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ラナキア洞窟-SECRET BOSS-12
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アレクシアの振るう剣が幾筋もの光となって敵を襲う。
「■――…」
ゲルトアルヴスは体を切断されながらも呪文の詠唱を行った。しかし、次の瞬間には首が斬り飛ばされている。だが、その斬り飛ばされた首も再生され…そしてまた、斬り落とされる。
切断、再生、切断、再生。無限とも思われる繰り返し。時にゲルトアルヴスはアレクシアに反撃を試みるが、それは叶わない。アレクシア速度は次元が違う。
だが、そんな女剣士の顔は苦悶に歪んでいた。
(限界が…近い)
奥伝体技と奥伝剣技の合わせ技。これは、息継ぎなしで全力疾走するようなものだ。視界がかすみ、今にも膝から崩れ落ちそうになる。だが――アレクシアは止まらない。
限界まで。持てる力の最後の一滴を絞りつくすその限界まで力を振り絞る。
「ぐっ…」
何度目の斬撃だろうか。アレクシアの振り下ろした剣が、ゲルトアルヴスの肩で止まった。アレクシアの力が弱まってきたのか、それともゲルトアルヴスの肉体が度重なる再生でアレクシアの剣が通じない程に強化されたのか。それとも、その両方か。
「おや、どうしました?」
ゲルトアルヴスが笑みを浮かべる。その全身はアレクシアによって切り刻まれていたが…それも徐々に再生していく。ゲルトアルヴスはややぎこちない動きで拳を振り上げる。アレクシアは、それを睨み返し…、
「あああああ!」
叫び、渾身の力を振り絞る。体内に残る全ての練気、それを剣に込めた。剣がゲルトアルヴスの肩に入り込み…その体を、肩から腹部にかけて斜めに切断した。次の瞬間、アレクシアは膝から崩れ落ち倒れ込む。
「ルカ、君…たの…む」
そう呟いた時、すでにルカはアレクシアのすぐ後ろにまで迫っていた。
「はい!」
少年は答える。彼の眼前には、アレクシアによって切断されたゲルトアルヴスの肉体。そして体が切断された事によって剝き出しになっている核…邪神の牙と融合した、ゲルトアルヴスの心臓。
(この核を…破壊する!)
自分の持てる全魔力を注ぎ、核を消滅させる。おそらく敵は、アレクシアの攻撃を受けその回復のために相当の魔力を消費しているはず。ここで核に直接強力な攻撃を叩き込めば、完全な破壊も不可能ではない。ルカは、そう考えていた。だが――、
(え…?)
ゼロ距離から魔術を叩きこもうと、ルカは核に触れる。その瞬間、理解した。
(僕じゃあ…これを破壊する事なんてできない…)
あり得ない程の密度を持った、邪悪なる魔力の塊。それを完全に滅するには自分の魔力では力不足だと、直感していまった。
槍一本持って城を破壊しようとするようなものだ。邪神の牙と自分では、明らかに魔力の桁が違う。
少年の顔が絶望に染まる。
「■――…」
ゲルトアルヴスは体を切断されながらも呪文の詠唱を行った。しかし、次の瞬間には首が斬り飛ばされている。だが、その斬り飛ばされた首も再生され…そしてまた、斬り落とされる。
切断、再生、切断、再生。無限とも思われる繰り返し。時にゲルトアルヴスはアレクシアに反撃を試みるが、それは叶わない。アレクシア速度は次元が違う。
だが、そんな女剣士の顔は苦悶に歪んでいた。
(限界が…近い)
奥伝体技と奥伝剣技の合わせ技。これは、息継ぎなしで全力疾走するようなものだ。視界がかすみ、今にも膝から崩れ落ちそうになる。だが――アレクシアは止まらない。
限界まで。持てる力の最後の一滴を絞りつくすその限界まで力を振り絞る。
「ぐっ…」
何度目の斬撃だろうか。アレクシアの振り下ろした剣が、ゲルトアルヴスの肩で止まった。アレクシアの力が弱まってきたのか、それともゲルトアルヴスの肉体が度重なる再生でアレクシアの剣が通じない程に強化されたのか。それとも、その両方か。
「おや、どうしました?」
ゲルトアルヴスが笑みを浮かべる。その全身はアレクシアによって切り刻まれていたが…それも徐々に再生していく。ゲルトアルヴスはややぎこちない動きで拳を振り上げる。アレクシアは、それを睨み返し…、
「あああああ!」
叫び、渾身の力を振り絞る。体内に残る全ての練気、それを剣に込めた。剣がゲルトアルヴスの肩に入り込み…その体を、肩から腹部にかけて斜めに切断した。次の瞬間、アレクシアは膝から崩れ落ち倒れ込む。
「ルカ、君…たの…む」
そう呟いた時、すでにルカはアレクシアのすぐ後ろにまで迫っていた。
「はい!」
少年は答える。彼の眼前には、アレクシアによって切断されたゲルトアルヴスの肉体。そして体が切断された事によって剝き出しになっている核…邪神の牙と融合した、ゲルトアルヴスの心臓。
(この核を…破壊する!)
自分の持てる全魔力を注ぎ、核を消滅させる。おそらく敵は、アレクシアの攻撃を受けその回復のために相当の魔力を消費しているはず。ここで核に直接強力な攻撃を叩き込めば、完全な破壊も不可能ではない。ルカは、そう考えていた。だが――、
(え…?)
ゼロ距離から魔術を叩きこもうと、ルカは核に触れる。その瞬間、理解した。
(僕じゃあ…これを破壊する事なんてできない…)
あり得ない程の密度を持った、邪悪なる魔力の塊。それを完全に滅するには自分の魔力では力不足だと、直感していまった。
槍一本持って城を破壊しようとするようなものだ。邪神の牙と自分では、明らかに魔力の桁が違う。
少年の顔が絶望に染まる。
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