きっとこの世はニャンだふる♪

Ete

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俺がバカでした

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結局のところ

俺は母親や先住猫たちに甘えて、製材所に落ち着くことになった。

みんなとも慣れてきて
一緒に遊んだり、昼寝したりと
毎日があっという間に過ぎていった。

初めの頃はチャチャのことを思い出し
お腹も大きくなったんじゃないかな…と
心配もしていたが
ご飯、遊び三昧、自由な昼寝付きの毎日を繰り返していたら、少しずつ、それも忘れてしまうようになった。


製材所の生活に慣れ始めて2週間ぐらい経った頃。
サビ猫が大変なことを口走った。
「この先の国道で、メスの茶トラが車に轢かれて死んだらしい。お腹に赤ん坊がいたみたいだ」と。

俺は一気に血の気が引いた。
チャチャの事だ!

「この先ってどのくらい先?茶トラって尻尾はどんなだった?他に特徴は?赤ん坊もみんな死んじゃったのか?」
俺はチャチャじゃないことを祈りつつ、サビ猫に質問をしまくった。
「落ち着けって!まだ若いって言ってたかな。俺も聞いただけだからそれ以上わかんないよ。でも隣の集落らしいぜ。野良かな」

隣…。
そして若い。
間違いなくチャチャだ!
チャチャも…子どもも、みんな…死んじゃったのか…⁉︎
なぜ国道なんかに出たんだ⁉︎

まさか…
俺を探してじゃないよな…⁉︎

胸騒ぎが止まらない。
実家へ行こう!
この目で確かめないと‼︎
でなきゃ信じられない‼︎
俺は居ても立っても居られず、全速力で歩道を走り出した。

車道の近くは小石が当たって痛い。
だけどここを行くのが一番速い!
とにかく行くんだ!
急がなきゃ‼︎

俺は無我夢中で走った。
早く!早く!早く!

渡るとしたら線路の近く!
バス停のある付近か?
俺は横目でチラチラ道の様子を見ながら走った。

と…

少し先に、車道が茶色になった場所を見つけた。
歩道のすぐ横。
血の痕だ。

よく見たら、茶色の毛が少しと、カラダの一部と思われる肉片が落ちていた。
猫らしき姿はない。
「ここではねられた?」

俺は自分が事故をした時を思い出し、脚がすくんだ。
動悸が止まらない。
息が速くなる。

まだ分からない!
実家へ…実家へ行ってみよう‼︎
俺は小道を走り、実家へと向かった。

実家にたどり着くと、あちこちチャチャの姿を探して廻った。
車庫にも庭にも、どこにも姿はない。
もちろん、仔猫も。

庭の奥深いところまで行ってみた。
…新しいお墓が出来ている。
上には石が置いてあって、花が添えてあった。

間違いであって欲しかった。
石には『チャチャ』と書いてある。
チャチャのお墓で間違いない。
俺は気持ち悪くなり、吐きそうになった。

ここを去った俺の考えは間違っていた。
一緒に居てやればよかった。
みんなと一緒に生きていく方法をもっと考えればよかったんだ。
どんなことがあっても、離れちゃいけなかったんだ。
でも、偉そうなこと言っても、俺はお前たちのことを忘れかけていたのも事実。

今更後悔したって…チャチャも子ども達も戻ってこない。

俺は一体何をやってるんだ。
何のために生まれ変わったんだ?
これじゃあ人間として生きてた時と同じじゃないか。
自分勝手で、自分さえ良ければそれでいい。
家族とちゃんと話もしないで、自分だけいい思いをして。
格好ばかりつけて、相手の気持ちを考えていなかった。

死んでからじゃ、失ってからじゃ遅いんだ!
叶和子(かなこ)と同じ思いを、チャチャにもさせてしまった。
あんなに落ち込んで悲しんだ姿。
それは俺が一番よく知ってたじゃないか‼︎

俺はやっと気がついた。
失ってからやっと。

俺はバカです。
せっかく転生しても、同じことを繰り返す大バカ者だ。

俺はひたすら自分を責め続けた。
でも時間は戻らない。

チャチャの墓に話しかける。

「痛かっただろう?赤ん坊、可愛かっただろうな。ごめんな…。こんなバカなお兄ちゃんで、ほんっと~に悪かった!生まれ変わっても、絶対俺と一緒になっちゃダメだぞ!」

人間の時に「バカは死ななきゃ治らない」なんてふざけて言ってたけど、それは俺のことだ。
ほんと、死んでも治らなかったよ。

辺りは暗くなってきた。
実家には灯りがついていて、両親がテレビを観ているのが見える。
あそこに家族でやっかいになってしまえば良かったなぁ…。

俺はしばらく墓のそばにいて、そしてまた、製材所へ戻っていった。

製材所に戻ると、母親や他の猫たちが、心配そうに俺を見た。
何処からか情報が入ったのか?誰も俺には話しかけては来なかった。

母親に一部始終を話したが、責められるわけでもなく、ただひたすら聞き役に徹するだけだった。
それが余計に悲しかった。
いっそのこと、罵ってもらった方がよかった気もする。
悔しくて悔しくて、俺はしばらく落ち込んだ。
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