そして兄は猫になる

Ete

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ただいま

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クロはよその猫と何かが違う気がする。
猫らしくないと言うか、どこか人間臭いと言うか。
人をよく見てるって言うか…。


母は面倒を見てくれる人なので一番懐いている。
これは当たり前かな。

「スリスリは?」と母が言うと、足元に寄って来てスリスリする。
やっぱり人の言葉が分かるのか?

義姉にも夫にも擦り寄って来て、どんなにワシャワシャされても怒らない。
寝たままクルクル回されても怒らない。
やっても甘噛み程度だ。

大きな声をする人や、子ども、大勢の人が来る時はどこかに雲隠れする。
探しに行くと、いつも2階にある『兄の部屋』にいる。
母曰く、「お気に入り」の場所なのだそうだ。
兄の部屋には出窓があって、居ないなと思うといつもそこから外を眺めているらしい。


週に3日ぐらい、母を訪ねてお茶飲みにやって来るおばさんには、抱っこしてくれと自分から膝に乗っていく。
母がお世話になっている訪問看護師が来ると逃げずに近くでそれを見守る。

数年に一回程度しか帰って来ない私の従兄弟には、全く脅える様子もなく、むしろ甘えていたから不思議だ。


私には、初めは「シャーーー!」と威嚇していたが、今はスリスリと擦り寄って来る。


と見せかけて、
突然脚に噛みついて来た。

「痛ったぁああ!」
と声を出すと、逃げるでもなくさらに両手で押さえ込みに入り、猫キックをしてくる。

「痛い痛い痛い!」
怒るとダッシュでトンズラして行く。

義姉に聞くと
「甘噛みはするけどそんな事しないよぉ?」と言う。
夫も同じく。

なんで私だけ?どういうこと?

兄が私をいじめて遊んでいた時のことが思い出される。
ほんと意地悪だったなぁ。


クロは ほんと お兄そっくりだわ。


お兄そっくり…?



そう言えばお兄って…

『猫好き』

『猫舌』

『気まぐれ』

『意地悪』

『人前では良い格好しい!』

それから う~んと?


ん?
ちょっと待てよ?


クロ…黒い…猫?


ふと思い出したことがあって義姉に連絡する。

「ねぇ、お兄の姿が見えた時の『黒いシャツ』覚えてる?あれどうした?」

義姉の返事はこうだった。

「覚えてるよ。仏壇にお供えしてから…あれ?そう言えばどこへやったんだっけ?私構ってないし、持ってもないよ?」


黒いシャツ…いつから無くなった?



振り返ってクロを見る。


「黒いシャツ…お兄……黒猫……クロ?」


まさかあんたって…



お兄の生まれ変わりか⁉︎




いやいやいや、
そんなバカな。
今時そんな上手い話は無いわ。

マンガの見過ぎ。
考えすぎだ。



…でもこの目つき。

何でも知ってる風な落ち着いた態度。

猫らしくないところ。

私にだけに意地悪なとこ。


やっぱり兄に似ている…。



…そうか⁉︎ 
なんで気が付かなかったんだろう?


クロは『お兄』だ!



猫になって、この世に戻って来たんだ‼︎


とすれば、

数々の不思議は 全部納得できるじゃないか⁉︎



お兄は


姿形が無くなって


風になって


自由になって


小さな猫に生まれ変わって 


みんなのいる場所…この家に帰って来たんだ!


なぁ~んだ!

そうだったんだ!

なぁ~んだぁ~笑





「痛った~い‼︎コリャ!お兄待てぇ~💢」

今日もクロに好き放題 カミカミ ケリケリされてる私。

最近では 時々「お兄!」と呼んでいる。
夫も事あるごとに「兄貴が乗り移っている」と話す。
母も「クロや、お前はお兄なんだと」と口に出すので信じつつあるようだ。
父は変わらず、母がいない所でこっそりクロを構って遊んでいる。

一番理解しそうな義姉は「えぇ?そうなの⁈」と今でも疑っているが、

「お兄ちゃんなの?じゃあ こうしてやる~!」
と言いながら、寝ているクロをクルクル回して遊んでいる。


クロは気まぐれで気分屋さん。


だけど クロのおかげで、皆んながとても笑顔になったよ。





ねえ、クロ。

君は天(そら)からの最高の贈り物!




ねぇ、お兄。





『お帰りなさい』







「にゃーん♪」

クロが甘ったれた声を出しながら、顔を洗っている。

ピタッとやめて、ジーッとこちらを見た。










『ば~か。お前 気がつくのが遅いにゃ♪』






ペロペロ…ペロペロ………ペロペロ……
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