追放された少年は『スキル共有スキル』で仲間と共に最強冒険者を目指す

散士

文字の大きさ
71 / 1,156

ラナキア洞窟-SECRET BOSS-13

しおりを挟む
(僕の力じゃ…無理だ)

 例えアレクシアの奥義で再生能力を削ろうと。例え魔力増強マジック・ブーストで自身の全魔力をぶつけようと。邪神の牙を破壊する事などできない。椿にはそれが分かってしまった。

 ――逃げるべきか。

 倒せないのならば逃げるしかない。だが、アレクシアは練気プネウマを急激に消費したため動けない。彼女を抱えてゲルトアルヴスから逃げる事ができるのか。

(無理だ…)

 黒炎ダークフレイムで追撃されればそれを防ぐ事はできないだろう。つまり、全滅だ。ゲルトアルヴスは倒せず、ルカたちは死亡。最悪の結末だ。

(いや、まだ終わりじゃない!出来る事はある…!)

 一か八か、駄目元でコアに魔術を打ち込む。やはり、それしかない。

(当初の予定通り、炎属性の魔術でコアを焼き尽くす…!)

 ルカの使用できる攻撃魔術は炎、風、水、土の四属性。炎は焼却、風は吹き飛ばし、水は貫通、土は衝撃。コアを破壊するならば炎属性の魔術が最も有効だろう。

(いや、本当にそうなのか…?)

 ルカは考える。一秒にも満たない僅かの間。少年の頭脳は高速で回転し…ひとつの答えを導き出した。

(ゲルトさんの特性…再生すればするほど防御力が強化される。なら、これなら…だけど…!)

 その答えは、あくまで推測だ。全くの見当違いという可能性も高い。もしそうだとすれば、全滅は必至。

(でも、どっちにたって…普通の攻撃魔術じゃ倒せないんだ。やるしかない!)

 少年は覚悟を決めた。そして、コアに手を当て…詠唱を開始する。

「清浄なる力よ、傷を癒せ」

「なっ!?」

 その詠唱を聞き、ジョゼフは驚愕の表情を浮かべた。彼も聞き覚えのある詠唱。それは、攻撃魔術のための呪文ではない。ルカの詠唱が終了し、魔術が発動する。

「『ホーリー・トリートメント』」

 初伝レベル1魔術、『ホーリー・トリートメント』。それは――対象の治癒力を高め、肉体の損傷を回復するダメージ回復魔術。

「ル、ルカ君、何やって…」

 ジョゼフがそう呟いた時には、ゲルトアルヴスの体は異常な速さで再生していた。切断された肩から脇腹にかけて肉のようなものが盛り上がり…それがゲルトアルヴスの上半身を形作る。そして、最後に首、そして顔が再生した。

「はは…!」

 再生されたゲルトアルヴスの顔に嘲笑が浮かぶ。

「敵であるわたくしに回復魔術とは…錯乱しましたか?いや、わたくしに媚びを売って助かろうという算段ですか?ははは。なるほどなるほど」

 ルカはゲルトアルヴスの胸に手を当てたまま、地面に俯いている。それはゲルトアルヴスに対し怯えているようにも…服従を誓っているようにも見えた。

「いいでしょう。服従を誓うというのであれば、あなただけは命を助けてあげましょうか。ただし、この厄介な女剣士は始末させていただきますが…」

 そう言って、ゲルトアルヴスは足元に倒れるアレクシアを踏みつけようと足を上げる。いや、そうしようとしたのだが――上げる事ができなかった。

「ん…?」

 ゲルトアルヴスの眉根が寄る。何故だが、体が重い。それ故に足を上げる事ができなかったのだ。

 いや――正確に言えば重いのではなく、固い。例えば関節を稼働しない鎧を着せられたらこのような状態にになるのではないかと思える程に…固い。

「なんだ、これは…貴様、何を…」

 ルカに視線を向ける。少年は、未だゲルトアルヴスの胸に手を当てていた。そして――魔力を送り続けている。ゲルトアルヴスの回復を促す魔力を。

「貴様…まさか…!」

 少年は顔を上げ…ゲルトアルヴスを睨みつけた。

 彼の狙いはただひとつ。ゲルトアルヴスの『過剰回復』。そして、

「わ、わたくしの体が…体が…!」

 ゲルトアルヴスの顔に、始めて恐怖の色が浮かぶ。彼の体は、回復し続けていた。そして、それに伴う硬化により――全身が、固められようとしていた。まるで石像の如く。
しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

処理中です...