追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

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ラナキア洞窟-SECRET BOSS-7

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 かつてミドルマッドゴーレムに対してウォーター・スプラッシュを放った時と同様の感覚。体中の魔力が吸い出され、それが一点に集中される。その魔力を乗せ、ウォーター・スプラッシュが放たれた。

 大河を思わせる奔流。それが迸り、黒炎と衝突する。圧倒的な質量の水を前に、黒炎は瞬く間に消滅した。水流の勢いは失われる事なく、ゲルトアルヴスまで到達する。

「こ、これは…!」

 驚愕の表情を浮かべるゲルトアルヴス。しかし、回避するにはもう遅い。彼の体に水属性魔術が激突した。

 ゲルトアルヴスの肉体は強化されている。傷ついたとしても、再生能力がある。だが…その『重さ』は邪神の牙と融合する前とさほど変化はない。ゲルトアルヴスは氾濫した大河の如き勢いの水流を受け、吹き飛ばされた。

「ぐ、お、おお…!」

 岩壁に叩きつけられ、その肉体がめり込んでいく。

 その圧倒的な威力に一瞬呆然となった後、ルカは急激な疲労を感じふらついた。

「大丈夫かルカ君!」

 アレクシアが駆け寄る。

「だ、大丈夫です…」

 急激に魔力を消費したためふらついてしまったのだろう。だが、ミドルマッドゴーレムに魔術を放った時とは違い、完全な枯渇にまでは陥っていない。以前の経験から、無意識のうちにセーブしていたのかもしれない。

「アレクシアさんとジョゼフさんの方こそ大丈夫ですか?」

 二人に対して交互に視線を向ける。二人とも、大丈夫だという風に頷いた。

「それじゃあ…まずはここから引きましょう」

 ルカはゲルトアルヴスのめり込んだ壁に目を向けた。すでにウォーター・スプラッシュで生じた水は消えかけている。魔術で生み出した物は『安定していない』ので、特別な処置を施した場合を除きしばらくすると消え去ってしまうのだ。

 ゲルトアルヴスの体は、ここからでは視認できない程に岩壁の奥深くへと入り込んでいるようだ。

「多分、僕の魔術ではゲルトさんを仕留め切れていません。岩壁の奥深くにめり込んで、しばらくは身動きができないかもしれませんが…いずれ、脱出してくるはずです。距離を取りましょう」

 アレクシアとジョゼフはその考えに同意した。三人は階段を登り、倉庫の外に出る。



 一行は、邪神殿の外にまで脱出した。湖の上の橋を渡り、神殿が見渡せる位置まで来るとひとまず立ち止まる。今の所ゲルトアルヴスが追ってくる気配はない。

「ジョゼフさん、手を出してもらっていいですか?」

 ルカは、ふいにそんな事を言った。ジョゼフの腕の延焼は続いているようで、ここまで来る途中も彼は何度か呻き声を漏らしていた。

「あ、ああ…でも、どうしようもねえ…ぐっ」

 呻きつつ、ジョゼフは手を差し出す。とはいえ、回復薬も魔術も効かないのだ、なす術はない。ジョゼフはそう思ったのだが…ルカがその手に自らの手をかざす。

「汚れよ、その身から立ち去れ『エレメンタリー・デトックス』」

 初伝レベル1魔術、『エレメンタリー・デトックス』。この魔術はジョゼフの延焼を完治する事はできなかった。しかし…、

(さっきの感覚を思い出せ。体から魔力を吸い上げて、それを一点に集中して…)

 ウォーター・スプラッシュを放った際の感覚を思い出し、魔力を込めた。すると、

「なんだ?…腕の痛みが…」

 ジョゼフが目を丸くした。延焼による痛みが徐々に弱まり…そして、完全に消え去ったのだ。
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