追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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ラナキア洞窟-SECRET BOSS-8

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「な、なんでだ…?」

 ジョゼフは手を広げ、握りしめ痛みがない事を確認しながら、自身の腕とルカを交互に見比べる。

「さっきは同じ魔術でもほとんど効果がなかったってのに…」

「はい、多分…僕の天質スキルの力です」

 ルカは額から流れる汗を拭いながら言った。彼の顔には若干の疲労が浮かんでいる。

天質スキルって…天質持ちスキルホルダーだったのか!?」

 ジョゼフは驚く。ルカは今までそんな事は言っていなかったしそのような素振りも見せていなかったからだ。

「そうみたい…ですね。気がついたのは今さっきですけど」

 ゲルトアルヴスに対しウォーター・スプラッシュを放った際に確信した。これは天質スキルの力だと。

「多分、僕の天質スキル魔力増強マジック・ブースト。魔力を込めれば込める程魔術の威力が増強される天質スキルです」

 ルカはこの天質スキルについてはすでに見知っている。かつて暴漢に襲われていた所を助けた少女…クラリス・キャンベルの持っていた天質スキルだ。

(まさか、僕に天質スキルがあったなんて…それも、クラリスさんと同じものが)

 もしも今が窮地でなければ、飛び上がって喜んでいた所だろう。だが、今はそれどころではない。

「この天質スキルがあれば、ゲルトさんに対しても致命傷を与える事ができる…かも、しれません」

 ルカの感覚では、先ほどのウォーター・スプラッシュは威力がセーブされていた。魔力の枯渇で気絶する事を厭わなければ、もっと高威力の魔術を行使する事もできるはずだ。そうすればゲルトアルヴスを倒す事ができるかもしれない。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」

 だが、ジョゼフはルカの言葉に対し眉をしかめる。

「まだゲルトの旦那と戦うつもりか!?」

「はい。仕留め切れていないはずですから」

「そういう事じゃなくてよ!た、倒せると思ってんのか!?いくら天質スキルがあるつったって…相手はバケモンだぞ!?」

 ゲルトアルヴスの再生能力と防御力は底が知れない。例え天質スキルがあったとして、勝てる保証はないだろう。

「勝てるかどうかは分かりません。でも…なんとしても止めないと」

 もしここで放置すれば、大虐殺ジェノサイドが起きる可能性がある。

「剣聖アルトゥースに破れたという、魔剣士メドレウトは元はただの剣士だったとされています」

 魔剣士メドレウト。剣聖アルトゥースと同時代を生きたとされるいにしえの人物だ。『大厄災』邪神デミウルゴスに次ぐ人類の脅威…『厄災』のひとつとされている。

「しかし、邪神の力に見入られ道を踏み外し…国をひとつ滅ぼしました。その際命を失った人間は数十万とも数百万とも言われています。おそらく、メドレウトも邪神の肉体の一部と融合して圧倒的な力を手に入れたんでしょう」

「ゲ、ゲルトの旦那も国を滅ぼせるレベルの『厄災』だってのか?」

「いえ、そうは言っていません。おそらく、ゲルトさんの実力は魔物モンスターランクで言う所のS+ランク程度…『厄災』ほどの力はないはずです。でも、いずれ『厄災』レベルに成長する可能性もあります。伝承によれば、メドレウトは徐々に破壊の規模を大きくしています。おそらく、邪神の力を制御するのに時間がかかったのでしょう。つまり、ゲルトさんも力を制御するのには日数を必要とするはず。叩くなら…今しかないんです」

「け、けどよ、『厄災』じゃねえとしても…S+ランクでも、とんでもねえ強さって事だぞ…!」

 S+ランクという事は、Sランク冒険者パーティでも勝てないレベルの強者という事だ。

 贔屓目に見て、アレクシアをSランク相当、ジョゼフをBランク相当、ルカをDランク相当の実力と見積もったとしても…明らかに分が悪い。

「それでも…僕は、ゲルトさんと対決しようと思います。でも、アレクシアさんとジョゼフさんにまでそれを強いるつもりはありません。どうするかは、お二人に任せます」
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