きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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とにかくご飯!

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夕暮れになり、あちこち街灯が点きだした。
毛皮を着ていても、ちょっと肌寒い。
妹たちが仕事から帰って来た時に、もう一度ニャーニャー鳴いてみた。
覗いている様子はあったが、さすがにもう暗い。
諦めて居なくなってしまった。

俺と妹猫は寄り添って移動出来るその時を待った。

俺が死んでから、一体どのくらい時間が経ったのだろう?
妹の雰囲気からして、そう変わっていないのではないかと思ったが、遠目だったしハッキリとは分からない。
でも懐かしい我が家にまた戻れるなんて!
本当に嬉しい‼︎
これは神様からのプレゼントなのかな。
嫁の叶和子(かなこ)にもまた会える。

姿は猫でもせっかく転生したんだ。
この妹猫と一緒に何としてでも生きて行かねば!

夜になって辺りは虫の声でいっぱいになった。
「さぁ、行こう!」
妹猫を連れて移動を開始する。
猫の眼は夜でもよく見える。
こりゃすごいな。

だが、小さい俺たちにとっては、すぐそこの実家までが遥か遠い。
人間だったら1~2分の距離。
暗闇の中、途中妹猫を見返しながらトコトコ歩く。
途中結構な坂道があった。
足元は草に取られる。
歩きにくい。
ガサガサと他の生き物たちが移動する音も聞こえる。
何が潜んでいるのか分からず怖い。

「お兄ちゃんまだ?」
「もう少し」
俺たちは一生懸命に歩いた。

歩き疲れた頃。
やっと実家の横の倉庫にたどり着いた。
そのすぐ隣は実家だ。

「やった!着いたぞ」
俺は嬉しくなった。

見覚えのある場所!
母親が使っている猫車。
壊れた自転車。
畑道具があちこち置かれている。
ありがたい事に段ボール箱も何個かある。

「今夜はあそこで寝よう!」
俺たちはタオルが入った段ボールを見つけ、その中で寄り添って一夜を明かした。

朝になり、俺たちは一生懸命鳴いた。
誰かに気がついて欲しい一心で。
でも何も食べてないからか、声がかすれてニャーニャーよりギャーギャーになっていた。
こりゃ猫の声じゃないなぁ。

俺の人間の方の『妹』が仕事に行く時間になった。
車庫はすぐ隣。
気がつけ!
気付いてくれ‼︎
俺はギャーっと鳴いた。

『妹』は行きすぎて行ったが、ひょっこり戻ってきて、俺たちを見た。

『あ、やっぱりいた!』
気がついた⁉︎
だがすぐ何処かへ行ってしまう。
おい!こら!どこ行くんだ!
と猫語で喋ってみたが伝わるはずもない。

しばらくすると、今度は妹と、その夫もやって来た。
『見て。こぉ~んなに小っちゃいの。昨日鳴いてたのはやっぱりこの仔たちだったんだよ』

そーなんだよ。俺たちだったんだよ!

『妹』が近寄ってくる。
ギョッ⁉︎
で…デカい⁉︎
俺の妹 こんなにデカかったっけ(汗)
まるで巨人のようだ。
いや、俺たちが小さすぎるんだ。

『妹』が両手を出して「こんなに小ちゃい」と言っている。
俺たち、人の両手に納まるほどの大きさしかないってことか。

「お兄ちゃん怖いにゃ!」
「だ…大丈夫!心配すんな!知ってる人だにゃ」
俺は妹猫の手前、強がってみせた。

『妹』が手を差し出してくる。
『おいで、おいで』

まるで悪魔のお誘いに思える‼︎
我慢だ!我慢…我慢…


「ぎょえーーーーーー!」

俺と妹猫はダッシュで逃げた。
出た!こんな場面で野良猫の習性!

何で逃げちゃうんだよ!
せっかくここまで来たのに!

『妹』たちの声で、今度は俺の『母親』まで出て来た。

『こりゃまた小さいのぉ~?』
『母親』なら大丈夫か?

「ナァーゴ」
上手く声が出せないが鳴いてみる。
『ははは!変な声』
ってそこかい‼︎

『昨日はあっちの家にいて、夜の間に移動して来たんだよ。しかも2匹いるんだけど?』
妹が母親に教えている。

そーなんです。
2匹なんです!

母親、妹、その夫の3人がマジマジと俺たちを見ている。
なぜか人間が恐ろしい。
俺と妹猫は小さくなってシャーッと威嚇しながら、自転車の奥に逃げ隠れた。

『腹が減ってるんじゃない?』
妹の夫が言う。

そーなんです!その通りなんですよ!
出来れば飲み物も欲しいんです!

その時母親が、
『仕方ないなぁ。何かやってみようか?』と言ってくれた‼︎

ヤッタァ‼︎
ご飯にありつける‼︎
ください!ください!
と思いっきりニャーニャー鳴いた。


「お兄ちゃん人の言葉が解るの?」
妹猫が聞いてくる。

あ、やべっ。
「あ…ああ、うん。お兄ちゃん解るんだよ。」
「ふぅ~ん」
そうだよな。分からないのが普通だ。
「俺、出来る猫だから!」
…こんなことで威張って見せたところで…トホホ…

そこへ母親が2つの茶碗を持ってやって来た。
一つには水が、一つにはご飯に鰹節が乗っかっていた。

「ゴクリッ!」
何日ぶりの食事だろう?
小さい俺たちに食べれるかな?

俺たちはしばらく警戒していたが、母親が離れて見てくれたおかげで、妹猫が真っ先に飛び出してご飯を食べ始める。
俺も遅ればせながら、そっと近づき、ご飯を食べた。

「うめえ!猫まんまうめぇ‼︎」
多分、この時の俺はナゴナゴ言いながら食べていたに違いない。

妹猫と俺は茶碗いっぱいのご飯をあっという間に平らげた。

「食った食った!」
腹一杯食べた。
妹猫も満足そうだ。

『母親』はその様子をずっと見ていて、食べ終わった茶碗を下げて、また新しい水を入れておいてくれた。
なんてありがたい!
ここが自分の家でよかった。
周りのこともよく分かるし、運良くこの付近は家も少なく、車もほとんど通らない。
しばらくは安心だ。

お腹が膨らんだら眠くなって、俺たちは何も気にせずのんびり休んだ。
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