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税理士事務所から突然の拉致
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「……え!?いまから?いまからいくんですか?」
今日は私の人生で最も衝撃的な一日だった。
朝、税理士事務所に行くと、代表パートナーから呼び出された。
歯切れよくニコニコと、しかし目の奥は笑っていない彼が無理難題を職員に吹っ掛けているのを私はたびたび見ている。
彼はわたしに、空賊団のリーダーであるジャック・スカイという男と会って、彼らの会計を担当するように言った。空賊団とは、空を飛ぶ船で世界中を冒険する海賊のことだ。私は驚いて断ろうとしたが、選択肢は与えられなかった。
まるで当たり前だろう?というように代表パートナーが口を開く。
「彼ら空賊団との契約が、当事務所にとって大きな利益を生んでいるのは君も知ってるだろう?」
「大口クライアントなのはもちろん知ってますけど、私が行くのはなぜですか?資料だけもらって処理すればいいのではないですか?」
「資料がとっちらかっているらしいんだよ。なにちょっと行って整理して持って帰ってくるだけの仕事だよ」といって、メガネのふちをくいっと上げた。
私の首筋を嫌な汗が流れた。代表が嘘を言うときの癖だった。
有無を言わさないその態度に、しぶしぶ私は仕方なく、空港に向かうことにした。用意されている事務所のスーツケースに会計の七つ道具を詰め込む。
事務所を出るときの、周りの職員のかわいそうなものを見る目が不安をあおる。
空賊の飛空艇に単身乗り込むというのは、武闘派でならす男性職員だったとしても躊躇する。ましてや私が選ばれるなんて納得いかない。全く準備をしていない私は、空賊の巣に向かうというのに、上は白いスーツに、深いプリーツのロングスカートと、通常の出社の服を着ている。
飛行艇が次々と着陸しては離陸していく空港が、道中の汽車の車窓から良く見える。
あの飛行艇のどれかが当事務所の大口クライアントであるジャックのそれなのだろう。いったいどんな状況なのか、などと考えていたら空港に着いた。
指定されていた空港のポートで待っていると、突然、大きな音とともに周囲が影に包まれる。
空を見上げると、巨大な飛行艇が着陸態勢に入っている。危うく下敷きになりそうになった私は急いで逃げると、船からロープが降りてきて、それにつかまった男が軽やかに大地に降り立った。
彼は私に向かって笑って言った。
「こんにちは、私はジャック・スカイだ。君が私の税理士だね。さあ、早く乗ってくれ。君の新しい生活が始まるよ」
「はい?」私は恐怖で固まってしまった。
「あたらしい生活……?」税理士事務所の代表パートナーがメガネの端をくいっと持ち上げた瞬間を思い出した。
「これ、きみのスーツケース?ちゃんと中身入ってるの?しばらくは地上に降りないけど大丈夫?」
「え?え?もちろん今日は帰れるんですよね?」
「なにいってるの?いまから出発するんだよ!」
ジャック・スカイと名乗った長身の男は、こちらの話を聞く気もないのか笑顔で、スーツケースを奪う。
ニッコリ笑う顔は白い歯がさわやかなイケメン男子だ。これがまともな定職の男性と落ち着いた場所であっていたなら話は違うが、ここは空港、相手は空賊である。
スーツケースは、ロープにぶら下げられた。
「俺につかまって!」
「きゃー!」
そして、私の腕を掴んで、引き寄せたかと思うと、上に合図を送った。
途端に、ロープは巻き上げられ私の体は宙に舞い上がった。
私は叫んだが、誰も助けてくれなかった。私は空賊団の船に連れ去られてしまった。
今日は私の人生で最も衝撃的な一日だった。
朝、税理士事務所に行くと、代表パートナーから呼び出された。
歯切れよくニコニコと、しかし目の奥は笑っていない彼が無理難題を職員に吹っ掛けているのを私はたびたび見ている。
彼はわたしに、空賊団のリーダーであるジャック・スカイという男と会って、彼らの会計を担当するように言った。空賊団とは、空を飛ぶ船で世界中を冒険する海賊のことだ。私は驚いて断ろうとしたが、選択肢は与えられなかった。
まるで当たり前だろう?というように代表パートナーが口を開く。
「彼ら空賊団との契約が、当事務所にとって大きな利益を生んでいるのは君も知ってるだろう?」
「大口クライアントなのはもちろん知ってますけど、私が行くのはなぜですか?資料だけもらって処理すればいいのではないですか?」
「資料がとっちらかっているらしいんだよ。なにちょっと行って整理して持って帰ってくるだけの仕事だよ」といって、メガネのふちをくいっと上げた。
私の首筋を嫌な汗が流れた。代表が嘘を言うときの癖だった。
有無を言わさないその態度に、しぶしぶ私は仕方なく、空港に向かうことにした。用意されている事務所のスーツケースに会計の七つ道具を詰め込む。
事務所を出るときの、周りの職員のかわいそうなものを見る目が不安をあおる。
空賊の飛空艇に単身乗り込むというのは、武闘派でならす男性職員だったとしても躊躇する。ましてや私が選ばれるなんて納得いかない。全く準備をしていない私は、空賊の巣に向かうというのに、上は白いスーツに、深いプリーツのロングスカートと、通常の出社の服を着ている。
飛行艇が次々と着陸しては離陸していく空港が、道中の汽車の車窓から良く見える。
あの飛行艇のどれかが当事務所の大口クライアントであるジャックのそれなのだろう。いったいどんな状況なのか、などと考えていたら空港に着いた。
指定されていた空港のポートで待っていると、突然、大きな音とともに周囲が影に包まれる。
空を見上げると、巨大な飛行艇が着陸態勢に入っている。危うく下敷きになりそうになった私は急いで逃げると、船からロープが降りてきて、それにつかまった男が軽やかに大地に降り立った。
彼は私に向かって笑って言った。
「こんにちは、私はジャック・スカイだ。君が私の税理士だね。さあ、早く乗ってくれ。君の新しい生活が始まるよ」
「はい?」私は恐怖で固まってしまった。
「あたらしい生活……?」税理士事務所の代表パートナーがメガネの端をくいっと持ち上げた瞬間を思い出した。
「これ、きみのスーツケース?ちゃんと中身入ってるの?しばらくは地上に降りないけど大丈夫?」
「え?え?もちろん今日は帰れるんですよね?」
「なにいってるの?いまから出発するんだよ!」
ジャック・スカイと名乗った長身の男は、こちらの話を聞く気もないのか笑顔で、スーツケースを奪う。
ニッコリ笑う顔は白い歯がさわやかなイケメン男子だ。これがまともな定職の男性と落ち着いた場所であっていたなら話は違うが、ここは空港、相手は空賊である。
スーツケースは、ロープにぶら下げられた。
「俺につかまって!」
「きゃー!」
そして、私の腕を掴んで、引き寄せたかと思うと、上に合図を送った。
途端に、ロープは巻き上げられ私の体は宙に舞い上がった。
私は叫んだが、誰も助けてくれなかった。私は空賊団の船に連れ去られてしまった。
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