがいの提案が真に迫っていたからでもあるが(内容は秘匿。お互いのためだ)

「ガルガンチュア、重力アンカー発射!ガッチリと固定しろよ。何しろ獲物がでかすぎるんだからな」

「重力アンカー、固定完了!合計16本、全て中性子星に打ち込まれました。これで、ガルガンチュアの見かけの重さは太陽の約10倍です。エネルギー容量が違うので中性子星に落ちてしまうことはないですが普通の宇宙船なら無謀だと言われる行為ですね、師匠」

「いやいや、郷君。ガルガンチュアの力は、こんなもんじゃない。見てろ、今から俺も見たことのない、ガルガンチュアの中でも特殊なフロンティアの主砲、時空間凍結砲が全力発射される光景が見られるんだから」

「え?!主砲の全力発射?そ、そんなことやって大丈夫なんですか?いくら巨大な銀河とは言え数京人単位の生命体が住んでるんですよ?」

「その点は心配ない。フロンティアに計算してもらったら、時間の差を越えるには主砲の全力発射が必要だと結論が出たらしいから、この事態になっただけ」

「ま、まあ、それなら安心でしょうが。まあしかし、数秒の未来へ主砲を撃つってのも信じられんが……」

「用意は出来たんで未来宇宙へ行ってくる。今回は俺一人で大丈夫だろう。皆は計画実行の最終準備をしておいてくれ」

さあ、引きこもりから引きずり出してやるとするか!

「……と言うことで、こちらの銀河を丸々、未来の引き込もり部屋から引張り出す準備は整いました。ご注意いただきたいのは、さすがに、こちらの主砲とは言え全力発射となりますので防御シールドだけは全力で最高度の物を維持していただきたい。そうでないと元の時間に戻ってからが大変なことになる恐れがあるので」

楠見が熱弁を振るっている。

「いや、説明は理解できたんだが……今でも信じられるものではない。いくら小規模とは言え我々の住んでいる銀河ごと未来宇宙から引っ張り出してリアル宇宙へ戻すだけのエネルギー量と技術が。君ら一体何者?」

銀河政府代表が今更ながらの質問をする。

「あれ?説明してませんでしたっけ?我々、宇宙船ガルガンチュアは、この銀河でも隣の銀河の出身でもありません。この銀河が所属している銀河団、その銀河団が所属している超銀河団も超えた先の、別の超銀河団にある銀河からやってきたんです。エネルギー量としては、この銀河を軽く吹き飛ばせるくらいは持っていると思ってください。それと、今まで我々は平和と安心、安全な宇宙を作り上げるために活動してきました。この作戦も、その一環と思ってください」

言われた銀河政府代表、開いた口が塞がらない。
侵略者なら、まだ理解できる……
全く知らぬ星、銀河、銀河団、超銀河団と渡る理由が、平和と安心、安全な宇宙を作りたいからだと?!
もう、狂っているとか言われたほうが理解可能なのでは?
銀河政府代表は目の前の存在が、自分が全く理解不能な存在であることに気が付き、一抹の不安と、それにも増して大きな信頼を抱く。

「よし、決断しようじゃないか。我々は、この未来宇宙を出てリアル宇宙へ戻る!眼の前にいる神の如き存在が大丈夫だと言ってくれてるんだ。信用しようじゃないか」

数時間後、楠見はガルガンチュアへ戻り、計画の実行を告げる。

「よし、ガルガンチュア、全エネルギーをフロンティアへ集中!重力アンカーを維持する分だけ残してフロンティア主砲へ回せ!フロンティア、主砲発射準備だ」

「了解です、マスター。おお、ついに、ついに念願の全力主砲発射が実現する!エネルギー集積、40%です。あと10分で発射可能となります。発射可能となりましたら、トリガーをマスターにお渡ししますので、トリガーを引いてください。さすがに主砲の全力発射は船だけの判断では実行できませんので」

「お、そうか。さすがにフェイルセーフが機能するか。よし、了解。フロンティア以外は主砲発射の衝撃に備えて重力アンカーの強度チェックをしててくれ」

刻々と時間は過ぎていく。
やがて……

「マスター、エネルギー集積、100%です。主砲、時空間凍結砲、発射準備完了!トリガーを、お渡しします」

「主砲トリガー、受け取った!照準、セット……とは言うものの対象がデカすぎるんだよ、これじゃ。まあ大体の照準で良いのは助かる。では全員、注意しろ!時空間凍結砲、発射!」

楠見が小さなトリガーを引く。
今までにない衝撃が巨大なガルガンチュアに走る!

「おいおい、4隻もの銀河団探査船が合体していながら、この衝撃か。恐ろしい威力だな。あ、黒い塊が目標銀河のポイントへ走っていくぞ。さすがに時間はかかるか……」

「マスター、主砲エネルギーの目標到着まで、およそ3時間ほどかかるようです。現在は何もない空間ですが、そこの時空間を文字通り凍結して止めてしまうため、そこに存在している時間通路からエネルギーが流入し、目標時空にある銀河を時空間凍結。自動的に未来へ繋ぎ止めているエネルギーも無効化されるため目標ポイントに銀河が出現する予定です」

さて、そういうことなら、こちらは一休みさせてもらうとするか。

「フロンティア、銀河が未来より戻ってきたら知らせてくれ。あー、久々に緊張したよ」

「はい、マスター。ごゆっくり」

数時間後、時空の揺らぎと共に小銀河が姿を現す。
フロンティアから報告を受けて、しばらくは時空間凍結の泡を解除しないでおく。
一時間ほど経過の後、フロンティアに命じて時空間凍結泡の解除作業を始める。

結論から言うと小銀河では初期に混乱はあったものの、比較的穏やかに、このリアル宇宙への復帰を受け入れてくれた。
お隣銀河とは最初、おっかなびっくりではあったようだが、それも時が解決するかのように段々と周りの星たちを受け入れるようになる。
小銀河と隣接銀河ではガルガンチュアを大歓迎するつもりでいたのだが……

「いや、それはお断りしてます。我々にとって、これは日常作業に近いものですので、そんなことは感謝されるレベルのことじゃないんで。では、さらばです。我々には、まだまだ宇宙のトラブルが待っているので……」

あれだけのことが日常作業だと言うガルガンチュアとは……
この話は2つの銀河だけではなく近隣銀河へも伝わるが、その時には神の使いの偉業という神話めいた話になっていたという……
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